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また、銀行が潰れたってさ ① (第14日)

 アメリカでまた、銀行が潰れた。
 銀行の名前はファースト・リパブリック銀行、サンフランシスコに本店があり、昨年末時点の資産規模は2126億ドル(約28・9兆円)と全米14位。
 富裕層向けビジネスを手がけて急成長したけど、あっさり潰れちゃった。
 アメリカの銀行破綻では、過去2番目の規模だって。

 銀行って、ヤバくない?
 3月10日にシリコンバレー銀行が潰れ、
 2日後にシグネチャー銀行っていうのが潰れ
(これは知らなかったけど・・)、
 今度はファースト・リパブリック銀行。
 スイスでも青学大の原監督が大損しちゃった、
クレディスイスが潰れたし・・・。

 今回も金融当局が強力に介入し、大手銀行のJPモルガンチェース銀行に吸収合併させた。緊急手術で傷口を塞いだので、混乱はほとんど起きてないみたい。
 でも、なんで大きな銀行が、こんなに簡単に潰れちゃうの?
 アメリカって、景気がいいはずじゃないの?

 そばにいたのが先輩キャスターM。
 恐る恐る、素朴な疑問をぶつけてみた。

 するとMは、
「FRBの金融引き締めと預金流出が原因だ。」という。
「この銀行は、アメリカ国債に巨額の投資をしてきた。ところが、FRBが金融引き締めを加速させたことで、大きな損失が発生してしまったんだ。金利が上がると、国債の価格は下落するからね。その結果、『潰れるんじゃないの・・・』と不安が広がって、預金が大量に引き出され、万事休すということになったんだ。」

「預金が流出すると、潰れちゃうんですか?」
「そうだ。銀行は集めた預金を融資に回し、預金金利と貸出金利の差、つまり利ざやを得ることで、ビジネスを成り立たせている。」

「もし、預金が急激に減った場合、その分だけ融資も減らさなくてはならない。でも、融資は簡単には返済してもらえない。」
「もし、銀行の窓口で『預金を引き出したい』といったら、『ちょっと待ってください。融資を回収しないと払えないんです・・・』なんていわれたらどうする?」
「そんなヤバい銀行なら、すぐにでも預金を全額引き出そうとします。」
「そうなるよね。銀行経営に不安が広がると、潰れる前に預金を引き出しておこうという動きが広がり、ますます預金が減って、銀行ビジネスが破綻してしまうんだ。いわゆる『取り付け』だな。」

 いつもは冷たいMだけど、
 今日は親切に説明してくれた。

「4月24日の決算発表で、3月中旬以降、約1000億ドル(約14兆円)の預金が流出したことが判明したんだ。これが預金流出に拍車をかけ、『潰れそうだ・・・』ということで株価が8割も下がってしまった。これでギブアップとなったわけだ。」

 でも、もう一つの原因が分からない。
 FRBによる金融引き締めで、なんで投資していた国債に損失が発生するの?
 このからくりが分からなかったので、何でなんでですか?とMに聞いた。

「国債金利が上がると価格が下がる。機械的にこう覚えておけばいいんだ。ファースト・リパブリック銀行は、国債を大量に買っていた。それがFRBの金利引き上げて損失を出し、それが不安要因となり、潰れたんだ。」といって、部屋から出て行っちゃった。
 
 やっぱり、意地悪なM。
 私の質問にちゃんと答えてない。

 ネットでいろいろ調べてみたけど、『国債金利上昇(価格下落)』と書かれているだけ。
 また、フリーズしてしまった。
 そこに、プロデューサーSがやってきた。

「国債金利と価格の関係が分かりません。」と聞いてみた。

するとSは、
「最近、熱心だね。よい傾向だよ。」

 しまった、あまり前向きな姿勢を見せると、バラエティ番組への移動が遠のいてしまう。

「この関係、実は説明するのは難しいんだ。もしかすると、Mもちゃんと分かっていないかもしれない。『国債金利上昇=価格下落』と丸暗記している人が、経済記者の中でも多いからね。」

『なら、結構です・・・』と言おうと思ったけど、Sは
「じゃ、ランチしながら説明してあげよう。」。

ランチの間の「講義」、気が重いけど仕方ない。





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