忙しいにかまけて
今週から年末大掃除の前倒しが始まり、今日はベランダ側の窓を掃除していた。
「あ……まだいたの?」
「すんまへん、あったかい日でしたのでつい……」
窓枠に、隠れるように佇んでいるカメムシを発見した。速攻で大空にお帰り願った。
掃除も終わり、洗濯し終わったカーテンをかけると、窓はしばらく開けておく。私は季節問わずに、窓を開けておくのが好きだ。
このあとは、アレしてコレして……忙しい時は予定通りに進まないのはお約束で、さっそく電話がかかってきた。
「ん?珍しいな、電話なんて……」
隣町でオーガニックカフェを営む友人からだった。30分後に寄っても良いかと言われれば、どうぞどうぞ待ってるよと返事する。が、嫌な予感がする。
何かあったのだろうか?
娘ちゃんの具合が悪くなった?
心配で少し落ち着かない私を尻目に、能天気感丸出しでやってきた友人親子に、ホッと胸を撫で下ろす。
母と娘二人で営むオーガニックカフェは、コロナにみまわれ大変だっただろう。持ち前の能天気さとバイタリティで、予約営業形態で乗り越えた。
娘ちゃんが病気で離脱を余儀なくされた時、お手伝いに行って叱咤激励しまくった日々が懐かしい。
「あんな、おかげ様で5周年を迎えてん。つぐみにはお世話になって、ほんま感謝しかない……これ、5周年の記念品やねんけどな」
地元のお米やお塩などのオリジナル詰め合わせをいただいた。
しまった!!!
毎日の忙しさにかまけて、友人の大切な5周年を失念していた。いつからだ?いつから私はカフェに行ってない?
確かに今年の私は忙しかった。父の手術から始まり、親戚の寂しいお別れ、夏の大集合のもてなし……忙しさは寂しがり屋で、いつだって一緒に一気に押し寄せてくる。
それでも、カフェを訪れるくらいいつだって出来たし、メンバー集合の号令もかけるのに1分も時間はいらない。
反省やわ……アカンわこれ、アカンやつ。
彼女達を見送り、すぐに全員集合のメールをいれる。これから先は、主婦にとっては忙しい時期だ。仕事だってそう。
だけど、5周年と聞いて皆も立ち上がる。
どうやら来月初めに叶いそう。ささやかに皆で祝いたい。これくらいしか、友人として出来る事はないから。
カフェの友人親子と紅茶を飲みながら話をしていると、二人からフワリと漂ういい匂い。
──あぁ、カフェの匂いだ。美味しい匂い……二人とも、頑張る店主さんやな。
全員集合まではまだ時間がある。
私はその前にカフェに行こう。
大きな花束を抱えて。