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初めてルパン三世を観た感想
映画『ルパン三世 カリオストロの城』を初めて観た。
現在リバイバル上映されており、それを知った際、
「あ、そういえばルパンって1度も観たことないな~」
と思い、映画館に行った次第である。
ルパン三世シリーズは、漫画もアニメも映画もまったく通ってこなかったので完全な初見。
観る前の僕が知っていたことと言えば、
ルパン三世が泥棒であること、
次元というブラックスーツの男がいること、
峰不二子というセクシーガールがいること、
名前は分かっていなかったが『名探偵コナン』でいうところの目暮警部みたいな男がいること(観てから銭形警部だと知った)、
ぐらいであった。
完全に知識不足ではあるのだが、とはいえ、ルパンに関しての思い出ならひとつある。
それは中学時代に野球部に属していた時、僕の応援歌が『ルパン三世のテーマ』だったことだ。
『ルパン』は観たことなかったが、曲からにじみ出るトリックスター的ニュアンスが格好いいと感じて、自分の応援歌にしてもらった。
僕がバッターボックスに入る時は後輩がいつも、
「ぱっぱらぱー。ぱーぱぱー。ぱっぱらぱー。ぱーぱぱー。ぱぱぱぱー。ぱぱぱぱぱー。ぱぱぱー。ぱーぱぱー。男にはー。自分の世界がある。例えるなら。空を駆ける。ひと筋の流れ星ー。」
と歌っていた。
だが、曲の格好良さにつり合わぬ己の打撃力。
つまり三振しまくっていた。
そんな姿を見て、友達は僕のことを「安打製造機」ならぬ「凡打製造機」と呼んできた。
失礼な友達である。
まあそれはどうでもいいのだが、とにかく僕は、『ルパン三世のテーマ』に対する思い入れと、主要キャラへの知識がぼんやりある程度の状態で映画を観た。
結論、面白かった。
テンポの良いストーリー展開。
古き良き作画の好ましさ。
アクションの惚れ惚れする感じ。
シーンを盛り立てる音楽。
さすが宮崎駿。やってくれるぜべいべー。
だが1点だけ、映画を鑑賞して引っかかった部分がある。
それは、
「次元大介が帽子を深く被りすぎていること」
だ。
鑑賞後に調べて分かったのだが、次元は射撃の天才で、「早撃ち0.3秒の天才ガンマン」と呼ばれているらしい。
しかし僕は疑問に思った。
あんなに帽子を深く被らなければ、「早撃ち0.2秒の天才ガンマン」と呼ばれていたんじゃね?と。
野球をやっていた時の経験から分かるのだが、帽子を深く被ると、前のつばが視界の邪魔をしてプレーに支障をきたす。
いちいち視線の高さを調節したり、帽子を浅く被り直したりしないといけないので、プレーの質が悪くなる。
射撃だって同じで、
視界をクリアにすればもっと素早く動けるんじゃないか?
己の才能にハンデを背負わせていないか?
と感じた。
しかし私も馬鹿ではない。
すぐに気づいた。
次元が帽子を深く被る理由。
身バレ防止のためだろう。
次元という男は射撃の天才。ということはきっとこれまでに何十人も銃殺しており、ゆえに警察に追われている。指名手配だってされている。捕まったら即死刑。そのプレッシャーは大きい。逮捕から逃れるため、全力で顔を隠すんだと。
一方でルパンは、泥棒を繰り返し次元と同じように警察に追われているが、犯罪歴は窃盗がメイン。また人殺しの経験も少なそう(違ってたらすいません)。だから捕まっても刑期は無期懲役くらいだろうし、何より平気で脱獄しそう。ゆえに次元ほど逮捕にプレッシャーを感じておらず、顔出しが出来るのだ。
そう考えると全てに合点がいく。
そもそも上映中、ずっとおかしいと感じていた。
なぜルパンは、あんなに余裕そうなのか。
それは、捕まっても死刑にならないからだ。
そして自分の横に、捕まったら即死刑間違いなしの次元がいるからこそ、比較論で
「まあおそらく自分は大丈夫だろう」
と高を括れているのだ。
その高の括り方に、余裕が生まれる。
そしてその余裕が、モテに繋がる。
聞けばルパンは女たらしでモテるらしい。
女の心も盗むらしい。
その理由が理解出来た。
死刑にならないからだ。
死刑にならないから、ピンチな状況でも飄々としていられる。
その肝の据わった感じが、色気に繋がる。
だからあんなサル顔のルパンがモテるのだ。
一方で次元。
彼はどう考えても格好いい。
スタイル抜群で、おそらく顔も良い。
なんなら射撃以上に女性の扱いも上手いだろう。
しかし本人は、自分のことを「女嫌い」と自称している。
なぜか?
