15話

アカシは移動しながらある場所に向かっていた。
そこは肌色の大地と黒い林が広がる不思議な場所だった。下を見ると、何か生き物のようなものがうごめいている。

「ここは……どこだ?」と彼女が尋ねると、彼は少し笑って答えた。
「ここはね、もう一人の少女の頭の上にいるんだよ。そして、動いているのは常在菌さ。」

「えっ……?」彼女は驚きの声を漏らした。
「ここが……あの子の頭の上だなんて……!」

「そうさ。それからさっきの構造物――あれは、真冬って子の口なんだ。彼女が喋ったから、あんな突風が吹いたんだよ。」

「ええっ!? ただ喋っただけであんな風が?」
その一連の説明に、彼女は再び驚きを隠せなかった。アカシはようやく口を開き、質問を投げかけた。

「じゃあ……全部、話してもらおうか。」

観念したのか、綾香はその場に腰を下ろし、口を開いた。
「わかった。全部話すわ。」

「私の母は、キャバクラやスナックなど、いくつもの店のオーナーをしてるの。どうしてあなたを誘拐しようとしたのかっていうと、あなたに対してある種の警戒をしていたからよ。」

「警戒……?」と、アカシが眉をひそめる。

綾香は静かにうなずいて続けた。
「実は……あの日、あなたが小さくなる瞬間を見てしまったの。」

「小さくなる瞬間……?」

「そう。でも、その時はすぐに見失ったのよ。」

アカシは戸惑いながらも問いかけた。
「その話を……お母さんにしたのか?」

「ええ。最初はもちろん、母も信じてくれなかったわ。そりゃそうよね、小さくなるなんて現実的じゃないもの。」

綾香は小さく笑い、話を続けた。
「でもね、その翌日にまたあなたを見つけたの。その時はスマホで録画して、母に見せたのよ。そしたら、ようやく信じてくれたわ。」

「……その時も、俺を見失ったってこと?」

「ええ、そうなの。ふふっ、あなたって、見つけるのも大変だけど見失うのも簡単なのよね。」

「……ところで、どうしてそんなにすぐ見つけられたんだ?」

彼の質問に、綾香はにっこり笑って答えた。
「だって、あなたと同じ大学だからよ。」

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