歴代最高かつ最低かつ最高と思われる年下男と別れた女の徒然19
仕事中に円形脱毛が一個増えてんのを見つけた。
頭のてっぺんに現れた。
ちょっと触ったときに、あれ?ってやつ。これは経験者にしかわからないやつ。
わたしはもうベテランの円形脱毛女なので、なるべく目立たないとこならどこにできてもしゃーない。って、そう思うことにしてる。
指で探り、鏡を照らす。あ、やっぱり地肌見えてんじゃん。って不思議なきもちになる。
はよ、元気な髪の毛育ってね。待っとるよ。
徒然19
彼がなぜアプリを退会していなかったのかわかっていたのは、わたしがもうひとつアカウントを作ったからだ。
彼とやりとりをしていたほんとうのわたしのアカウントは、彼と付き合うことになり、同時にやりとりをしていたもうひとりの別なひとに会う約束のお断りの連絡をし、それから退会した。
わたしの幼なじみもその一ヶ月前くらいに、おなじアプリで彼氏ができていて、その子と話していたとき、
その子の以前の彼氏は、付き合ってからもアプリをずっと使っていたらしい。
わたし裏アカ作ってずっと監視してたんだよね!って友だちは言っていた。
そんなことあるんだね〜。って、友だちの彼氏のことも、友だちにさえも共感はできなくて、完全に他人事だと思っていたわけだけど、
付き合うことになったとき、ふとこの話や友だちの顔が浮かんだ。
わたしもちょっと見てみようかな、、と思い、またアプリを再登録した。
名前は変えて、写真も載せず、わたしだということはもちろん、ほかの誰にもなれていない架空の人物を再登録させた。
検索すると、
なんにも変わらない彼がそのまま登場した。
ご親切な機能も搭載されているので、
黄色い丸印が点灯。これはつまり、ログイン時間が24時間以内という目印。
まったくご親切な機能が搭載されていらっしゃるので、
退会どころか、このいちにちの間にログインされていることがはっきりとわたしの目の前に
変えようのない事実として登場。
不思議と、ショックというような感情はなくて、
あー、やっぱり。みたいな、こっちよりだった。
ショックは彼に対してより、自分自身にだった。
こんなことをしてしまう自分が嫌だった。どうしようもなく嫌だった。
でも、いま思えばこの行動が
彼との付き合いのなかで生まれるいろんな歪なもののきっかけだったのかもしれない。