令和6年4月18日 諫早市施設管理公社に対し諫早市が行った「業務改善指導文書」を自治体研究者がチェックした
令和6年5月20日現在
指導文書の内容全文
【1】職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理職を含む労働者に周知・啓発することに関しては、厚生労働省が定めた指針においても、就業規則の中に規定を盛り込むことを第一項目として掲げていることから、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を就業規則の中に盛り込み、職場環境の規律を明確にし、職場で起こりうる労務トラブルを未然に防ぐことができるよう改善が必要と認められる。
【2】今回の件に関し、解決の機会を設けようとした長崎県労働委員会のあっせん案の送付及び諾否の意向調査に対して、受諾しなかったことは、話し合いによる解決の一つの機会を逃すことにもなったと考える。
職場内での労働者同士のあるいは労使間における課題の解決を図るために、できる限り協議の場を持ち、協議による解決に努めるよう求める。
【3】労働者間でハラスメント等の紛争が生じた場合は、事案の内容や状況に応じ、相談者及び行為者間の関係改善に向けて適正な労働環境が保てるよう配慮すること。また、双方のプライバシーの保護のため、相談窓口担当者や労働者に対し職場におけるパワーハラスメント、プライバシーの保護に関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施するよう求める。
【4】一般財団法人諫早市施設管理公社一般職員就業規則第46条及び嘱託職員就業規則第35条には、ストレスチェックを実施することが定められている。
産業医の選任等の課題もあるとのことであるが、ストレスチェックを実施すべきである。
【5】施設管理公社の「ハラスメント対策に係る方針」の中の「相談・苦情への対応の流れ」フローチャートにおいて、苦情相談の調査段階においても、必要に応じて労働者の代表及び外部有識者を入れるなど、発生事案の深刻化を未然に防ぐことができるよう改善を求める。
「自治体研究者」の見解
「被害者の会」が入手した諫早市役所が施設管理公社を指導したとする文書(4月18日付)と市が報道各社へ出した広報連絡文(同日付)と比較してみる。
比較することで、市役所の考えが浮かび上がってくるからだ。
行政機関を知らない人にまず広報・報道の仕組みをお知らせすると、役所は知ってもらいたいことを広報連絡文を作成して報道各社に流し、受けた報道各社は、広報連絡文の内容を判断して記事を書く。
広報連絡文はざっくりと事案内容を書いているので記者は、連絡文を元に役所が持っている資料を探りながら取材する。
このような、事故事案は、役所が公表を避けたい心理が働くので記者はあれこれと深く突っ込むことが求められる。
本題に戻ると、まず驚いたのは「被害者の会」が情報公開で入手した指導文書には何も黒塗りされていない。
どこまで隠すかは役所側の判断に委ねられていて、基準などはない。となると、今回の指導文書は隠す性質でないことを意味するが、やはり広報連絡文とは違いがある。
まず【2】の項目だ。
この指導文書は「被害者の会」の確認では、諫早市は同市が依頼する顧問弁護士の意見を伺って指導文書を出し、その後、広報文を出している。それを念頭に置いてみてみると、、
文の前半3行に「県労働員会のあっせん、意向調査を受諾しなかったことが解決の一つの機会を逃すことになったとも考える」の部分。ここは広報連絡文にはない。
従って諫早市役所及び顧問弁護士は、この問題が解決しないことは、「公社があっせん、意向調査を拒否している」ことにあると指摘していることになる。にも関わらず後半2行に「押し」がない。
後半2行は「協議による解決が不可能な場合は、公的機関を交えるなどして解決へ向けて話し合う」とすべきだと思う。
でないと、この【2】の項目について、公社事務局は「調査の上、協議したが、被害者はパワハラがなかったということを理解しない。事案が発見できないので労働委員会のあっせんは、乗れないし、発見できないのだから拒否は正当だ」と反論可能だ。
その場合、諫早市はどう返すのか?
「なら仕方ないですね」で済ますのか。。
それともこれは公社への探りなのか。
広報連絡文を再びみると、今回の問題施設の事案だけでとれば「公社があっせん、意向調査を拒否している」が報道してもらいたくなかったところで、後半2行を広報連絡文のようにして報道してもらうことで市民からの批判をなるだけ回避したともとれる。
つづいて【4】の項目。
就業規則に公社職員のストレスチェックを定めていること。
みなさんにはまず今回、従業員からパワハラが指摘されている問題施設は公社が運営しており、公社の一職場(事業所)であることを前提にこの先を読んでもらいたい。
その上で労働関連の法規では、ストレスチェックは「事業所ごと」の実施で、規模として50人以上の職場は、実施が必須だ。
問題の施設は、20人なので「努力義務」での実施となる。本来、必須ではない。
だが、問題施設のほか「のぞみ会館」「高城会館」などなど公社が市から委託を受ける施設を入れれば当然50人以上になり、公社全職員を対象に就業規則に実施を定めているなら「努力義務」から「必須」に上がると考えられる。。
とするならこのストレスチェックの「不履行」は雇用者側(公社)が従業員との約束を破っていることになる。
公社は気づかない従業員が悪いとでもいうのか?
そうはいえない事実がある。
問題施設、公社に労働組合が存在しないことを思い出してもらいたい。
就業規則は、雇用者が職場代表を指名(指定)して結ぶことが定められている。
組合が存在する会社(組織)では、組合役員が、その役目を担うが問題施設、公社には組合が存在しないため、事務局(雇用者)が職員のだれかを組合役員のように仕立てて指名して職場代表の承認・了解を得たとして就業規則を定め労基署に提出する。
これらの就業規則の手続きから考えると、
この「ストレスチェックの規則化」は、公社事務局側からの提案だったことが分かる。
しかも、ストレスチェックは、
この2015年12月以後制度化されている。となるとさかのぼっても、せいぜい2、3代前の事務局長が就業規則に定めることを考えたことは間違いない。
「ストレスチェックの規則化」が公社がお抱えの社会保険労務士と相談して自らなのか、親会社(市役所)からの指導によるものかは不明だが、、、。
市役所が指導したならば、市役所は公社の労働面に関与していることになる。
広報連絡からのニュースでは諫早市としては事故事案に踏み込んだようにも見えるが、全額出資で役員も送り出し、ある意味親会社である諫早市。
解決へ向けて権限が発動できるはずだ。
親会社の諫早市はこれで幕引きとしたいだろうが、このパワハラをここまでの仕事で終わりにするなら諫早市もこの公社のパワハラの再発防止に逃げ腰だと市民からみられても仕方がない。
奮起を期待したい。
以上、自治体研究者から助言を頂いた。
これらを参考にして、今後も施設管理公社、諫早市共に話し合い「被害者を出さない仕組みづくり」をして行きたいと考える。
《諫早市施設管理公社パワハラ隠ぺい事件》
被害者の会 相談役田中