炭酸刺繡【クリームソーダの泡の味】
父は笑いを堪えて私に問う
「本当に其れで良いの?
私「うん、良いの」
凮月堂の和風喫茶
並んで座る父と幼い私
父は和菓子に冷茶を所望
私は和菓子とソーダ水
優しい父の目が笑う
二十歳になりたてホヤホヤで
初めて入った喫茶店
メニューから選んだ其れは
クリームソーダ
クリームに向って
プクプク上がる気泡
初デート
二人で入った喫茶店
彼は、アイスコーヒーで
私はクリームソーダ水
静かに上がる緑の気泡
呆れた顔で見詰める彼
デートは一度、其れっきり
未熟な恋はソーダの気泡
シュワシュワシュワと消え去った
幾年か過ぎ行く日々の移ろいは
キャリアを重ねて
好みもかわり
夏はアイスでブラックコーヒー
朱夏も早々通り過ぎ
白秋の道歩むとき
和風喫茶で見掛けた人は
初デートの彼の人だった
よみがえる失恋のあの日
クリームソーダと彼の顔
思い出に笑いを堪える私だった
✒【泡沫の思い出散らした夏空に積乱雲のクリームソーダ】
📝[炭酸]から思い浮かぶのは綺麗な緑色したソーダ水なのです。
お目通し頂き、有り難う御座いました。