アカシの小さな冒険 第7話

倒れている彼女を見下ろしながら、彼は心の中でつぶやいた。

「こんなに小さいのに、なんで……」

彼女の顔を見て、彼は驚きを隠せなかった。童顔の彼女は、150センチ前半に見える。だが、そんな小さな体に不釣り合いなほどの大きな胸があった。

そんなことをしている場合ではないと思い彼女のスマホを拾い上げた。画面を確認すると、そこにはいくつかのチャットのやり取りが表示されていた。内容を読んでいくうちに、背筋に寒気が走った。俺自身が彼女たちの「目的」だったのだ。

「…俺を狙ってたのか…」

彼女がただの空き巣ではないことがはっきりした。スマホには計画的な誘拐を示唆するメッセージのやり取りが残されていた。さらに彼女のカバンを探ると、中からスタンガンが出てきた。それが彼女の本気度を物語っていた。どうやら俺を無力化し、連れ去るつもりだったらしい。

「これはただ事じゃない…」

一刻も早く証拠を確保する必要があった。俺は慌てて自分の部屋からUSBメモリを取り出し、彼女のスマホに直接繋げた。データのダウンロードが始まる。ついでに、自作のアプリをインストールしておいた。何かあった時に追跡できるようにしておくためだ。

「これで少しは安心だ…」

ダウンロードが完了すると、次にどう行動すべきかを考えた。依然として携帯の電波は不通のまま。誰かが電波を妨害しているのかもしれない。もう一人の仲間がいるのは確実で、彼が来るのも時間の問題だ。

「ここに留まるのは危険だ…」

そこで、俺は一つの作戦を立てた。少し小さくなり、窓から脱出して近くの交番に駆け込むことにしたのだ。もしも相手が追加の手を打ってきたとしても、今ならまだ逃げられるはず。

俺は一旦30センチほどに小さくなり、静かに窓を開けて外へと出た。外の空気が冷たく、緊張感が高まる。周囲に人影がないことを確認してから、再び元の大きさに戻り、全速力で交番に向かって走った。

「頼む、間に合ってくれ…!」

交番に到着すると、息を切らしながら事情を話した。お巡りさんは驚きつつも冷静に対応し、すぐに俺と一緒に家に戻ることになった。

しかし、家に戻った時には、すでに誰もいなかった。彼女も、そして彼女の仲間も姿を消していたのだ。

「…くそ、逃げられたか…」

それでも捜査は始まり、事情聴取が行われた。俺は冷静に、ある程度の嘘を混ぜつつ、こう説明した。

「散歩から帰ってきた時に、中から不自然な音がしたんです。危ないと思って交番に駆け込んだんですけど…」

お巡りさんは俺の話を疑う様子もなく、状況を整理してくれた。そして、今回の件がただの偶発的なものではなく、何か大きな背後がある可能性もあると警告された。

「しばらくは警戒して、パトロールを強化するから。君も気をつけてくれよ」

「はい、ありがとうございます。助かりました」

ひとまず俺は安心したが、心の中にはまだ不安が残っていた。これで終わりなのか、それともまた何かが起こるのか。答えはまだ分からないが、次に来るときは、もっと慎重にならなくてはいけないだろう。

「とりあえずダウンロードしたデータを見てみよう。」

そう心に決め、俺は家に戻ることにした。

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