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あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法6

 もともとピアノとヴァイオリンは似ているようで全く違う方向からアプローチしているのです。起源は同じと考えられていて、棒で弦を叩いていたことも同じでした。しかし、その後、馬を家畜として飼っていたアラビア人によって馬のしっぽで弦をこすることで音を出す、ヴァイオリンの先祖が現れました。それはアラビアやトルコのリバーブやモンゴルの馬頭琴に代表されます。これらの楽器には指板がありません。ではどうやって音程を変えるのかというと、弦(これも馬毛を束ねたもの)を軽く指で押さえるか爪を横からあてることで音程を変えるのです。

この画像からわかるように、そもそも指板がありませんから、弦を指板に押しつけること自体無理なのです。そして、弦に指が触れるだけで音はつくれます。そのくらい弓の力は強いのです。これを強制振動と言います。逆にピアノやギターは自然振動です。自然振動で出来ることは、音が出始めたら、その音を止めるか、放っておくか、どちらかです。しかし、強制振動の場合は、音を出してから、その音程を変えたり、大きくしたり小さくしたり、自由自在です。
 これがピアノとヴァイオリンの大きな違いです。つまり、ピアノは音を出す前に細心の注意を払い、また、その瞬間のために毎日訓練をします。しかし、ヴァイオリンのような強制振動の楽器では、音を出してから考えるのです。音程が高かったら下げ、低かったら上げるのです。それをなるべく早くやります。
 つまりお客さんに音を伝える前にありとあらゆる修正を行うのです。ゆっくり弦を押さえてゆき、かすれた音が出始めたら、それが高いか低いかを判断して、音がしっかり出始めたころには修正を終らせておきます。
そうすれば、お客さんに音が届いたときには完璧な音程が構築されています。
 しかし、さっさと弦を指板に接触させたらどうなるでしょう?
自分で音程の確認をする間もなく、音はお客さんに届いてしまいます。
つまり、音程の確認を自分とお客さんで共有してしまうことになります。
音程が外れていたら、お客さんにも自分にもわかります。
 難しそうに聞こえますが、弦を指板に接触させないことを訓練すると、こんな簡単な作業をなぜもっと早くしなかったのだろうと後悔するほど、上手く出来るようになります。
 弦を指板に接触させないことの、一つ目のメリットです。



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