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投資詐欺は国を滅ぼす。

 2023年1月。人気お笑いコンビTKOの木本武宏さんが投資によるトラブルで記者会見を開いていたことはご存知だろうか。この時、同時期に相方の木下隆行さんもトラブルを起こしてしまったことからネットではトラブルコンビとして炎上していた。また、それ以降2人の姿をテレビで見ることは無くなっただろう。
 では、彼は投資においてどのようなトラブルを起こしてしまったのか。ネットでは、仲のいい芸能人を騙したことによりさらなるトラブルが生まれたと吹聴され、最低のレッテルを貼られてしまっている。しかし、今回の投資トラブルについては対岸の火事と言えるものではないのだ。今回のこの投資トラブルが一番ダメージを喰らってしまうのは芸能人ということなのだが、特に集団性や協調性を重んじる日本人という国民性を考えると誰もがこの投資トラブルに巻き込まれるような内容なのだ。
 そして、現在Z世代で特に学生起業家を名乗るそこの君。あなたこそ、この投資トラブルを引き起こす相手からすれば目の前にある焼肉で焼く前に皿に並べられた霜降りの乗った肉そのものだ。
 彼らは、その肉をどう焼いてやろうかとヨダレを垂らしながらあなたを見ているのだ。

 今回の記事は、TKOの投資トラブルを基にこの今回の手法とその対処法を書いて行こうと思う。

 まず、今回の投資トラブルとはどういうものか。これは、今現在も司法の上で戦っている状態であるため実名などは明らかとなってはいないためそこはご了承いただきたい。
 では、簡単なあらすじを書くと木本さんは、とある資産家AさんからFXや株で勝つ方法を教えてもらう機会をもらって、それである程度稼ぐことができた。しかし、どんなに投資のやり方を教えてもらっても投資の世界には機会損失というものがある。これは、例えば仕事中やプライベートで飲んでいる時などの間に取引を行っていればプラスの収益を見込めたものをそれが叶わなかったことである。そして、木本さんは激務な芸能界での仕事が多くこの機会損失がかなり多かったということもあり、それをAさんに相談した。すると、Aさんは代理で取引を行うことを提示。それに乗った木本さんは大金をAさんに渡した。すると毎月一定額のお金が返ってきたのだ。これを周りの仲のいい芸人仲間に話すと他の芸人仲間もそれをやれるようにお金をAさんに預けたのだ。その額なんと芸人仲間10人で1億7000万円だ。しかし、A氏は少し投資での状況があまり芳しくないことを伝えていたが、一部の返金を行なった後、Aさんは蒸発してしまった。その後、B氏という別の人間が現れ、その人に投資詐欺にあったことを相談した。
 そうすると、B氏は不動産投資による投資を提案してきた。それにノッた木本さんはB氏に芸人仲間4人で5億円の出資を行った。
そして、B氏からも一部お金が返金されたとのことだったが全額返されないままとなっているというのが今回の投資トラブルのあらすじだ。なお、この件において木本さんは紹介料などは一切もらってなく、単純に騙されてしまったという完全被害者側の話だったのだ。それを今回のように詐欺のように疑われて記者会見までさせられるという始末に至っている。

 では、この投資トラブルだが、私はあえてこれを投資トラブルと表現している理由がある。
 おそらく、これを読んだ読者は完全に投資詐欺じゃないかと考える人が多いだろう。しかし、実はこの一連の投資トラブルについては詐欺として立件することが困難なのだ。その理由は大きく分けて二つある。

 ①そもそも、これは最初から<投資>と言われている点だ。投資には必ずリスクが伴うものだ。それでお金が返って来ないというものは詐欺として立件することは難しい

 ②今回の件に関しては、最初の方にお金がリターンされていることと、一部のお金を返金しているという点だ。

 この話をすると、そもそも詐欺罪について法律の観点から成立する条件を言わなくてはならない。
 詐欺罪は刑法246条<人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。>

そして、この刑法に該当するためには以下の3つの条件のどれかに該当しないとけない。
 ①着手時期・・・加害者が被害者の財産を騙し取る意思を持って、人を欺く行為を開始した点
 ②既遂・・・人を欺く行為から実際に財産が引き渡された段階。既遂時期は専有移転時(不動産の場合所有者移転登記完了時も含む)
 ③未遂・・・人を欺く行為で詐欺に着手するも、財産の引き渡しに至らない段階

この三つの条件において詐欺罪のポイントとなるのが①何者かを騙し、②被害者の認識と事実とが異なっている状態にして、③被害者の持つ財産を移転させることがポイントとして挙げられ、このポイントが重なったことで成立するのだ。

 では、今回の事例はどうだろうか。①投資というリスクの伴うことを承知していること、②一部のお金をリターンすることでお金を返そうという意思を見せている点

 そう。この2点からこれを詐欺罪として成立させることが非常に難しいのだ。つまり、泣き寝入り案件ということになる。

 これが、100年前から詐欺の方法として確立されている<ポンジ・スキーム>というものなのだ。これは、チャールズ・ポンジという1882年から1949年イタリアのチャールズ・ポンジによって確立されたやり方だ。

 では、このやり方を次のようにまとめよう。

    ①まず、投資とは関係なく相手と親密な関係を作る。
    ②親密な関係になったD氏に対して投資で自分が儲けていることを話す。
    ③自分のやっている儲け方をD氏に教えて儲けさせる。
    ④儲けさせた段階で、自分の主催する高級なパーティに招待する。
    ⑤投資仲間を集わせる。
    ⑥集まった投資仲間のお金で自分が代理で投資をすることを提案する。
    ⑦一部のお金を返金して蒸発する。

 これが、一連の流れだ。このやり方の怖さは、❶詐欺罪として立証しにくいこと。❷心理的・物理的信頼感を作り出していること。❸第三者に相談しにくいこと。
 まず❶は、上記で説明した通りだ。
 では、次に❷だが、まず①で心理的信頼感を作り出していること。②で、儲けているという<事実>と儲けさせた<経験>。さらに③による催し物に無料で参加させた<尊敬>によって、信頼から安心感へと変換させているのだ。そして、❸。このやり方において、一番ダメージを受けるのは誰か。そう。⑥でお金を集めさせてしまったという点で世間から大バッシングを受けてしまうことや、仕事を奪われてしまう芸能人やyoutuberなどのインフルエンサーだ。さらに、お金に対して一般人より貪欲な若手起業家だ。
 彼らは、世間体というものは生きていく上で最重要事項で気にしなくてはならないものだ。だから、このような詐欺に引っかかったことを周りに知れたらどうなるかという恐怖があるのだ。だから、相談することができない。

 そう。これを見た読者の諸君。お気づきだろうか。これは確かに起業家やインフルエンサーにしぼってダメージの大きさを伝えた。しかし、この日本はどういう国だろうか。<以心伝心>、<一致団結>、<空気を読む>、と集団行動に関する熟語や言葉が数多くあるこの国だ。果たして、そんな国で生きてる諸君は、詐欺にあったことを安易に相談できるだろうか。

 投資に絶対はない。あるものは<強いものは食って、弱いものが食われる>だけだ。

 次に狙われるターゲットは、あなたかもしれない。
 あなたの周りの友人の誰かがこれをもう既に仕掛けているのかもしれない。
 そんな国であなたはどのように生きるか。

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