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2025.1.5 ゲイブキッドvsケニーオメガ

2025.1.5東京ドーム
ゲイブキッドvsケニーオメガ

キャリア最大にして最強の敵と対峙するこの試合。彼が入場に選んだコスチュームは新日本プロレスの、Wardogsのジャージだった。ライオンマークを背負った彼は、もはやストロングスタイルの体現者と言っても過言ではないのではないか。自身最大の舞台でも決して飾らず、驕らず、己を貫く。それこそが「闘魂」だと信じて疑わないから。

なにがここまで彼を突き動かすのか。俺が、俺こそがストロングスタイルだという矜持か。育った新日本への愛か。道半ばで離脱した友の思いか。全てを引っ提げ彼は花道を歩く。試合前から飛ぶゲイブコールがファンの期待の大きさを表している。この男なら今の新日本を預けても大丈夫だと。会場を味方につけ彼は進む。GABE!GABE!WAR READY!その青い瞳にはなにが見えているのだろうか。全てを背負った男の姿は儚く、そして美しい。

新日本プロレスを背負ったゲイブはその看板に恥じぬ戦いをみせる。大方の予想通り場外での激しい戦いから流血戦へ。テーブル、イスなんでもありのその戦いは、どちらも引かない。いや、引けない。一線を越えてしまいそうな恐怖すら覚える。それでも戦いへと昇華させる技術はさすが。試合終盤にみせた卍固め(コブラ?)を決めるゲイブの表情は圧巻の一言。この姿をみせられたら誰でも心を奪われる。彼はついにその身一つでトップレスラーの座に上り詰めてしまった。

対するケニーも自身の想像していた展開とは違ったかもしれない。飛ぶブーイングに戸惑いもあったかもしれない。しかし安易にエモさに逃げず(スタイルズクラッシュ、ブラッディサンデー)真っ向から受け止める。1年ぶりの復帰戦とは思えないノータッチトペコンヒーロー。雪崩式のドラゴンスープレックス。その技のキレはベストバウトマシンの名に恥じぬクオリティで、それはかつて新日本で体を張ったあの時のケニーオメガそのものだった。そして唯一抜くは、今日隣に立てなかった友の技。カミゴェからの片翼の天使。31:55。時間を感じさせぬ戦いはケニーに軍配が上がったが、会場からの万雷のゲイブコールが彼の歩んできた道の正しさを証明する。

そしてなにより棚橋弘至の涙。棚橋は涙ながらになにを思うのか。あの頃のゲイブが立派に成長し、新日本プロレスを背負う姿に感極まったか。かつて自分がイデオロギーをかけて戦った姿を重ねたか。決して声には出さないだろうがきっと彼は答えるだろう。「ドウイタシマシテ」

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