塞ぐ 5話
和:おはよう😪
○:おはよう
玄関で靴紐を結んでいると眠たそうな顔をした和が声をかけてきた
和:もうバイト行くの?
○:うん
和:新しい子入るから?
○:そっ。その人が来る前に準備しときたいから
和:なるほどね
○:行ってきます
和:行ってらっしゃい
今日は少し足が重い
新しいバイトの人が来るだけでこうなる自分のメンタルの弱さに絶望してしまいそうだ
正直雇って欲しくはなかったけど逆らえないから仕方がない
重い足を引きずるようにして公園をぬけ駅に向かった
…🚃🚃
🔔🔔🔔(チリーン)
○:おはようございます
橋:おはよう。今日早いじゃん。なんで?笑
理由がわかってるのにそうやってからかって聞いてくる
○:・・・
橋:まだ拗ねてるの?笑
○:拗ねてません
橋:拗ねてんじゃん笑笑
正直拗ねている
子供みたいだが何も言わずに雇うのは辞めて欲しかった
○:着替えてきます
店長を無視して更衣室に向かう
わざわざ前髪をあげるこの時間は意味があるのだろうか
前髪あげたらバレる可能性を少なくできるかもしれないのなら
バレない可能性が少しでも大きくなるならそれにかけるしかない
○:(いくか)
準備が終わって更衣室を出ると新しい子が奈々未さんと話していた
?:初じめまして今日からよろしくお願いします
そう言った彼女は深々と頭を下げてお辞儀をした
開いた口が塞がらないとはこういうことなのだろう
いや
鳩が豆鉄砲をくらったという表現が正しいか
橋:鳩が豆鉄砲をくらったような顔してるじゃん🤣
この状況を作り出した本人は心読むだけでは飽き足らず爆笑している
?:遠藤さくらです!よろしくお願いします!
そう
新しいバイトの子は隣の席の眠り姫だった
さ:私の顔になにかついてますか?
○:いえっ。よろしくお願いします
さ:はい!
なにか反応がおかしい
さ:井上さんって呼びます!
○:うん。よろしく遠藤さん
彼女は「はい」と返事をして更衣室に向かっていった
橋:気づいてないみたいだね笑
また笑ってるよ。この人
○:かもしれないです
橋:まぁ相当印象違うからね
○:そうですかね?
橋:これから気づかれるかもだけど隠しとく?
○:絶対隠し通します
橋:がんばれ〜
まるで他人事だ。まぁ他人事か
少しすると彼女が更衣室から出てくる
さ:準備出来ました
橋:じゃあさくちゃんこれからよろしく
さくちゃん?
さ:はい!
橋:○○から色々教えて貰ってね
なぜに?
さ:はい!
遠藤さんはやる気いっぱいみたいだ
橋:じゃあ○○あとはよろしく〜👋
奈々未さんはそう言って店の奥の方へ向かっていった
○:(まじで人使い荒いよこの人)
○:・・・
さ:😶
あまり見られると緊張してしまう
○:じゃあ最初は掃除から教えます
さ:はい!
、、、仕事教え中
○:こんな感じです
さ:ありがとうございます
教えてる最中もメモをとりながら聞いていて真面目な人なんだと感じた
○:なにか質問あったりしますか?
さ:う〜ん🤔🤔
なにか言いたそうな顔で迷っている
○:遠慮せずなんでも聞いていいですよ
さ:じゃあ、、
と言ってメモ帳を閉じて話し出す
さ:このお店って全然人来ないんですか?
めちゃくちゃ直球な質問だ
これは聞くかどうか迷うわな
○:そうですね、、あんまり来ないかもです
さ:そうなんですね
そう応えながら首を縦に振る遠藤さん
○:(悪気があったわけじゃなさそうだな)
この人は天然なのかもしれない
さ:あっ!
と思い出したように声をあげる彼女
さ:井上さんって何歳ですか?
頑張って絞り出したみたいな質問だった
○:今年で17になります
さ:一緒だったんですね?!
意外だったみたいな反応されると少し傷つく
○(老けて見えたのか?)
さ:なんか落ち着いてる感じだったので私よりも年上かと、、、
そう言って少し俯きがちに声がしぼんでいった
これも悪気があったわけじゃないらしい
○:褒め言葉だと思って受け取っておきます
さ:褒め言葉です!
○:∑(O_O;)ビクッ
食い気味に返事されたせいで驚いてしまった
さ:声大きかったですね。すみません、、
そんなふうな顔されると困ってしまう
橋:やっとるか〜い
最悪のタイミングだ
○:いやこれは、、
橋:○○とりあえず土下座してからバク宙して3回回って山手線全部言ってみ?
要求が鬼畜すぎて泣きそうだ
○:弁明の余地をください
橋:??
聞く耳を持っていないらしい
○:どうか弁明の機会を、、
橋:2文字以内ね
えっ?2文字で何をどうしろと?
