楽しいGWなのに、宿題が出された。 (愚痴日記 #18)
ゴールデンウィーク期間中、番組は特番が入るのでお休みだ。
のんびりできる・・・って思ってたら、プロデューサーSに宿題を出された。「休みの間に見ておくように・・・」って、映画のDVDを渡されたんだよ。小学生じゃないんだから、宿題なんて出さないで欲しい。
テレビ付けたら、同期のアナウンサーが、GW特集で「お勧めグルメスポット」のレポートしてた。美味しそうな物を一杯食べてた。うらやましい。
それに比べて、こっちは宿題と取り組む羽目になってる。不公平よね。
見ろと言われた映画、わけの分からない経済関係の映画だよね・・・と思っていたら、意外にもミュージカル映画だった。
ディズニー映画「メリーポピンズ」、1964年度のアカデミー賞5部門を受賞したミュージカル映画の傑作だという。
とても楽しい映画だった。「チム・チム・チェリー」など、聞き覚えのあるナンバー、アニメと実写を合体させた特殊効果映像など、古さを感じさせない素敵な作品だった。
何でこれが宿題?と思って見はじめたんだけど、理由はすぐに分かった。映画の舞台が銀行員の家庭だったんだ。
面白かったのが、「取り付け騒ぎ」のシーン。
銀行員のパパが、子供たちを自分の働いている銀行に連れゆき、口座を開設させようとする。
その金額はたった2ペンスだったけど、子供たちは「嫌だ!」って、抵抗するの、公園にいるハトの餌を買いたいってね。
親子がもめているところに、銀行の頭取が通りかかり、子供たちから無理矢理2ペンスを取り上げてしまったんだ。
「僕たちのお金を返して!」と子供が叫ぶ。
頑固な頭取は、返そうしない。
すると、この騒ぎを見ていた他の預金者たちが慌て始める。
「この銀行はお金を返さないみたい。」
「私の預金を今すぐ、全額返してちょうだい!」と、窓口に殺到して大混乱。
「あの銀行は潰れそうだ」って噂が街中に広がったのか、パニックになった預金者が、押し寄せてきちゃったんだ。
これがいわゆる「取り付け騒ぎ」よね。根拠があろうがなかろうが、小さな出来事をきっかけに、不安の連鎖が銀行を追い詰めちゃうんだ。
映画ではコミカルに描かれてたけど、銀行にとっては一大事。
DVDにはプロデューサーSのメモが入っていた。
「映画見たかな? アメリカで立て続けて発生した銀行の破綻劇は、取り付けが引き金になった。」
「映画が作られたのは半世紀以上前のことで、現代は当時とは比べようもないほどに、コミュニケーションツールが発達している。したがって、取り付けのスピードも、猛烈な早さになるんだ。」
「最初に経営破綻したシリコンバレー銀行の場合、3月8日に債券で損失が発生したと発表されると、翌日の9日には420億ドル、5兆円余りの預金が引き出され、10日には1000億ドルの預金が流出する見込みとなった。そして、損失が判明してからたった2日後の3月10日に経営破綻した。」
「猛スピードの取り付け、これを生んだのがSNSだ。銀行経営への懸念に関する書き込みが拡散し、『とにかく預金を引き出せ!』、『質問なんかしている余裕はないぞ!』という書き込みが相次ぐことになる。」
こんな書き込みを見たら、私だってすぐに預金を引き出すわ。
今はネットで簡単に引き出せるしね。
「今回の取り付け騒ぎは、『デジタル・バンク・ラン』」と呼ばれている。取り付けは英語で「bank run」だ。銀行に走って行って、お金を引き出す。でも、現代は デジタル時代、走る必要なんてないから、猛烈な早さで預金が流出してしまう。そこで、デジタル・バンク・ランという、新しい言葉が誕生したんだ。」
「2008年のリーマンショック以降、アメリカでは金融機関の経営危機はほとんど起こっていなかった。したがって、どの銀行もデジタル・バンク・ランの経験がない。銀行経営者は、戦々恐々としているんだ。」
「潰れた3行に加えて、新たに経営不安が広がっている銀行が出始めている。映画のような大騒ぎが、また発生するかもしれない。気を引き締めて、しっかり伝えてゆこう。」
はーい、分かりました。
これで宿題は終わり!
まだGWは残ってる。
明日は遊びに出かけます!