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「モテるでしょ?」

「モテるでしょ?」
とまれに聞かれることがある。

この質問をされた時、いつも悩む。

果たして自分はモテるのか?と。

仮に自分がイケメンであったり、彼女を切らしたことがなかったりすれば、自慢げにモテますと言えば良い。

あるいは彼女がいたことがなかったり、顔に自信がなかったりすれば、モテませんと言えば良い。

しかし、いつも迷う。
果たして自分はモテるのか?と。

正直、モテるモテないを分かつ線があるとすれば、僕は当落線上の人間だと思う。

まず僕は、顔は普通である。
しかし、女の子にはやさしくするよう努めている。

あと、非常に恥ずかしい話だが、恋愛について語る女性youtuberの動画が好きで、結構見ている。だから多少は恋への知識がある(キモい)。

あと、大学で経営学部に所属しているのにも関わらず、自分の性に対する倫理観が不安で、女性問題の授業を計8単位も取った。

そして、妹がいる。
仲の良い女友達もいる。




以上のことから考えるにきっと僕は、モテるっちゃあ、モテる人間なのだ。




しかしここで、過去を思い出して疑心暗鬼になる。
やっぱり僕はモテないのではないか?と。





中学時代。
僕は野球部に所属していた。

その頃一時期ハマっていたのが、ピッチャーマウンドから振りかぶってボールを投げながら、
「〇〇〇(男性器の名称)!」
と叫ぶ遊びである。

西陽がグラウンドに燦々と差し込む。

あの頃は、こういうのがいちばん面白かった。
仲間と腹を抱えて笑っていた。

というか、こういうのが面白いと思う感覚は今の今まで残っている。

結局、暴力的なことや下ネタやタブー、つまり刺激的なことが面白いという感覚が色濃く残っている。

もちろん、それによって誰かが嫌な思いをするのは見たくないし、傷つく人を出してまで過激なことがやりたいかと聞かれればそれはノーだ。

しかし結局、腹の底から笑えるのは仲間内の悪ノリや男ノリだったりする。

もちろん個人的な意見。





僕は中学卒業まで、基本的に男社会にいた。

小学生の頃は、
「女は全員クソだ!」
と教室で高らかに言い放つタイプのガキだった(最悪すぎる)。

小学校の友達に、
「お前、男には人気あったもんな」
とよく言われる。

そこから中学に進んでも、野球部と遊ぶだけでなく、下校時は野球部以外の男友達何人かとハシャいで帰ったり、塾に行くと仲の良かった奴らと勉強そっちのけで騒いだりした。

下校中は、友達のチャリンコがパンクしたり、友達が用水路に落ちたりするのが面白かった。

塾では、来客用のインターホンを勝手に押すというイタズラを仕掛けた友達が面白かった。

一方で女子と少し関わったりもしたが、基本的にシャイであまり上手く喋れた記憶が無い。

初めて彼女が出来たのは中1だった。
しかし手も繋げず、1ヶ月弱で別れた。
ままごとみたいな恋愛だった。

そういえば、中学の塾の先生に、
「お前は女子と楽しく喋れないのが課題だな」
と言われたこともあった。
いや、勉強の指導しろよと思った。

つまり、僕は15歳まで、マッチョイズム文化の根付く場所で生活してしまったものだから、今でもそういう、男性ホルモンが弾けるようなことに心が踊ってしまうのだ。

そして考える。
そういうマッチョイズムがルーツの奴は、モテないんじゃないか?






それから月日は流れ。

すっかり女性への苦手意識はなくなり、僕はそれなりに楽しく女性と会話できるようになった。

でも最近、ふと悩む。

結局、「こういう風に女性と喋れば喜んでもらえるんだよね?」を自分にうまくトレースして話しているだけで、素の自分で話せている訳ではないのでは?と。

アドバイスをせずにただ話を聞くとか。
髪型とかちょっとした変化に気づくとか。

あるいは、そういった恋愛の安いテクニック論に終始せず、

女性を全力で慈しむとか。
女性には礼節を持って接するとか。

女性蔑視やセクハラにあたることは言わないようにするとか。

そういったことを意識した結果、女性ウケする人間への擬態が上手くなっただけで、本来の自分は、女性から非難されてもおかしくない人間なのではないか?と。





僕は、昔から周りの顔色が気になる人間だった。

だから、「周りの人が求める自分」を振る舞うのが比較的上手かった。

持論だが人間のコミュニケーションの型は2つあると思う。

ひとつがボクサー型。
もうひとつがプロレスラー型。

ボクサー型の人は、相手に合わせて自分を変えない。ボクサーはファイトスタイルを守ったまま、相手をKOすることを目指す。そんなボクサーと同じように、親にも友達にも異性にも、ありのままの自分を見せる。相手の求めるところに自分を寄せたりしない。コミュニケーションにおけるファイトスタイルを守り抜く人だ。

一方でプロレスラー型の人は、相手に合わせて自分のスタンスを変形させる。相手の攻撃を受けきる姿が格好いいプロレスラー同様、相手の求めるものに付き合う。相手に合わせて寄り添える、自分の形を最適化していくような人だ。

どちらが良くてどちらが悪いとかではない。
タイプの問題だ。

でも、自分はおそらくプロレスラー型の人間だ。

そしてその振る舞いが、異性に対してだとより顕著になる。

思えば自分は、高校時代に女子の多い演劇部に属していたが、そのコミュニティ内では勝手に下ネタを封印していた。

また、なるべく乱暴な一面を見せないようにしていた。

ドン引きされるのを恐れたからだ。

でもそう考える一方で、演劇部の練習場所から、男子ハンドボール部の奴らがボールをぶつけあって遊んでいるのが見えた時、混ざりたくてたまらなくなったことも覚えている。

誰かにボールをぶつけたくて疼いていた。
誰かにボールをぶつけられたくて疼いていた。

でも、欲を必死に押さえて何食わぬ顔をした。

あの頃の自分を我慢させたのは一体何だったのだろう?






おそらく今の僕は、モテなくはない。
恋愛偏差値でいうと53くらいはある。

でもそれは、異性ウケする自分になりすました結果であり、重加工した結果であり、もし素の自分が恋愛偏差値を測られたら、きっと37くらいに違いない。

だから、
「モテるでしょ?」
への問いに対するアンサーは、
「いや、すっぴんの自分はモテないんです。だって僕、極端な話、デート先は毎回チェーンの飲食店かラブホテルで良いと思ってしまう人間なんですよ。でもまあ、それだと女性から総スカン食らうんで、適当に水族館でも行きますか?」
になる。




この記事で不愉快な気持ちになった方がいたら、申し訳無いです。

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