○:えっ
つい思ったことが口から出てしまった
橋:はい終了
この世界は残酷みたいだ
さ:井上さんは悪くないんです
奈々未さんと無駄なやり取りをしていると遠藤さんが横から割って入ってくる
説明中...
橋:なるほどね
そう納得すると僕の正座を解除させた
○○↩︎説明中正座してた
橋:これ以上人雇う気はないから、2人とも仲良くやってってね
さ:はい!
さっきまでとはまるで別人の奈々未さんと
やる気満々の遠藤さんに挟まれてる僕ってなんなんだろ
○:(もう帰りたい)
、、、
ちょっとした一悶着はあったが無事に今日のバイトが終了した
橋:2人とも今日はお疲れ様。次もよろしくね👋
さ:はい!よろしくお願いします
そう言って深々と頭を下げる遠藤さんの横で軽く頭を下げた
、、、帰り道
さ:今日はありがとうございました
○:いえいえ
あがる時間が一緒のため2人で歩いて駅に向かう
もちろん僕自身コミュ障のため会話は続かない
さ:、、、
○:、、、
今日はイヤホンをしていないが、たまにはこういうのもいいかもしれないとそう思った
さ:井上さん!
そう言って遠藤さんが立ち止まる
急に立ち止まるものだから僕だけが進み
遠藤さんの2歩前で止まる
○:どうしました?
さ:あっあの、、、、
さっきよりも言いずらそうにしている
待っている時間も周りの音があるはずなのに
何故か何も聞こえて来ないような感覚におちた
さ:良かったら敬語やめたいです!
○:えっ?!
思ったことがそのまま口から出てしまっていた
さ:ダメですか?🥺
○:、、、、別にダメじゃないです!?
さ:良かった〜( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )ホッ
そう言って胸を撫で下ろす彼女
少し上がる口角
耐性のない僕には大ダメージだったみたいだ
さ:あっ下の名前で呼び合いましょう!
さ:あっ呼び合お、、
少し恥ずかしそうにタメ口に言い直す
やっぱりこの人は天然らしい
○:いっ、いいですよ
そんな彼女のせいで反射的にそう応えてしまった
さ:○○さん?くん?よろしく!
○:くんでいいよ。こちらこそよろしく。さくらさん
さ:はい!
○:敬語抜けてない
さ:やっちゃった
これが演技なら主演女優賞だな
さ:関係ないかもだけど隣の子と同姓同名です笑
○:、、、はは、、そうなんだ、、、
上手く誤魔化せてるだろうか
というかまだ気づいていないみたいだ
そこからの帰り道は少しだけ会話が弾みすぐに駅に着いた
逆方向だからここでお別れだ
さ:じゃあまた今度👋
○:うん。またね✋
そう言って階段を登ろうとする彼女の髪を春風が攫っていく
彼女の名前の花が散っていくように
儚く、とても綺麗だと心から感じた
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(さくら)
今日から初めてのバイトに行く
バイト先は何度か訪れたことがある喫茶店
雰囲気がとても良く、マスターも優しい人で最高のお店だ
そして何より
接客してくれた人がとてもかっこよかったんです!!
正直一目惚れでした
...過去
さ:(どれにしようかな)
○:お決まりですか?
さ:あっ、、えっと、、、、
○:この時期ですとこれがおすすめです
さ:あっ。じゃあそれでお願いします
○:かしこまりました。このケーキですとこの飲み物がとても合うと思いますよ☺️
さ:じゃあ、、それもお願いします
○:かしこまりました。少々お待ちください
...
あの後以来その人には会えなかったけど
店長とは仲良くなり、働いてみないかと提案され、二つ返事で承諾した
さ:はじめまして。遠藤さくらです!
○:、、、
彼はキョトンとしていた
やっぱり忘れられていたみたいだった
ちょっと悲しかったがその顔を見られたくなくてすぐに更衣室に向かった
アルバイト中もとても親切でもっと仲良くなりたいと思った
帰りもたまたま一緒になった
さ:(ここで勇気出さないとちょっとも進展しないよね)
頑張れと自分に言い聞かせて言葉を放つ
さ:良かったら敬語やめたいです!
彼も承諾してくれた
それからの帰り道はドキドキしっぱなし、その前もそうだったけど尚更だった
駅の方向が違うからここでお別れ
さ:じゃあまた今度👋
○:うん。またね✋
そうやって手をあげる彼
どうしても弾んでしまう心臓
それに合わせて階段を駆け上がる
さ:あぁ早く会いたい
そう小さくつぶやき次話す内容を考えながら帰路に着いた
…to be continued
あとがき
塞ぐ5話いかがでしたでしょうか。
○○のバイト仲間は遠藤さくらさんでしたね。
全く羨ましい環境です。
○○はそれなりにイケメンっぽいですね
てか妹が和さんなんでイケメンじゃない方がおかしいかもですからね。
井上○○の正体がバレないか心配ですね。
これはラブコメなのでね見ててドキッとさせることを目標にしてこれからも更新していきます。
ではまた次の話で
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