捕まったら死刑だからだ。
もし大切な女性が出来てしまったら、死刑がかかっている自分の運命を呪わざるを得ない。
なぜなら、死刑がかかっていると知ってなお、自分に恋してくれた女性に悲しい思いをかけてしまうから。
だから女性に興味が無い感じを出すのだ。
女性を傷つけないように。
つまりかっこいい顔を帽子で隠すことで、女性を寄せ付けず、かつ警察からも逃げおおせているのだ。
しかし、僕は気づいている。
次元、お前、ほんとは女の子好きだろ。
でなきゃあんな特徴的なオールバック長髪とロング顎髭にする訳ないもんな。
顔を隠すお前が、なぜわざわざあんなに目立つビジュアルにしているんだ?
ズバリ当てよう。
モテたいからだろ。
本当は女の子に愛されたいんだろ。
僕は気づいてるぞ。
なあ、そろそろ正直になれよ次元。
だって本当に顔を隠したくて、かつ射撃の技術も落としたくないのであれば、黒いハット被るより、目出し帽とか被った方が絶対に良いもんな?
視界もハッキリする。
顔も長髪も顎髭も全て隠せる。
絶対に目出し帽の方が良いよな?
でも次元。
君はわざわざハットを選んだ。なぜか?
深層心理ではモテたいからだ。
格好良くありたいからだ。
捕まったら死刑になるとしてもオシャレがしたいんだ。
だけど、もう無理しないでいいんじゃないか?
「女嫌い」なんてつっけんどんなこと言わなくていいんじゃないか?
そのままの君でいいんだよ次元。
きっと君の早撃ち能力があれば、警察からも逃げおおせる。
それは間違いない。
その証拠に、銭形警部は次元に対して物凄くビビっているよ。
だって銭形警部は、次元より明らかに罪の軽いルパンを捕まえることに執着しすぎているからね。
それはなぜか?
早撃ちのターゲットにされて、殉職することを恐れているからだ。
銭形は、ルパンを捕まえることを生き甲斐にしているのではなく、次元をまず優先的に捕まえないといけないという現実から逃避しているだけなんだ。
本当は次元を先に捕まえないといけないと銭形警部も分かっている。
だが銃殺されるのが怖い。
だからルパンに固執したフリをして、次元逮捕への取り組みから目を背けているんだ。
でも、そんな臆病者が仕切っている警察に君が捕まる訳がないんだよ。
だから次元。
とにかく僕の言いたいことは、
「黒いハットを被るのをやめて、素顔を全世界に公開してみたら?」
ということだ。
素顔で警察から逃れた上で、大切な女性を見つければいいさ。
なんなら峰不二子のこと、ルパンから奪っちゃえよ。
ルパンに泥棒される側の気持ち、味あわせてやりな!
まあでも、仲間を大切にする君が、ルパンの想い人を奪う訳がないか。
ははっ。そりゃそうだよな。
なぁ次元!
僕はカリオストロ城のてっぺんから、君の恋を見守っているよ。
凡打製造機より。