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今回のフォーカスは「今こそACPを推進していくべし」


診療所・急性期病院を中心に多忙を極める現場

診療所などは、医師・看護師などと関わる時間といえば、10分くらいではないでしょうか?
そして、病院では日々の検査や処置・日常生活ケア、各種手続きのフォローや記録業務でなかなかじっくり患者と話す時間が取りにくい状況です。
入院中でも急性期では、より検査や治療が中心で医療者側からすると時間的余裕がないのは、かつて勤務していた経験から痛感している。また、退院が間近だったり、今後の生活や方向性を決める際にも、カンファレンスしてから実際に患者や家族に細かい話をお聞きして動くのは、看護師またはソーシャルワーカー(地域連携室職員)というのが現状だと思う。もちろん、在宅医療を利用する患者は退院前カンファレンスがあるけど、じっくり時間を取れていたか?と自問自答しても自信を持って「はい」とは言いきれません。
時間的余裕がない原因として、やはり人手不足が挙げられます。医師も看護師も慢性的な人手不足で日々の業務にも影響が出ています。様々な方法や手を借りて、日々の業務をしていますから「じっくり患者と向き合う時間」はなかなか取れないのでは?と思います。昨年、私自身も入院していた時に医師も看護師も業務終了後(終業時間後)に記録や書類作成、他の業務などをされており、心配になったことを思い出しました。
加えて、ACP実践するための教育をされている医療機関は少ないのでは?と思います。最近では、ACPも取り上げられていますから市民公開講座や有志での講習会などもあります。しかしながら、所属している医療機関で「ACPを教育するプログラム」が整備されている場所はあまり聞いていません。今後の関わりにも影響しますから、現在、自然と実践していても基本的な考えやコミュニケーションする方法なども学んでおいたほうがいいと考えます。ACPについて熱心に取り組まれている医師や看護師が中心となり教育している場所もあるかもしれませんが、継続するにも広がりを持つにも継続性・持続性がないのでは?と思いますので、学会などの研究機関で早期に確立していくことが望まれます。

診療報酬としての評価

今までの中では、患者さんの治癒過程と社会生活についてケアする医療者等が説明を行い同意を得て今後の方向性を決めていました。医師によるIC(インフォームドコンセント)などが主でした。また、現状としてICについては診療報酬として加算がされておらず、医学管理料等に包括されてしまっています。
今あるそれっぽい加算としては、在宅ターミナル期における「ターミナルケア加算」や「地域包括ケア病棟入院料」にあたります。介護では「看取り介護加算」です。
ターミナルケア加算と看取り介護加算は、ターミナル期になり『より頻回に患者(利用者)の実質ケアをするため』にあるもので、ACPプロセスのために時間をとるというものではなく(中には方向性を決めることもあるが)意味合いが違います。
地域包括ケア病棟入院料については、今後の方向性を決めるため「その病院・病院に入院している」ための加算であり、意味合いが違う。『施設か在宅かを決めて準備をするという意味』では関わるかもしれませんが、包括しているためあらかじめ決まっている場合は、あまりACPとして活用しているとは思えません。
容体が悪くなって、予後1~2ヶ月くらいの時ではなく、医療を継続的に必要な方については、定期的な診察・受診(または、介護保険を利用しサービスを受け始めたとき)にはじめて欲しいなと思います。
私が在宅医療で「退院前カンファレンス」の際に
『退院してすぐ(直後)に何したい』『次の診察までに何したい』『3ヶ月後には何したい』と時間軸を含めて確認していました。その方の希望を伺った上で、その生活を叶えるために必要な情報収集としていました。もちろん、退院カンファレンスの加算内ですから、ACPとしての加算ではないです。
私たち医療従事者は、診療報酬で医療機関の運営と給与として生活させていただいております。それを踏まえてあえて言いますが、患者さんに対してケアなど行った際にコストとして加算を取るのであれば、今後の希望(生活する場所等)やACPを行った際に時間をコストとして使用したのであれば、きちんと記録を残して評価し報酬としてあるべきだと思います。
そのためには、きちんとしたACPを学びプロセスを認識できるように教育(研修)をして状況を判断し介入できるよう身につけることが大切であると思います。
また、ある時期(病期)になった際に必ずACPを実践していくよう加算基準として設けていくと『医療者としてやらざるを得ない状況を作る』のが、多忙を極める現場には必要ではないか?と思います。(その前に、業務改善や状況に合わせてタスクシェアは必要ですが…)

ACPとDNARの違い

SNSのXで再び「ACPとDNARの違い」論争がありました。これは、年末年始のインフルエンザ流行と救急外来受診、医療費削減問題の矛先である高齢者医療の問題から高齢者救急の話題にというのが流れとしてありました。
やはり、医療従事者でもACPとDNARの違い・区別ができていないこともあります。入院や施設入居した際に、『心臓マッサージなど蘇生を希望しますか』『急変した際に救急搬送を希望しますか?』など聞かれることがあるでしょう。心臓マッサージを希望しない・救急搬送を希望しないとした際に「DNARだから胃ろうは希望しないと思うよ」とか(少しの体調不良で)「救急搬送希望だから、すぐに受診」とか、その時の意向を確認しないで判断してしまうことがしばしばあります。医療従事者もこのような理解ですから、きちんと用語と内容を理解して対応していかなければならないと思います。ACPを推進していく以前の課題ですね。

日本救急医学会より下記のようなコメントが発表されました。在宅医療だけでなく、全ての医療従事者はご一読ください。

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jja2.12977?fbclid=IwY2xjawIehRRleHRuA2FlbQIxMQABHVr8rGaK-Ue5bcOreakFXMO_IhIS0acFlrq2gveIzBFoNgVlimc_ZNkqxQ_aem_H9YdqiAkvjy9Itf5VNCKyA

在宅医療を受ける患者・入院患者や施設入居の利用者であれば、ある程度、上記のような確認を事前にとったり、その時の確認をすべき方(代理決定者)の連絡先はわかっています。しかし、街中で急変したり、比較的若い方の場合はACP、リビングウィルはだけでなくDNARも確認が取れないこともあります。自分自身は「こうして欲しい」「こういうケアを希望したい」と思いはあっても『意思表示』が確認できなければどうすることもできません。心配蘇生を希望する場合、決断し蘇生に取り掛かる時間がキーポイントになります。こういったことを、マイナンバーカード(マイナポータルアプリ内)に記載し確認が取れるようにしていったら、その人の望む医療ケアができるのでは?と思います。定期的にアラームがあり、気持ちに変化はないか?などお知らせ機能にて最新の意向が確認できれば、とても有益に思います。そのためには、ACPを本気で推進し国民も理解していかなければなりませんが、必要なことだと思います。
あと、残念なことに「医療費削減のためにACPが・・・。」と言っておられる方がいます。ACPは全世代に「どんなケア・医療を受けたいか」を問うものであり、事前に「なるべく侵襲のないように」という心身を労るような誘導をし、医療費を削減していく案にしている。
そうではなく、その人がどのようなケアを望むか?を情報提供し共に考えていく。その結果、医療を希望すれば、その思いにそって実行していく。
ACPを見込んで、心身を労るようにし侵襲的な医療を遠ざけるような誘導は、ACPではありません。
高齢者医療も含め、終末期医療の課題と40兆円を超える医療費の削減があります。削減していかなければならないというのは事実ですが、ますは「今ある無駄を削減」することが大事だと思います。
「医療費を削減したいがために、ACP/リビングウィルがあるのではない」
正しいACPの推進のために、永遠に言い続けようと思います。

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