あがっても大丈夫なヴァイオリン奏法8
前回、弦を指板に接触させない奏法のメリットとして、シフティングについて書きました。次のメリット3は「ヴィブラート」です。
弦楽器は管楽器や歌のように音が通りません。これはただ単に音量がないということも事実ですが、ヴィブラートにもかなり起因しています。
管楽器も歌も、息を使ってヴィブラートを作ります。それは音程の上下だけでなく、音の強弱の要素の方が遥かに大きいのです。
しかし弦楽器は音程の上下運動に頼ってヴィブラートを作りますから、音量の変化は乏しいのです。
例えば、寝るときに耳元で音程の上下だけの音を聴いているとそのうち眠ってしまいますが、これが音量の変化となると、聴覚への刺激が音程の上下より強いので、眠りに入りにくいのです。
たとえば、寝るときにボサノバを聴くと寝やすいです。クラシックでしたら、シューベルトやモーツァルトを聴くと眠り易いですが、ベートーヴェンは睡眠状態に入りにくいです。音量の変化が激しいからです。
1960年以降、日本でもBGMの効果についての研究が始まりました。病院や施設でBGMを流すとき、一番良いのはボサノバである、と結論付けされました。ボサノバはん量の変化が少なく、調性も曖昧で、歌詞がないので言葉による印象が全くないためです。
ヴィブラートに話を戻しますが、弦楽器でもヴィブラートに音量の変化をつけることが出来たら、聴衆の聴覚を刺激するので、音量の変化のないヴィブラートより印象を強く与えることが出来ます。
指を指板に接触させない奏法のメリットはそこにあります。
ヴィブラートをかけるとき、前後運動に加えて、自然に上下運動が伴い、音量の変化が生まれます。
![](https://assets.st-note.com/img/1709009518202-wVXi8EwTCp.jpg)
以前、アデリーナ・オプリーン(カールフレッシュコンクール優勝歴を持つ)というイギリスで活躍されている女流ヴァイオリニストにヴィヴラートを教わったとき、このことを口をすっぱくして語られていました。