
春嵐:はじめて切なさを覚えた日
表紙画像はMicrosoft Designer Image Creator にて生成。
プロンプト「はじめて切なさを覚えた日、彼は桜舞う春の強風に打たれる 水彩画」
Geminiの創作SSです。
創作SS 春嵐:はじめて切なさを覚えた日
桜並木道。
あの日、木々には桜の花が満開に咲いていた。
彼は、あの日と同じように桜並木を歩いている。
足元には、昨日の雨で散り敷かれた桜の花びらが、まるで白い絨毯のようだった。
彼は、ポケットに手を突っ込みながら、何度も同じ場所を行ったり来たりする。
それは、彼女と最後の言葉を交わしたベンチの前だ。
春の嵐が吹き荒れた日、桜の花びらが舞い散る中、二人は言い争っていた。
些細なことで始まった口論は、
いつの間にか感情的なものになっていき、最後には、彼女が
「もう、二度と会わない!」
と言い放って、その場を去ってしまった。
ベンチに座り込み、彼は目を閉じ、過去の記憶を辿る。
彼女との約束の場所。
しかし、今は、その桜の下で、ただ一人、春の嵐に打たれている。
桜の花びらは、彼の頬を叩き、いつまでも心に残る湿り気を残す。
彼は、あの日の彼女の表情を思い出した。
怒りと悲しみに震える瞳、そして、一瞬見えた寂しそうな表情。
彼は、自分のせいで彼女を傷つけてしまったことを深く後悔した。
「ごめん」と、彼は呟く。
しかし、誰にも届かない言葉は、風に乗って消えていく。
桜の花びらのように、彼の心から消えていくように。
おしまい
山根あきらさんのお題でした。
記事を見ていただき、ありがとうございました。