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オールドトワレ

?:早く出発してよ〜

そう言って助手席で足をばたつかせている彼女の名前は齋藤飛鳥。僕の彼女?もちろん違う。ただの腐れ縁だ。


高校生になり隣の席になったのが飛鳥だった
最初は無愛想で仲良くなれるわけがないと思っていたのだが、次第にその態度に慣れていき、気づいたら卒業してからも会うくらいには仲良くなった

飛:何ボーッとしてるの?

○:ソフトクリーム美味しい?

飛:もち!食べたい?😏😏

ニヤつきながら聞いてくる彼女

飛:あげなーーい笑

○:そう言うと思った

飛:はよ出発。出発

○:りょーかい

こういうやり取りだけでドキドキしてしまう
僕は彼女のことが好きだ
もちろん高校生の時から
きっと彼女は僕の気持ちに気づいていない
もし気づいているなら何か言って欲しい
そう願ってしまうのは良くないのだろう

○:今日はどこ行くの?

飛:○○に任せる

○:何か食べたい?

飛:う〜ん、、あったかいの

○:大まかすぎる

飛:あとは任せた

そう言って鼻歌を歌い始めてしまった
こういう自己中心的な所も高校の頃から変わっていない

○:相変わらずだね

飛:?なにが?

○:、、なんでも

飛:変なの〜笑

駆け引きできるほど冷静でもなければ運転してることも相まって余裕もない
君射止めるための方程式も未だに解けずにいる僕にそう言って笑う彼女にまたときめいてしまう

○:どう?

飛:めっちゃ美味い!


そう言いながら小さい口で一生懸命食べている
「かわいい」と素直に言葉に出来たらいいのに
そんなことを考えながらまた車を走らせる

飛:、、、あのさ

○:、、なに?、

飛:今度同棲するんだ

そう彼女には彼氏がいる

○:、、そっか、、

飛:、、うん、、、、

○:いつから?

飛:来月から

○:、、そう


これは来月から会えなくなることを意味しているのだと思った

飛鳥は羽ばたいてきっと誰かのものになるのだろう
誰よりも思い焦がれてる僕を置いていく
それでも
叶わないことはわかっているけど諦めきれずにいる

弱い人を守るような
そんな人が君の好みで
助けられてばかりで情けない僕はないよね

○:、、、僕じゃだめだよね((ボソッ…

飛:何か言った?

○:、何も言ってないよ、、、

飛:そっか

口から漏れ出てしまった本当の思いを君には内緒にする
きっと言っても君を困らせるだけだから

○:着いたよ

飛:、うん、、今日もありがとう

○:、、、うん

飛:じゃあまた今度ね

そう言って駅に向かう彼女

○:、ぼくのもとにおいでよ((ボソッ…

その言葉が届くはずもなく彼女の背中はどんどん離れていく
後悔することを知りながらも君に恋をしている
巡り巡って僕のもとへ来るはずないのにいつまでも
最後でいいからと願って待っていようと思う

彼女の背中が完全に見えなくなる前に車に乗り込んだ


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(齋藤飛鳥)


私には高校の時から好きな人がいる

彼は特にこれといった長所はないし私が助ける立場のことの方が多かった

それでも彼といるのがとても心地よくて好きだった

きっと彼は私のことをただの腐れ縁だと思っているだろう

それでも諦めきれないから何度もお出かけに誘う

彼に彼氏がいるか聞かれた時咄嗟に嘘をついてしまった

彼氏なんてできたことも作ろうと思ったこともないのに

飛:今度同棲するんだ

そう嘘をついて彼を振り向かせようとしてみた

○:、、、そっか

興味無さそうだ

もう諦めてしまった方が楽なのかもと思ってしまう

○:着いたよ

飛:今日もありがとう

なかなか振り向いてくれない彼に少し嫌気がさし、上手く話すことが出来なくても彼はいつも私が居なくなるまで手を振り続けてくれる
そういう行動も愛おしく思う

なので今日は振り向いて彼に笑顔を向けてみようと思う

飛:(よし)

勇気を振り絞って振り向いた私の目に
彼の姿が映ることはなかった


…end


<あとがき>
初めての中編作品いかがでしたでしょうか
お互い素直になれずにいる2人って見てるとほんとに切なくなってしまいますよね
これは「マルシィ」というバンドの曲をモチーフにして書いた作品になりますので、良かったら「オールドトワレ」聴いて見てください!
これからも曲をモチーフにして中編書いていこうと思いますので、リクエストあればコメントお願いします

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