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2025.2.23 正田壮史vs高鹿佑也
2025.2.23 後楽園ホール
D GENERATIONS CUP優勝決定戦
あの日と同じ舞台、同じカード。しかし2人の男の心は、あの時とは大きく違っていた。第1回と同一カードとなったこの優勝決定戦。当時、正田はデビュー半年。対する高鹿はデビュー2年弱。優勝できなかったことはもちろん、なにより後輩に負けたことはとても悔しかっただろう。優勝を手にしたあと、正田はタッグ、シングルとベルトを巻き若手のトップとして邁進する。別れた明暗。あれから2年の時が過ぎた。
正田は口にする。ただ優勝するだけではなくDGCの価値を高めると。あの時は4試合目だった試合順がこの日はメインになっていた。周りは言う。チャンスをもらってきたからいいよなと。本当にチャンピオンに値するのか、ずっと吟味されてきた。そのプレッシャーやチャンピオンとしての責任を背負ってきた自負がある。若手という枠を越え、DDTを背負おうと。勝利のその先を見据える正田壮史。「背負って戦えるのは僕しかいない」
高鹿もあの時とは違う。バーニングでその後も精進し技を磨き、研ぎ続けた。悔しさ、悲しさだけじゃなく努力も積み重ねて。岡田の引退、バーニングの解散。遠藤とそして秋山とのシングル。その全てが高鹿を成長させる。バーニングがなくなっても、バーニングでやってきたことはなくならないのだから。自身の進む道が見え始める。ただシンプルに同世代に負けたくない。同世代のトップを走りたいと願う高鹿佑也。「ほんと舐めんなよ」
お互いこの2年ですごいスピードでどんどん前に進んでいる。この若さでエモーショナルなストーリを作れるのもいい。
試合開始から腕を狙いに行く高鹿。ロープに振ってスピードが上がった序盤の攻防をみて、DDTの若手のレベルを身に染みて感じる。特に正田の成長は本当に著しい。少林寺仕込みの蹴り主体の攻撃でペースを支配する。場外でのブレーンバスターからのパイルドライバーで高鹿の動きを止める。リングに戻っても正田のペースは続く。
対する高鹿は腕にダメージを重ねていく。丁寧に1点集中。まるで自分が歩んできた道を示すかのように、地道にコツコツとダメージを乗せていく。だが、それでも正田は止まらない。正確で強烈な蹴りをどんどん繰り出してくる。パントキック、延髄、フロントハイ。技の精度、威力共に素晴らしい。正田は本当に大きくなったなぁと。纏うオーラというか風格が。もちろん体も。それに自信みたいなものが表情から滲み出てる。
高鹿がジャーマンスープレックスホールドを切り返し、腕を決めたところは思わず唸った。淀みなくスムーズに腕を取る姿に惚れ惚れした
明らかに試合の空気が変わったのはインターセプトを出したところから。岡田佑介の技。村田さんの「魂は受け継がれています」も良かった。そしてトーチャーラックボム。これは遠藤の技。テンションは最高潮に達する。かつてのG1でのケニーオメガを彷彿とさせるかのような、1人バーニング。俺の心も燃えていた。
傾いた空気を正田はコンプリートショット、バズソーキック、三角蹴りで取り返す。このシーンも凄かった。技のバリエーションも多く、このまま成長したら、とんでもないレスラーになりそうな片鱗が山ほど見える。
最後トライアングルランサーを決めてるときには思わず叫ぶほどに感情が持っていかれていた。高鹿!がんばれ!夢中になっていた。
ただ願う。
この努力が報われてほしいと。
高鹿は高鹿なりに積み重ねてきた。
磨き続けると尖る。尖ればそれは武器になる。
ひとつそれが証明された瞬間だった。
高鹿佑也の涙ながらの真っ直ぐなマイクも、めちグッときた。心に直に刺さるような。上半期ベストマイクは、1.4瑞希か2.23高鹿を推したい。「プロレスが好きでよかったです」何度聞いてもいい言葉だ。
悔しさも悲しさも積み重ねて、プロレスだからこそ表せるそのレイヤードがとても綺麗だった。そして今日まさに高鹿の心は燃えていた。その炎が観ている人たちにも燃え移った。紛れもなくそれはバーニングだった。ここからが高鹿佑也の始まりだ。1.3の約束を果たせるように。