
もったいない!その事業、海外に知らせません?~自治体の海外広報のススメ~
はじめに
現代社会でのグローバル化の加速に伴い、海外広報の役割はより重要になっています。世界に向けた情報の発信は、自治体の魅力を伝え、観光客を引き寄せ、ビジネスの機会を生み出すなど、多くの可能性を持っています。
しかし、一息ついて考えてみてください。あなたが普段から取り組んでいる事業や、日常的に行われているイベントも、海外に紹介する価値があるかもしれません。海外への情報発信は「観光」や「ビジネス」に限られるものではありません。地域の魅力あるイベントや革新的な環境政策、ユニークな住民サービスなど、これらの取り組みを世界に向けて発信することで、自治体の知名度やブランド力を大きく高めることができるでしょう。
海外広報に踏み出すきっかけは、身近なところにたくさんあります。「その事業、海外に知らせませんか?」そんな視点を持つことから始めてみてください。世界を意識するだけで、事業の進め方や目標設定が大きく変わるかもしれません。
そう、海外広報は決して特別なことではありません。日々の業務の延長線上に、世界とつながるチャンスが転がっているのです。そのチャンスを逃さず、積極的に海外発信に取り組む。それこそが、これからの自治体に求められる姿勢なのです。
とはいえ、海外広報に独特のノウハウが必要なのも事実。言葉の壁を乗り越え、文化の違いを理解し、相手の興味を引くストーリーを紡ぐには、一定の知識と経験が欠かせません。
でも安心してください。このガイドを読めば、あなたも海外広報の達人に!とまではいいませんが、海外メディアの特性を理解し、彼らが求める情報を的確に提供することで、自治体の取り組みを世界に効果的にアピールできるようになります。
海外広報の魅力は、何と言っても、世界中の人々と直接つながれること。自治体の魅力を肌で感じてもらい、共感や憧れを抱いてもらうことで、自治体のブランド力は飛躍的に高まります。海外から多くの人々が訪れるようになれば、地域経済の活性化にも大きく貢献するでしょう。
また、海外広報は自治体の視野を広げ、グローバルな課題解決へのヒントを与えてくれます。世界各地の先進事例に学び、自治体の取り組みをブラッシュアップすることで、住民サービスの向上にもつながります。
もちろん、海外広報にはチャレンジングな面もあります。しかし、その試行錯誤の過程こそが、海外広報の醍醐味。世界とのコミュニケーションを深めていく喜びは、きっとあなたを虜にするはずです。
そんな海外広報の魅力と必要性を、このガイドを通じて存分に味わってください。今回は海外向けのプレスリリースにテーマを絞ってお伝えします。基本的な心構えから実践的なテクニックまで、海外広報に必要な知識を網羅的に学べます。さあ、自治体の皆さん、Let's go global! 「その事業、海外に知らせませんか?」 そんな視点を持って、世界を舞台に自治体の魅力を存分に発信しましょう!
