ココが変だよ!? 日本の広告業界 〜プロダクションマネージャー篇・後編〜
■PMを独立した職種に
そもそも、「PMはプロデューサーにならなければいけない」という概念をなくすべきだと思っています。
前述した通り、PMの仕事は非常に責任が重く、本来なら、その道のプロが担当するべきです。同時に、誇りを持って、一生続けられる誇らしい職種であることをもっと認知させていきたいと思っています。
そのためにキープロでは、PM職、そしてLP職を明確に分類し、給与面でもその内容に見合う報酬にしています。おそらく、社内PMとしては、日本で最も高い給料がもらえる制度になっていると思います。
https://www.key-pro.co.jp/statement/
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自分もですが、PMが好きでずっと続けていきたいと思う人もいるはず。
「Pになれなかった人」というレッテルは間違いであること。
PMは誇り高い重要な仕事であること。
歳を重ねても続けられる職種であることを、まずはわかりやすく給与面で、その貴重なスキルを評価したいと思いました。
実際にキープロには47歳のPMが在籍しています。
この考えに賛同してくれて、転職前はプロデューサーでしたが、PMとして頑張ってくれています。
まだ日本では前例がなく、環境が追いつかない部分もあり苦労をかけていますが、日本でも50歳のPMが、誇りを持って仕事をすることが当たり前になったらいいなと思っています。
■外注でPMの作業量を減らす
年齢を重ねても、PMとして担当するためには、やはり物理的な作業量を減らしていかないといけません。
前回のnoteで、企画作業は「barber」という会社に外注していることを書きました。社内のPMが空いていても、企画作業は全てbarberにお願いしています。これにより、かなりPMの負担が減ったことは前回のnoteの通りです。
同じように外注でPMの負担を減らすこととして、よく議論にあがるのが、「撮影現場での助監督への発注」という点です。
これもキープロルールとしてnoteに書きましたが、弊社ではなるべく全ての現場で助監督をつけるように指示しています。また、制作部(PM)は無理してでも、現場で座るようにお願いしています。
この点は、賛否両論があります。
昔は、PMが現場でカチンコを打って、大声を出し、ガシガシ現場を仕切っていました。私もスタジオでトラメガ片手に、現場を回すことが本当に楽しかったし、カタルシスを感じていました。
助監督に依存する賛否両論の「否」を唱える方は、そのことでPMとして成長できた成功体験があるからだと思います。
自分もここは、非常にジレンマがあります。
実際に、なるべく助監督は頼まないというプロダクションも多々あります。
でもキープロは、グローバルな視点で、PMは現場を回すべきではないと決断しました。
PMの成長という意味で遅くなるかもしれません。
それは否定しないのですが、今のPMが辞めていく現状を打破するためには、なんでもできるスーパーPMを育成するよりも、人として適切な作業量とワークライフバランスを担保する方へ、舵を切ってみようと思いました。
結果は数年後にでると思いますが、ここは海外の分業スタイルに倣ってチャレンジしてみたいと思います。
また、撮影におけるさらなる分業の仕組みとして、シューティングプロダクションの構想もあります。まだロゴしかできていませんが、撮影におけるバックヤードの業務を一手に引き受けるサービスです。
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例えば、撮影で出た生ゴミを深夜会社に戻って処理し、次の日寝ないで朝一に現場でスタンバイをする。これこそPMの仕事ではありません。
他にもタレント控え室の準備や、クライアントベースの設営など、そういった物理的な部分を外注できる仕組みがあれば、よりPMの負担も減るのではないかと考えています。
■ワークライフバランスを推進する環境づくりを
私のPM時代は、とにかく忙しくて、相当プライベートを犠牲にして働いていました。いまは、働き方改革が進み、昔ほどの労働環境ではなくなってきましたが、当時は、土日休みの人たちを本当に羨ましく思っていました。
また、プロデューサーになってからは、プライベートの繋がりや趣味が仕事に繋がることも多く、ゲームや漫画、ゴルフやワイン関連の仕事を受注することができました。
なによりも、プライベートが充実している人は、なんとなく仕事をしていてもわかるもので、良い循環が生まれます。
なので、キープロでは、プライベートを充実させるための特殊な福利厚生をつくりました。
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今では全社員がこの制度を活用し、雑談も生まれ、メリハリある生活を送っています。(多分w)
■最後に
いろいろと書きましたが、PMが辞めないために最も大切なことは、上司であるPと周りのスタッフ皆さんが、そのPMを「愛すること」だと思います。
今の日本におけるPMの環境は非常に過酷で、そもそも特殊です。
構造・慣習・制度上の問題はすぐには解決しません。
誰もが優秀なPMというわけでもないし、簡単には愛せないこともあると思います。
結局は、自分が必要とされているかどうか。
逆に、ここまでやることが多い=影響力が大きいということでもあるので、 それを司令塔であるPMが、やりがいに感じてもらえれば、よりワンチームで良いアウトプットにつながると思います。
プロダクション関係の方々へ。
コロナでリモートが多くなり、お互いのコミュニケーションが不足していないでしょうか。 スタッフへのリスペクトを教えているでしょうか。PMが憧れるプロデューサーは近くにいますか。たくさん褒めて伸ばしてあげてほしいと思います。これは半分、自分自身への自戒もこめて。
スタッフの方々へ。
PMはコマ使いではなく、大切なパートナーです。
「わかってねーな」とイラつくこともたくさんあると思います。
それでも、罵声で「制作部―!!」とならないよう、どうか暖かく指導してあげてください。
広告会社の方々へ。
ぜひ、PMを名前で呼んであげてください。
そして、ねぎらいの言葉をかけてもらえたら、そのPMは一生の思い出になります。普段話すことができない、特に上のCDから言われれば、なおさらです。
長くなりましたが、今の環境下でPMを守るためには、 決して甘やかすだけではなく、長い目で愛を持って指導することだと思います。
人は簡単に壊れてしまいます。
ひとつの成功体験が、PMにとってはなによりも大事で、自信になります。
そこから大きく飛躍する可能性もあります。
PMを大事にすることが、結果として、いいものをつくるための大切なプロセスだと思っています。
そういう意味では、PMはプロダクションの宝であり、広告業界の宝です。
かなり昔よりは労働環境は改善しましたが、業界全体でPMへもっと目をむけていくべきじゃないかなと思います。
次回は、「ココが変だよ!? 日本の広告業界 〜プロデューサー篇〜」を書いてみようかと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。