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今住んでいるアパートを3月末に退去するので新しい物件を探している。

住みたい地域を決めて、SUUMOで希望条件をもとに物件を検索した。

すると、特にここに住みたいという物件がひとつ見つかった。

家賃。最寄り駅からの距離。間取り。
どれをとっても好条件。

だから僕はSUUMOから不動産会社に連絡した。
「〇〇という物件を紹介してもらいたいんですけど・・」

快く了承を受けた。
後日、不動産会社に行き話を聞くことになった。




不動産会社に入店。
白一面の壁に煌々とした蛍光灯の光。

まるで予備校の教室のような部屋に通された。

そこではまず、自分の希望物件の間取り図が描かれた紙を担当の方に出して頂いた。

そしてその間取り図をもとに、
「何か物件を探す上で条件などありますか?」
と聞かれた。

僕は、
「家賃はこれくらいが良くて、駅からの距離はこれくらいが良くて、あと芸人をやっているので・・・」
などと理想を述べた。

しかし僕からすれば、理想もなにも、
「SUUMOで紹介して欲しいと頼んだ物件が理想の物件だから、とりあえずそこを紹介して!」
と内心で思った。

だから僕は理想の物件について述べた後、
「まあ〇〇に住めたら良いんですけどね」
と一言付け加えた。

しかしその後、担当の方に、一撃では意味の分からない不穏なことを言われた。

「あー、ここの大家さんね、変なんですよ」

え?
変?
『変な家』という作品は聞いたことあるけど『変な大家』は聞いたことないぞ。

どういうことか確認すべく、
「何が変なんですか?」
と聞いた。

すると担当の人は、その家の大家さんが、
30代までしか入居させたくないこと、
入居させるのは1人暮らしの人限定であること、
など条件を細かく設定していることを教えてくれた。

また具体的には聞けなかったがその大家さんは、かなりこだわりが強くて風変わりな人物であることも教えてくれた。

まぁ推測するに、ちょっとヤバい奴なのだろう。
そういう意味で「変」だという。

そのため僕が入居しようとしても、審査で落とされる可能性がかなり高いらしかった。

だが僕には、ひとつ疑問があった。

それは、
「30代までしか入居させたくないこと」
「入居させるのは1人暮らしの人限定であること」
という条件をクリアしているのに、なぜ自分も入居審査で落とされる可能性が高いのか?ということだった。

条件的にセーフなら、変な大家だとしても快く住ませてくれるんじゃないの?ということだった。

大家さんが「変」ならば、その物件にはあまり住みたくないなとも考えたが、一応担当の方に聞いてみた。

「すいません。条件的には入居出来そうな気がするんですが、なんで僕は審査落とされそうなんですかね?」

大家さんは言いにくそうに答えた。
「芸人さんはね・・・」

全てを察した。
僕は「変な職業」に就いているのだった。





その後、他にも色々と物件を紹介してもらった。

しかし、担当の方が電話越しで大家さんに、
「あの、お笑い芸人をやっている方なんですけど入居ってどうですかね・・」
と言った途端に難色を示されているのを何度か見て、辛くなった。

担当の方は、別の物件をなんと15件ほど紹介してくれようと、15人ほどの大家さんに電話をかけたが、4人の大家さんに、
「定職に就いていない方はちょっと・・・」
的な対応をされていた。

社会から受け入れられてない自分に直面した。

社会と繋がるって、自己肯定に必要だなと改めて感じた。

「変な職業」に就いてても、金持ってて認められてりゃ惨めな思いしなくて済んだのか?

疑問を脇に抱えて不動産会社を後にする。

結局そこでは新しく住む物件が決まらなかった。

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