1.プレスリリースは「既製のニュース原稿」
海外広報の花形と言えば、やっぱりプレスリリース!でも、ただ情報を並べるだけじゃダメなんです。海外メディアに伝わる「既製ニュース原稿」を作るのがコツ。広報的な表現は最小限に抑え、本物のニュース記事のように書くこと。記者のリライトが少なければ少ないほど、記事は掲載されやすくなります。もう一度言いますよ。美辞麗句は不要です。余計な宣伝文句も不要です。そのまま新聞原稿やニュース原稿になることを前提に書くことが海外へのプレスリリースの本質です。
プレスリリースを書く時は、届けたい人を意識するのが大事。CEOに届けたいのか、主婦に届けたいのか、ターゲットによって書き方は変わってきます。「すべてのメディアに合う」万能なプレスリリースなんてありません。
そして忘れちゃいけないのが、ニュース性のあるストーリー。あなたには伝えたいことがあるはず。それをタイムリーで適切なものにする必要があります。
記者は同時に複数の記事を書いていて超多忙。だから、読みやすさが命です。長さは1~2ページ、重要な情報は上部に載せましょう。要点は素早く伝えるのがポイントです。
2.ストーリーの切り口を見つける
プレスリリースを作成する際には、「あなたが伝えたいこと」と「読者が現在関心を持っていること」を上手く組み合わせることが重要です。例えば、気候変動が緊急の問題とされ、世界が解決策を模索している時に、あなたの自治体が新しいグリーンイニシアチブを発表すると、それがタイムリーで適切なストーリーとなります。
したがって、世界が注目しているグローバルなテーマが何かを把握し、それに注目する必要があります。環境問題、貧困、AI、エネルギー、人口増加、難民問題、教育の格差、ジェンダー問題などです。これらに何らかの形でリンクさせることで、記事やニュースとしての取り上げられる可能性が大きくなります。
注目を集めるキーワードは「新しい」と「今」です。新規性や意外性を持つもの、世界が今関心を持っているトピックを取り入れることで、ニュースとしての価値が増します。例えば、「2028年までに東京の電車は100%太陽光発電になる」とか「AIを活用した食の祭典が渋谷で開催される!」などです。
3.プレスリリースの構成術
プレスリースの構成は、記者の思考の流れに沿ったものでなくちゃなりません。最初の数行で勝負が決まるから、最も重要な情報は冒頭に持ってくるのが鉄則。タイトルは5W(Who、What、When、Where、Why)から重要な要素を選んで。第一段落のリード文では、ニュースの核心を誰が、何を、いつ、どこでの4Wで説明。第二段落で具体的な内容や実施方法(How)、第三段落で背景(Why)、第四段落で責任者のコメントを入れれば完璧。
文字だけじゃ物足りない?そんな時は視覚的要素も活用しましょう。でも、形式的な集合写真はNG。活動の実態が伝わるダイナミックな写真を選ぶのがポイント。人物が写ってる場合は許諾も忘れずに。高解像度の画像を用意するのも大事です。
海外メディア向けの文章には、国内向けとは違う工夫が必要。日本の文化や制度を知らない読者に伝わるよう、基本情報の補足は欠かせません。例えば、「東京23区」は「東京の中心部を構成する23の行政区」と説明を添えましょう。地域の課題も、できるだけ世界的な課題と関連づけて説明すると効果的。
プレスリリースの説得力を上げるには、データや統計、事例、専門家の見解など、情報の補強も大切。ただ羅列するんじゃなくて、多角的な視点から裏付けることで、信頼性がグンとアップします。
第4章 戦略的に発信しよう
プレスリリースを配信するタイミングって、意外と重要なんです。海外メディアへのプレスリリースは、週の前半(月曜~水曜)が狙い目。週末は他のニュースに埋もれちゃう可能性大だから、要注意。国際会議やイベント、首脳来日、選挙の時期も避けた方が賢明です。
情報発信の成功は、適切な配信先選びと良好な関係構築が鍵を握ります。通信社は速報性、新聞は詳細な分析、テレビは視覚的な要素、専門メディアは専門性を重視するなど、メディアの特性をしっかり理解して、内容や形式を調整するのがコツ。定期的な情報提供、迅速な問い合わせ対応、柔軟な取材対応、バックグラウンド情報の提供など、日頃からメディアとの関係作りも大事。
