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原監督、クレディスイスで大損しちゃったって ① (第8日)

ちょっとびっくりなニュース。
青学大の駅伝部監督の原晋さんが、クレディスイスで大損したって嘆いてた。
なんでも、「AT1債」とかいうものを買っていて、それが紙くずになったんだって。
ご本人は「サラリーマンの年収の数倍」ていってる。
これはショックよね、ホントに。

原さん、駅伝一筋で、投資とかにのめり込んでいる感じがしない。
ご本人も証券会社の人に、リスクの小さいものをって、お任せしていたみたい。でも、こんなことになっちゃった。
これは大きなニュースよね。
経済ニュースにはほとんど興味ないけど、これは別だわ。

スタッフルームにいた先輩キャスターMに、
AT1債の事を聞いてみた。
今度のオンエアでも取り上げられるだろうし。

「AT1債というのは、債券の一種で『永久劣後債』の略だ。」
Mは得意げに説明を始めた。
こういう所が嫌いだけど、今は我慢する。

「債券というのは、売買可能な借用証書だ。企業などが借り入れをする場合、銀行融資が一般的だけど、債券を売り出してお金を集めることもある。債券を購入することで、投資家は企業や銀行などの発行体に資金を提供、つまりお金を貸して、利息をもらう。で、返済期限が来たら債券を買い戻してもらい、借金を回収するんだ。これが償還だね。」
「永久劣後債というのは、償還期限が決められていない。だから『永久』なんだ。だから、お金を返してもらいたいときには、他の人に債券を転売することで、資金を回収するんだ。」
「次に『劣後債』の意味だ。これは発行体が潰れたとき、弁済の順位が低い債券のこと。銀行が潰れた場合、弁済順位がもっとも高いのが預金で、その次が普通の社債、その次に期限付きの劣後債、その次が期限のない永久劣後債だ。そして、もっとも弁済順位の低いのが普通株式となる。で、潰れたとき、残っていたお金をこの順番に弁済に回し、無くなった時点でおしまいとなる。だから、永久劣後債が弁済される可能性はかなり低くなる。株式はほぼ間違いなく紙くずになるけど、永久劣後債の紙くずリスクもめちゃくちゃ高いんだな。」

「そんな不利な債券、誰が買うんですか?」と聞いてみた。
自分だったら、絶対に買わない。

「同じ条件だったら、誰も買わないさ。そこで、債券の利息を高くするんだ。ハイリスク・ハイリターンの債券ということになるね。クレディスイスのAT1債の利息は9.75%という、かなりの高金利のものもあった。これで購入者を集めていたんだな。」
「原監督は、リスクが低いと思っていたといってましたが・・・。」
「販売した証券会社が、どこまで説明していたかは不明だ。こんなに金利が高い債券が、安全なはずはない。ハイリターンなら、間違いなくハイリスクだ。詐欺まがいの投資勧誘は皆、安全で高利回りと宣伝するけど、騙されちゃダメ。そんな甘い話はない。君も気をつけろよ。経済キャスターが騙されたら、笑いものだからね。」

M,すごく感じ悪い。
でも、気をつける。

「クレディスイスは約160億スイス・フラン(約2・4兆円)のAT1債を発行し、証券会社を通じて投資家に販売されていた。
 ところが、今回の経営危機で、それが全部、一瞬で紙切れになっちゃった。2.4兆円が消えたんだよ。日本では1400億円ほどが販売されていたとされているけど、もっと増えるかもしれないて、原監督もその1人だったんだな。」

投資家たちは、AT1債を購入することで、クレディスイスに融資をしていた。それが経営危機になったことで、焦げ付いたわけね。

でも、疑問がまだ残ってる。
そもそもAT1って、何の略なの?
経済ニュースって、FRBとかFOMCとか略語が多くてホントに困る。
とりわけ、英語のできない私には・・・。
で、Mに聞いてみた。
「ところで、AT1って、何の略なんですか?」

この質問にMは、当惑したような表情を見せた。
「永久劣後債の略だ」というんだけど、聞きたかったのは、正式な英語名だ。永久劣後債を英語にしても、AT1にはなりそうにない。

ん?
なんか、Mがちょっと動揺してる。
知らないんじゃないの?
あれ、トイレに行っちゃった・・・。
ねえ、AT1って、何の略なの??

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