愛猫とカメラ
空という猫
私の人生を振り返ると常に動物がいた。犬猫合わせて歴代の5匹が私の成長を見守ってきたのだ。そんな彼ら彼女らも寿命を迎えて最後に残ったのが『空』と言う雌の三毛猫である。
彼女は人を大きな猫だと信じて疑わなかった、子供の頃はよく喧嘩をしたが私が大きくなり身を引くことを学んだことでその数はかなり少なくなった。だが腹が減っただの少しは構えだの事あるごとに爪で引っ掻き、惰眠に勤しむ私の頭に齧り付く凶暴さと愛らしさを併せ持つ何とも素晴らしい猫だった。
私がカメラに興味を持ち始めた時には他の動物たちはすでに天国へと旅立って行き、残ったのはこの太々しい毛玉のみだった。そのため彼女は私のカメラの練習相手となり、飯を食う姿やベッドで丸くなる姿、トイレにて踏ん張っている姿などたくさん撮らせてもらった。その凶暴さの奥にある可愛さと美しさをカメラに残せることに飼い主として優越感を抱いたのもまた事実である。
2023年4月のこと
そんな彼女にもやはり生き物の道理として死の影が見え始めたのは2023年4月の末のことだった。たまたま口の中を覗いた時に上顎に赤い斑点が見えた。一瞬口内炎かと思ったがよく見ると歯肉よりも内側に独立してあるように見えた。その場で検索をしてある程度診断名の目星は付いたが、信じたくなくて翌日病院へ行った。
診断
診断名は扁平上皮癌だった。猫における腫瘍の好発部位である口腔内、さらに予後が悪い扁平上皮癌で、かつ切除術や薬物反応が悪い上顎部である。実質の余命宣告を受けたのだ。当時17歳だった空にとって侵襲性の高い治療は難しく、更なる精査も難しかった。主治医と相談しステロイドだけ処方して貰い帰宅した。
そこからはあっという間だった。出張中に吐血し急変して大騒ぎになったり、復活したり、その太々しさは最後まで健在だったが9月末に静かに息を引き取った。歴代の動物たちが16歳前後で天に昇った中、彼女は18歳まで生きたのである。堂々とした大団円だった、私もこのように亡くなりたいと思うほどだった。
それからのこと
少ししんみりしてしまう内容で申し訳ないが、話を冒頭に戻そう。ここからはカメラの話である。一種の供養になるのか分からないが私が撮り溜めた写真をここに載せようと思う。同じ扁平上皮癌の猫と生きてる方はその情報収集に(私もそうでした)、カメラ好きは観賞用に見て行って欲しい。
最後までありがとうございました。この翌日の朝に布団の中で静かに息を引き取りました。