プレスリリース配信だけで満足しちゃダメ。記事化のチャンスを増やすには、効果的なフォローアップが欠かせません。電話やメールでの丁寧なフォローに加え、追加情報の提供、取材や関係者インタビューのセッティングなど、積極的なアプローチを心がけましょう。でも、しつこすぎるのは逆効果。記者の立場に立って、程良い距離感を保つのが肝心。
ちなみに英語でのコミュニケーションは苦手という方も心配ありません。少なくとも日本に駐在する海外メディアの記者は日本語がある程度可能。向こうもネタを求めているわけですから、こっちもガンガンと情報提供していきましょう。
配信したプレスリリースの効果測定も忘れずに。掲載記事の数や内容、論調、SNSでの反応、問い合わせ数など、色々な指標をチェックして、次の改善につなげましょう。
5.有事の際の情報発信
危機管理広報は、海外広報でも最もデリケートな分野。正確な情報をタイムリーに発信することが何より大切。でも、不確実な情報を発信するのは厳禁。確認された事実のみを、状況の進展に応じて順次発信するのが基本です。
危機の際は特に、多言語対応が鍵となります。単なる機械翻訳じゃなくて、文化的背景を考慮した適切な表現が求められます。人命に関わる情報、安全確保に必要な情報を最優先し、問い合わせ先の多言語対応も怠らずに。事前に信頼できる翻訳者リストを作っておくのもいいアイデア。
ソーシャルメディアの時代、情報発信と同じくらい、情報の監視も重要な任務。関連キーワードの監視を欠かさず、誤情報の早期発見、反応や評判の分析を心がけましょう。公式アカウントからの情報発信ルールや対話方針も、事前にしっかり決めておくことが肝要。
有事の際のメディア対応は、組織の評価を大きく左右します。記者会見や取材対応は、文化の違いを踏まえつつ、明確かつ簡潔に、質問の意図を正確に理解して応えるスキルが求められます。各国メディアの特徴を理解し、質問スタイルの違いに対応できるよう、日頃からトレーニングを積んでおくと良いでしょう。とは言いますが、なかなか難しいところもあると思います。東京都では、非常勤で「専門員」として、英語圏の外国人を雇用していました。業務内容の契約の問題もありますが、いざというときに言語サポートしてもらえる体制を作っておくというのも一つの手かもしれません。
6.デジタル時代の情報発信
プレスリリースもデジタル時代に合わせて進化が必須。昔ながらの文字情報だけじゃなく、画像、動画、データビジュアライゼーションなど、多彩な表現方法を組み合わせることで、より効果的な情報発信ができるようになりました。
オンラインで配信するプレスリリースなら、関連データへのリンクや詳細情報へのアクセスもラクラク。ソーシャルメディアとの連携で、より広い層へのリーチも見込めます。都市計画なら3Dモデルやシミュレーション映像を、環境政策ならCO2削減効果の具体的な数値化など、先進技術を活用したわかりやすい表現を心がけるとグッド。
情報発信の要は、自治体独自のオンラインニュースルーム。プレスリリースだけでなく、画像、動画、データなど、記者が必要とする情報を一元的に提供できる場所を作りましょう。ただの情報置き場じゃダメ。記者の取材をサポートする場としての機能も大事。事前登録システムやインタビュー申し込み、バックグラウンド情報の提供など、記者目線でのサービス精神を発揮しましょう。
デジタル時代の情報発信で欠かせないのが、ソーシャルメディア戦略。プレスリリースの内容を、プラットフォームごとに最適化するのがポイント。Twitterでは要点と印象的な画像を、LinkedInでは専門的な解説を意識して。データジャーナリズムの台頭で、プレスリリースでもデータ活用は必須。ただ数値を並べるんじゃなく、データの意味や物語を提示することが肝心。グラフや図表、経時変化、将来予測など、分かりやすく魅力的な形でデータを届けるのが理想です。
7.PDCAサイクルを回そう
効果測定は、広報活動の質を高めるために欠かせません。特に海外広報は、言語や文化の違いによる誤解のリスクもあるだけに、慎重な分析が必要不可欠。掲載メディアの数や種類、SNSでの拡散状況など定量的なデータに加え、記事の論調や引用情報の正確性、読者の反応など定性的な評価も重要。
