音楽における"滑走路"とその長さ
私達がポップスを聴いたとき、最も目(耳)立つ部分はやはりサビだろう。楽曲の中で一番盛り上がる部分の出来が良いと、曲としての魅力も大きくなる。サビを魅力的にするにはどんなことをすれば良いのだろうか。
サビを盛り上げるために、アーティストはしばしば"滑走路"、音楽用語的にはアウフタクト(弱起)という技法を使う。なにやら難しい言葉が出てきたが、誤解を恐れず簡単に言うなら、サビを頭拍から始めずちょっとフライングする技法である(厳密には少し違う気もするが本記事では、アウフタクトをこの意味で使用する)。もっと分かりづらいって?実例を挙げよう。
明日へ (Galileo Galilei)
https://youtu.be/Kmcc8WQvlJg?list=RDKmcc8WQvlJg&t=77
例えばこの曲は1:18からサビに入るが、
♪しん[かするゆめ ( [が1拍目 )
しんか の "か" が1拍目であることが分かり "しん" は手前の小節にありフライング気味に歌っていることが分かる。
命に嫌われている。 (25時、ナイトコードで。 × 初音ミク) https://youtu.be/F7iqxHOth58?t=57
この曲の58秒も同様で
♪ぼくらは[いのちに
"ぼくらは" がフライング気味に歌われて "い" で伴奏が入るのが分かる。
このように、頭拍に対してフライング気味にサビを歌い始めることで、1拍目に向けた"滑走路"を作ることができ、よりサビを盛り上げたり、メロディをキャッチーに聴かせることが可能となる。
逆にこの技法を使わない曲も多く存在する。
Die tomorrow (coldrain)
https://youtu.be/syWstiIGiPo?t=80
完全感覚Dreamer (ONE OK ROCK)
https://youtu.be/xGbxsiBZGPI?t=72
新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)
https://youtu.be/1FliVTcX8bQ?t=88
メロディの流れや歌詞の文字数との兼ね合い等、何が何でもアウフタクトを使えばいいわけでもないということだ。
さてここまでアウフタクトの概念を説明してきたが、今回私が本当に紹介したい事。 それはアウフタクトが鬼のように長い良曲だ。
微笑み一つ咲かせましょう(ジャニーズWEST)
https://youtu.be/fmx9nuy00vA
♪ほほえみひとつ[さかせて
ジャ~ン!じゃないよ。後ろで異常な長さのアウフタクトが完成していることに驚きなさいよ。この長さのアウフタクトは中々無いのではなかろうか。音符の長さ自体はそこまででもないが、文字数が多い。非常にいいメロディで、且つ老若男女誰でも歌いやすい内容の歌だ。もっとプッシュしてもいい気がする。最近のジャニーズで一番好きな曲である。
the beginning (ONE OK ROCK)
https://youtu.be/Hh9yZWeTmVM
♪Just give me a rea-[son
アウフタクトに美味しい部分を持ってきてしまう曲。長いと同時に密度も濃い。開始1秒でライブキッズの心をガッチリと掴んだのはノりにノってるバンドの強さを感じさせた。
色々紹介したが、アウフタクトの長さにおいて他の追随を許さないバンドが居る。アウフタクトの長さで上り詰めたあのバンド(アウフタクトが長いから人気なワケではない)。そうUVERworldである。
THE OVER
https://youtu.be/ukyRC_fNEP0?t=77
♪てれびのな[かのはいゆうや
Fight For Liberty
https://youtu.be/uap5DiPM0vY?t=47
♪ながいあいだあ[めに
儚くも永久のカナシ
♪なにもかも[そうだろ
一貫して長い。ここまで来ると一種のこだわりさえ持っていそうである。
今まで人生で聴いてきた曲の中でアウフタクトが最長の曲(且つ自分が一番好きなUVERworldの曲)が次の曲。
7th Trigger
https://youtu.be/FAU7NyiqwQY?t=77
♪But たったいっしゅんだったとして[も
驚愕の2小節である。このレベルになってくるといつまで経ってもサビが来ねぇ。
いかがだっただろうか。最後の例は極端ではあるものの、アウフタクトの魅力が伝われば幸いだ。 (編集済)
2022年10月28日
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