アカシの小さな冒険第13話
綾香はどんどん小さくなり、最終的に10センチ近くまで縮んだ。
その変化は一瞬のことで、彼女は自分の体が縮んでいく恐怖に声も出せなかった。視界は広がり、今まで目線の高さにあった物が次々と高く、巨大に見え始める。
「嘘でしょ…?」
膝が震えた。まるで別の世界に迷い込んだような錯覚に陥り、足元に広がる大地ですらも異様に見える。そんな彼女に、大きな影が覆いかぶさる。目を上げると、アカシがまるで神のような巨人として立っていた。
「捕まえた」
彼の声が冷たく響き、その手が容赦なく伸びてきた。綾香は反射的に逃げようとしたが、もはや彼女の動きは遅すぎた。あっという間にアカシの巨大な指が彼女を包み込み、柔らかな抵抗は無力だった。
「話し合おうか?」
彼はそう言って綾香を指先で軽く転がすように握りしめた。
真冬視点
突然、視界に走る閃光と激しい轟音に襲われた。視界は一瞬で真っ白になり、耳の奥で「キーン」とした耳鳴りが響く。立ち直ろうとした時には、事態は最悪の展開を迎えていた。
「え…綾香さん…?」
目の前では、信じられない光景が広がっていた。小さくなった綾香が、アカシの手の中で無力に捕まっている。「どうしてこんなことに…?」真冬の心臓が急速に早鐘を打ち始める。まるで時間が止まったかのように、頭が真っ白になる感覚。
「くそっ、何とかしないと…!」
だが、次の瞬間、真冬の焦りをあざ笑うようにアカシの姿が徐々に消えていった。まるで霧が晴れるように、彼の輪郭が薄れていき、ついには完全に消失してしまった。
「どこに行ったの…!?待って、逃がさない!」
真冬は必死に辺りを見回すが、アカシの姿はどこにもない。人質となった綾香も同時に消えたかのようだった。その場に立ち尽くし、途方に暮れる真冬。これ以上悪い状況などあるだろうか――彼女の心には不安だけが残された。
綾香視点
目を開けると、自分の体はまだ信じられないほど小さなままだった。
「どうして…?私、どうしてこんなことに…?」
アカシの手の中で無力感に苛まれながら、彼女は必死に状況を整理しようとする。しかし、理解の範囲を超えた出来事が次々と襲いかかる中、冷静さを保つのは困難だった。
「ほら、話し合おう」
アカシは皮肉な笑みを浮かべながら、彼女を握り締めたまま、さらに自分自身の体を小さくしていく。その瞬間、彼女の視界が大きく歪んだ。周囲の景色がめまぐるしく変わり、巨大な何かが視界の端に見え始める。
「何、これ…?」
綾香が見たのは、細菌のような不気味な生き物たちがうごめく異様な世界だった。
彼女は一体どれだけ小さくなったのか恐怖を覚えた。
すると彼はしゃがんで手を離した。