せっかく頑張って集めたデータも、次のプレスリリースに活かさなきゃ宝の持ち腐れ。記事の詳細分析、未掲載メディアの理由調査、記者からのフィードバック収集など、データの背景を丁寧に読み解くことが、改善へのヒントに繋がります。そこから見えてきた課題をもとに、表現方法の見直し、情報量の調整、視覚的要素の改善、配信タイミングの最適化など、具体的な改善策を実行に移していきましょう。
8.プロ記者の視点で磨きをかける
プレスリリースを磨くには、海外メディア記者の視点を理解することが何より大切。記者にとってストーリーがすべて。どんなストーリーなのか、どれくらいの情報が得られるのか、誰にインタビューできるのか。そこが記事になるかどうかの分かれ目なんです。
締め切りを厳守するのは大前提。記者の動きは超高速。「明日インタビューできる?」なんて平気で聞いてきます。そんな彼らに読まれるプレスリリースは、過度な形容や誇張表現を避け、事実を淡々と伝える必要があります。特にテレビの場合は、ストーリーを視覚的に見せる工夫が欠かせません。
大量のプレスリリースやメディアアラートに埋もれる記者の目を引くには、フォローアップの電話が効果的。日本語を話せる外国人記者も多いので、遠慮は無用です。
最低限、インタビューに応じられるスタッフを準備することが大切です。さらに、キーパーソンや専門家(例えば大学教授)へのインタビューを進んで提案することで、記事の完成が大きく前進します。また、高品質の写真データを用意することも重要です。テレビで映える最適なビジュアルを考慮するのもいいでしょう。
ニュース性を高めるには、数字とデータが武器になります。信頼できる統計を駆使して、規模感や初めて感、最先端感をアピール。「東京に来る観光客や企業が大幅に増加」といった東京のプレゼンス向上を示す調査結果も有効です。トピックをよくリサーチし、あなたのストーリーのためのユニークな切り口を見つけ出すのが肝心。決してあきらめずに!
写真選びのコツは、背景とストーリーを感じさせること。人間と交流するロボットの写真なら、単なるロボット写真よりもグッとニュース性が増します。集合写真も、ただ並んでるだけじゃNG。プレゼンターを中心に、その熱意や躍動感が伝わるショットを選ぶのが正解です。
プレスリリースの作成にAI翻訳を利用することは否定しませんが、過度に依存することは避けるべきです。最終的には人間の目でのチェックが不可欠です。翻訳の精度を高めるためには、誰にでも理解しやすいシンプルな日本語を使用することが重要です。主語をはっきりさせ、一文を短く保つことがポイントです。最終的な校正は、記事の執筆経験がある外国人に依頼するのが最善です(専門業者を利用することも一つの方法です)。しかし、それが困難な場合でも、役所に勤務する外国人交流員に軽く目を通してもらうだけでも、効果は大きく異なるでしょう。
数字とデータも、ニュース性を高める強力な武器。信頼できる統計を駆使して、規模感や初めて感、最先端感をアピールしましょう。写真選びも、背景とストーリーを感じさせるものを。人物写真なら、熱意や躍動感が伝わるショットを選ぶのが正解です。
最後に、プレスリリースの効果測定について考えてみましょう。より良い広報活動のためには、PDCAサイクルを回すことが不可欠。掲載メディアの数や種類、SNSでの拡散状況など定量的なデータと、記事の論調や読者の反応など定性的な評価の両面から分析することが大切です。改善点が見えてきたら、具体的なアクションに移していきましょう。
おわりに
海外広報、もうビビる必要ナシ!このガイドを片手に、グローバルな情報発信に乗り出しませんか?相手の立場に立って考え、工夫と改善を重ねていくことが、成功への近道。最初は大変かもしれないけど、世界とつながる喜びを感じたら、きっと努力も苦じゃなくなるはず。
海外広報の道のりは険しいかもしれません。でも、一歩ずつ着実に進んでいけば、必ず世界とつながる喜びが待っているはず。日本の魅力を世界に発信する素敵な任務、自治体の皆さんなら絶対にできます!さあ、一緒に頑張りましょう!
自治体の皆さん、日本の魅力を世界に届ける素敵な任務、一緒に頑張りましょう!