![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/140983525/rectangle_large_type_2_84f4c7badbb4583e9f98f5e355979909.jpeg?width=1200)
もう一つの世界、22 白うさぎ3/5
白うさぎ 3/5
次の日、きなこは、ちゃんと帰ってきた。
「どうする、ちいちゃんのおばさんにあいにいく?」
三咲は、まだまよっている。ケンはいく気満々、
「茶々がどうなったかしりたいやろ?
だって、白うさぎと一緒にあいにきたんやで。」
奈美と光司はおたがい顔をみあわせていた。
「いく?」
「いったほうがすっきりするよね。」
「じゃあ、おばさんにあって聞いてみる。」
三咲のひとことできまった。
放課後(ほうかご)、四人は家に帰ってランドセルを置(お)くと、三咲(みさき)の家の近くの旭(あさひ)公園にあつまった。
三咲(みさき)と奈美(なみ)は、合わせたように、ちょっとよそいきの清潔(せいけつ)な服装をしている。
健人(けんと)と光司(こうじ)は、あいかわらず、いつもの服だ。
「おまえら、服あわせたやろう。」
「あたりまえでしょ。
あんたたちが、こどもなんでしょ。」
「あたりまえや。
こどもやから、これでいいんや。」
ひらきなおっている。
あるいて5分、ちいちゃんの家の前に立つと、きんちょうしながら三咲(みさき)がインターホンをおした。
「はーい、どちらさまですか?」
「あっ、三咲(みさき)です。」
「三咲(みさき)ちゃん、ちょっとまってね。」
しばらくすると、扉(とびら)がゆっくりひらいて、おばさんが顔をのぞかせた。
「おばさん、こんにちは。」
おばさんは、ふしぎそうに子どもたちをみている。
「こんにちは、三咲(みさき)ちゃんどうしたの?」
三咲(みさき)は、一瞬(いっしゅん)なんて言っていいか、言葉につまった。
健人(けんと)は、たんじゅん。
「ちいちゃんにあいにきました。」
おばさんはびっくり。
「ちいにあいにきてくれたの。
そうなの…。さあ、はいって。」
四人は、畳(たたみ)の部屋にとおされた。
小さな仏壇(ぶつだん)に、ちいちゃんの写真がかざってあった。その横に、もう一枚、うさぎを抱(だ)っこしたちいちゃんの写真もかざってある。
「あっ『ちゃちゃ』が、写ってる。」
四人はびっくり。
うさぎ小屋でみたちゃちゃが、ちいちゃんに抱(だ)かれている。
おばさんが、ジュースとお菓子(かし)をはこんでくると、三咲(みさき)は、
「おばさん、ちゃちゃはまだ飼(か)ってる?」
「それが、ちいが亡くなった日に、いなくなったの。きっとちいが、寂(さみ)しがってつれていったんだろう、ってみんなで話してたの。」
三咲(みさき)も奈美(なみ)も、心がふるえた。
「やっぱりうさぎ小屋に会いにきたんだ。」
「白うさぎは、ちいちゃんなんだ。」
「ちいが白うさぎって?」
おばさんにはわからない。三咲にたずねた。
三咲(みさき)が、説明(せつめい)をはじめると、よこから健人(けんと)がわりこんで喋(しゃべ)ってくる。奈美(なみ)も喋(しゃべ)り始めた。
「ちょっとまって、順番(じゅんばん)に話して。
三咲(みさき)ちゃん、わるいけど、さいしょから話してくれる。」
おばさんは、おかしそうに笑った。
久しぶりの笑顔。
三咲(みさき)は、ちいちゃんと、うさぎ小屋の話からはじめた。
おばさんは、じっと三咲(みさき)の話をきいていた。
「そんな…。」
しかし、橋本(はしもと)先生が見たというなら…。
信じられず考えこんでいたが、おもいきって橋本先生に電話をいれた。
そして、長いあいだ話しこんでいた。
「おばさん、先生、なんていった?」
「白うさぎを見たのは、ほんとうだって。それで、こんど先生の当直(とうちょく)の時に、会いに行けるようにたのんだの。」
「夜にいくの?」
「うん、自分の目で確かめたいから。」
「僕たちもいっていい?」
健人(けんと)もいきたい。
おばさんは、どうしようか迷ってた。
「いっしょにいって、ちいにあいたい?」
「うん、あいたい。」
「じゃあ、いこうか。」
この子たちなら、ちいもよろこんでくれるとおもった。
次の日、四人が小学校に行くと、クラス会のあと、橋本(はしもと)先生によばれた。
「ちいちゃんのお母さんに、会ったんだって?」
「うん。先生、次の当直(とうちょく)のときに、おばさんに会うんでしょ。」
「今週の土曜日にした。
うそみたいな話だからなあ。ほかの先生に話しても信じてくれないし。
つぎも、白うさぎにあえるといいんだけどなあ。」
「先生、きっとあえるよ。」
「健人(けんと)にいわれてもなあ。」
先生は、苦笑(にがわら)いしていた。
土曜日の夜がやってきた。
四人はまちあわせて、やくそくどうりおばさんの家にいった。
びっくり。
眼鏡(めがね)をかけたやさしそうなおじさんが、扉(とびら)をあけてくれた。
「いらっしゃい。きみたちが、ちいの友だちだね。
まだ時間がはやいから。」
と、部屋にとおすと、お菓子(かし)をだしてくれた。
三咲(みさき)と奈美(なみ)はしずかにすわっている。健人(けんと)と光司(こうじ)は、さっそく手をのばして、おいしそうにたべていた。
おばさんは、気持ちが落ちつかず、なんども時計をみていた。
「なんどみても、時間ははやくならないよ。」
ほんとうは、おじさんも早くいきたいのをがまんしている。
おばさんは、「そうね、そうよね。」といいながらまた時計を見ていた。
「しかたないなあ。早めにいくか。」
おじさんは、決心すると、用意していたキャンプ用の寝袋(ねぶくろ)を、子どもたちにひとつづつ手渡した。
「先生に迷惑(めいわく)をかけられないからなあ。
もし、待ってる時間がながくて、ねむたくなったら、これをつかってねること、いいかな。」
「はーい。」
気分はキャンプ。
健人(けんと)と、光司(こうじ)が、げんきよく返事した。