あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法4

DATA
使用楽器は1720年製アレッサンドロ・ガリアーノ。使用弓はフランソワ・トルテ。
弦はA.D.G線:トマスティック社製ドミナント。E線はゴールドブロカット0.27mm。
録音機はZOOM社製H2nを使用し、レコーディングモードを96kHz / 24bitに設定。
マイクは90°XYステレオ方式 / 最大入力音圧レベル120dB SPL / 信号処理32bit
入力ゲイン +0~+39dB / 入力インピーダンス 2kΩ(入力レベル:0 ~-39dBm)
調弦はAを440Hzに設定し、なるべく開放弦による共鳴の影響を受けないように、次の各音を選んだ。
G弦はBナチュラル(独:h)
D弦はFシャープ(独:fis1)
A弦はCシャープ(独:cis1)
E弦はGシャープ(独:gis2)
 
以上の設定で、演奏は次の各号の区分に基づいて行った。
1.      指板に弦を押さえつけ、ヴィブラートをかけないで演奏。
2.      指板に弦を接触させず、ヴィブラートをかけないで演奏。
 
WaveSpectra Ver.1.50のソフトを使用し、リニアスイープに設定してスペクトル解析した。

この2つを比較してみると、DATA.G-1の場合、主成分は12kHzあたりから減衰し始め15kHzあたりでピークがほぼなくなります。DATA.G-2のデータを見ると、25kHzあたりにまで明らかに倍音成分のピークが確認できます。
 ちなみに人間の耳で認識できる限界は2万キロヘルツまでです。上記のスペクトル表の20が2万キロヘルツです。
2万キロヘルツを越えたら人間の耳には認識できませんが、それを越えて倍音のピークがあるということは、2万キロヘルツまでの領域の音に影響を与えることになり、それが、より複雑な音色として人間の耳に届きます。形容詞で表現すると、柔らかい、暖かい、心地よい、音色となります。
 逆に、スペクトラムがまっすぐな線というのは、機械音でしかつくれません。ピーという音で、味気のない単なる”音”です。

同様に他の弦の測定を示します。

10kHzのピークがDATA.D-1では-80dBまで減衰しているのに対して、DATA.D-2では-70dBまでの減衰である。
DATA.A-1もDATA.A-2も最初のピークが共に-20dBであるにもかかわらず、DATA.A-2では5kHzを超えても-40dBに達している。
DATA.E-2はどの周波数帯においてもDATA.E-1より高いピークを確認できる。

 実験の結果、弦を指板に接触させない方がどの周波数帯のピークも高いことがわかりました。すなわち、指板に弦が触れない方が音量を得られるということです。これらの測定の最中においても聴覚的に「弦を指板に接触させない」方が響いているように感じ取れました。
 この結果に鑑みると「弦を指板に接触させない奏法」を習得する方がより良い結果を得ることができるわけですが、そのためにはある程度の訓練と発音メカニズムの知識が必要です。
 次回は、その訓練法などの実践について書いてみます。


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