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自治体研究者が問題視する長崎県諫早市のパワハラ隠蔽問題をわかりやすく解説。 (令和6年5月3日現在)


昨年からこの問題が、長崎県の諫早市で問題になっている。とある自治体問題の研究者から市の対応の危険性の指摘がきたので紹介する。


 事件の概要は諫早市が100%出資する外郭団体が運営する温泉施設で発生。
 職場の同僚からの無視や嫌がらせ、または上司から暴言や暴行を受けた人までいて、はては、悩んだ末に、天国で楽になろうとした人まで「被害者の会」がつかんでいるだけで10人以上いる。

 この公社の設置者である諫早市に対応を交渉していた「被害者の会」が組合に加入し、被害の実態が世間に新聞やテレビでニュースになって約10カ月。
 諫早市役所は4月18日、新聞記事(末尾参照)のように公社の労働規約を改善するように指導したようだ。
 研究者によると、この市の指導を含め、今後、公社が取るはずの修正策は危険性がはらんでいるという。

 どこが問題かというとまず市が実態調査をしないこと。
 温泉を運営する外郭団体と諫早市の関係は市が100%公社に出資している。
 市は公社が一般財団法人なので別組織というが、100%出資ということは、市が全面的に運営に関与しているということだ。
 その証拠に市は、理事長、事務局長、事務次長を市役所OB、理事、監事に市役所職員を複数入れて最大勢力を構成している。
 そして温泉は、指定管理という制度ができる前は旧北高来郡飯盛町の施設で、古くは公務の労働者やそれに準じる立場で運営してきたはずである。
 ここの関係は、阪急が100%出資した外郭団体である宝塚歌劇団で起きた団員のパワハラ自殺と同じで、阪急がいやいやながらでも実態調査をしたことは周知の事実。
 ちがいは「天国へ行った人がいるかいないか」だけで、公社の正当性を証明するには「被害者の会」が希望する第3者をいれた実態調査しかない。

 また、研究者は市については業務委託の面からも指摘する。
 もともと市役所は、公社に業務を任せるにあたり、法令を順守することを条件としている。
 民間の契約だとこういう文言が入ることがないが、役所の業務委託なので法的な根拠がある。根拠があるなら、市役所が力を発揮できないことはないとする。

 続いて研究者は、今後取られるはずの公社の対策を以下2点の危険性も指摘している。
 まずは、就業規則の「パワハラ」追加。
「ハラスメント禁止」は今の時代、法的なもので、雇用者側は当然に認識するべきことだ。それを加えることにより、公社事務局による監視、管理が強まることが予想されるという。
 というのも、そもそもこの温泉、
管理する公社には、職員組合が存在しない。

 この件で一番の問題なのは、統括する公社事務局、理事、顧問弁護士などマネジメントの問題で、労基署などが想定するパワハラ対応は、被害者が出た場合、事務局が被害者の側に立って解決するように想定されているはずだが、
 実際、今回、諫早の公社は自身が労働委員会の調停やあっせんをはねのけている。この手の公社は地域の模範となるべきなのだが、そういう姿勢はまったくと言って見られない。
 ブレーキ役となる職員組合が存在しないため、今回のように「被害を一切認めない」ような特異な役職者が出た場合、関係改善に方向がむくどころか「被害を表に出さないようにして切り抜ける」ことが考えられるという。
 さらには、理事会に出席する外部委員も自治会長や婦人団体会長などで構成されており、労働関係団体からは1人も入っていない。

 現状では外部委員は、事務局の報告だけ承認の判子を押す役割しかなく、今流にいうコンプライアンスに対応する理事会ではないことはあきらか。
 今後、パワハラが起きた場合、
事務局側によほどに誠実な人がいない限り、この就業規則の改変が逆に機能することというのはたやすく予想できる。

 最後は、パワハラ相談体制。
記事を読む限り、苦情相談の調査段階でも必要に応じて、労働者の代表者と外部識者(おそらく弁護士)を入れて事案の深刻化を防ぐ体制づくり――となっていて一見いいようだが、前述の就業規則のところでもあるように、組合が存在しない。

ということは、問題が発生した場合、使用者側が指名した職場の人が代表者となり、それが被害者が希望しない加害者側の人間であるならば、加害者の保身の証言を補強するだけに終わる。

 外部識者にしても解決のために被害者が希望する弁護士が入るなら別だが、これも公社の弁護士が入ることが予想される。
 そうなった場合、雇用主の公社が保身に走れば加害者側にたつ職場代表と顧問弁護士で事案自体が闇に葬られ、出資者の市までも加害者側の正当性を認め被害者は泣き寝入りするしか、いよいよなくなると研究者は憂いを見せる。

 研究者から聞く限り、諫早市は「公社を指導したことで幕引きをしたい」ようだが、被害者の会は、賠償よりも公社内でパワハラが消えるように望んでいる。
そういう意味では市役所が今回とった指導は被害者らに報いているのか。
 被害者の中には「天国に行く人が出ないと市は改善に乗り出さないのか」と言う人もいるがこれでは諫早市は言われても当然だ。
 とは言え、
すくなくとも市民の多くが公社が管理する施設でパワハラがあっていることを諫早市がうっすら出してきたことは、ここの職員採用や市民の利用にも影響を与えるという部分では評価できるが、
今の市の対応では、まだまだ手ぬるく「諫早市が市民の命を財産を守る」など声高にいうことは、まったくナンセンスだ。

 以上が研究者から連絡があってこの問題での私の感想だ。

《諫早市施設管理公社パワハラ隠ぺい事件》
   被害者の会 相談役田中


NIB長崎国際テレビ

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