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#母と娘 ⑦ 突然やってきたブレイクスルー

世の中には母と娘の確執について悩んだ有名人の体験談は、数々見つかる。
もともと人生論、恋愛論などの類は一切読まないわたしだったけれど、
青木さやかさんの『母』と、小川糸さんの『針と糸』だけは読んだ。

青木さやかさんの『母』はかなり話題にもなったが、それが理由ではない。
何年も前、まだ売れ始めた頃かもしれない。青木さんが途上国の山奥を訪れ、現地の人の家庭で過ごすというテレビ番組を見た。そこでの家族団欒の食事のシーンで、彼女は突然泣き出した。暖かい家族の雰囲気が辛い記憶のスイッチを押してしまったらしい。その涙からは寂しさと、やり場のない怒りが伝わってきた。慰められても、涙で何も答えられない。
何かあるのだろうな、と気になっていたのだ。
タイトルを見て、ピンときた。
やはり原因は母親だった!
でも、紆余曲折ありながら、一番苦手だった母親との関係を修復する。
「あとは笑って生きていこう」と変化していく結びには、わたしも救われた気がした。

最初に小川糸さんの作品を読んだのは、映画にもなった小説『食堂かたつむり』だ。ストーリーの根底に、主人公と母親とのスムーズにいかない関係がずっと流れているのが、引っかかった。とくに、下記のその一節が印象的だった。

私はほとんどの人や生き物を愛することができる。けれどたったひとり、おかんだけは、どうしても、心から好きになれなかった。おかんをうとましく思う気持ちは、その他すべてを愛するエネルギーと同じくらい、深くて重たいものだった。

小川糸『食堂かたつむり』ポプラ社 2008年

その後に小川さんのエッセイ『針と糸』を読んだ時、やはり母親と関係に悩んだ体験があったことを知った。
幼い頃からの母親への憎しみ、母親の介護中や看取った後に沸き上がった思いを読んでいると、心がズキズキして苦しくなった。
ちょっと読んでは本を閉じて一呼吸置くのが度々だった。

青木さんも小川さんも、母親が余命いくばくもない時に、かろうじて和解…もしくは、頑なだった自分の気持ちがかなり緩和されている。
今際の際にならなければ、歩みよれないなんて、何だか切ない。
それでも、わたしにもそんな日が来ると僅かでも信じたかった。

そんな時、霊視、高次の世界からのメッセージを聞くという、思わぬ機会があった。もちろん初体験!
これまでもスピリチュアルな事を否定はしていなかった。
目に見えない存在も信じていたし、科学で解明できない事象があるとはわかっていた。ただ、何かとそれを持ち出すことには、抵抗があったし、縁がなかっただけ。
わが家は、先祖供養など全然やっていない。自死したご先祖さまもいるし。今さらだけど、そんな事も気になってくる。
この体調不良の原因もわかるかもと、興味と怖さ半分でやってみた。

まず、今のわたしの状態として言われたのは、
「何も気にせずに生きたいと心が叫んでいます。完全主義、常識は捨てる。自分を大丈夫と安心させる。自分をわかってあげるように。今は人前で完全に自分を出せていない。本当は人が好きなはず。人を愛おしいと思う、本来の自分に戻ること」
今後のアドバイスとして、
「体調は良くなります。でも治そうと力を入れてはいけない。力を抜いて、自然と調和して委ねるのです。すべては力を抜くほど上手く行きます。愛をたくさん感じなさい。植物、動物、何でも…そして自分にもね」

なるほど、思い当たる。身に染みる。やはりご先祖さまより現世の自分だ!とはいえ、頭ではわかるけれど、ちゃんと実践できるのか…。道は遠い?

ところがある日、突然、電光石火のごとく「母の中にわたしがいて、わたしの中に母がいる!」と閃いた。その瞬間をどう説明したらよいのだろう。
特別な何かがあったとか、言われたとかではない。
本当に突然、ピカッと落ちてきた。そして涙が溢れた。
母への感謝、愛おしい気持ちをはじめて感じたのだ。
突然のブレイクスルーが起こった!
自分でもどうして、何が起きたのか、わからない。

これまで何とか楽になろうとやみくもと言えるほどの体験をしてきた。
いろいろな言葉、エネルギーをもらった。
飲み薬は、体内で血中濃度があるレベルに達した時に効果を現すという。
それと同じく、これまでのすべての体験が、わたしの中であるレベルに達した。それでブレイクスルーがもたらされたと思う以外、想像がつかない。
時間もかかり、散財もした。でも、何一つ無駄ではなかったのだ。
重たい緞帳が一気に落ちて、暗かった目の前に明るいステージが広がったような気がする。
登山でいえば、8合目到達!もう少しなんだけど…。


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