もう一つの世界、25 なんか 妖怪1/4
なんか 妖怪 1/4
おくぶかい 山里の森に、妖怪(ようかい)たちがあつまっていました。
ざしきわらしは きいてきたことを、さっそくみんなに話します。
「おいらがすんでる源(げん)じいの家に、子どもがひとり やってくるらしいよ。」
みんなは、やっと おどろかすあいてが見つかって、よろこんでいます。
なにしろこんな山の中、めったに人はやってきません。
一つ目小僧(こぞう)が ききました。
「いつくるの?」
「明日から 一週間だって。」
「じゃあ、さっそくおどろかしてやろう。」
ざしきわらしが あわてていいました。
「とかいの子どもだから、あんまり早くおどろかすと、すぐに泣いて帰ってしまうよ。」
「そうか、それはこまったなあ。」
みんなは かんがえています。
「それならさいしょに ざしきわらしが なかよくなって、それから森につれてくるのは どうじゃろう。」
やまんばが ていあんしました。
「さすがに おばば、むだにとしは とっておらんなあ。」
三つ目入道(にゅうどう)が かんしんすると、
「むだにとしを とっておらん、だけは よけいじゃ。」
やまんばは 三つ目入道の頭を ピシャリと たたきました。
「そんなこと いったって、もう300歳だろうに。」
すると おばばは、
「ばかにするな、まだ 298歳じゃ。」
と、また 三つ目入道の頭を、ピシャリと たたいていました。
つぎの日の昼すぎ、源じいの家に 親子がやってきました。
「じっちゃん げんき!」
大阪から やってきたのは、源じいのまごの正斗(まさと)と、その子どもでひまごの健斗(けんと)です。 まごの正斗は しごとが あるので、一日だけとまって、つぎの日の朝に 帰りました。
ひまごの健斗は、これから一週間、一人で源じいの家にとまります。
はじめは 源じいの後にくっついて あるいていましたが、なれてくると 自分で あちらこちら たんけんをはじめました。
ざしきわらしは そっと見ています。
そして、健斗が おくざしきにきたときに、 目の前に ぱっと あらわれました。
にっこり わらって、
「おれ ざしきわらし。」
ちいさな男の子が、きゅうに目の前にあらわれて、健斗はびっくり、
「きみは だれや?」
「おれ 妖怪。」
健斗は 関西うまれ
「妖怪? なんか ようかい?」
さすが 関西の子ども、ダジャレを言って、笑っています。
ざしきわらしは きょとんとしています。
なにを言っているのか よくわかりません。
健斗は しかたなく せつめいします。
「きみは『妖怪』なんやろう。そやから『妖怪』と『なんか ようかい?』をかけたんや、関西のダジャレや。」
ざしきわらしは 健斗の関西弁(べん)に とまどっています。
「で、なんかようかい?」
「おれ 妖怪。」
ざしきわらしは またおなじことを 言っています。
二人とも 顔を見あわすと、おもわず笑っていました。
「おれは 健斗。きみは ざしきわらし やな。」
ざしきわらしは、またなにかダジャレを言われそうで、自分のことをせつめいするのを あきらめました。
「こんや なかまのあつまりが あるんだけど くる?」
「みんなって 妖怪のともだち?」
「そう、源じいに ないしょで そっと。」
「よるに?」
「源じいが ねてから。」
「おもしろそうやなあ。」
ざしきわらしは 大きく うなずきました。
健斗は よるに こっそりでかけることに わくわくしています。
それに おもしろそうだときいて、ますます 行きたくなりました。
その夜、健斗は 源じいにたずねました。
「源じい ざしきわらしを 知ってる?」
「ああ、この家(いえ)に すみついとる。
ざしきわらしが いる家は さかえると いうてな。」
「じゃあ いっしょにあそんでも ええんかなあ。」
「ああ、わしも 小さいころは いっしょにあそんだもんじゃ。」
健斗は もうひとつ たずねました。
「源じい 妖怪って なんや?」
源じいは しばらくかんがえて、健斗に わかるように せつめいしました。
「そうじゃなあ、妖怪は 人がつくりだした よくわからん生き物じゃ。
それが いつのまにか 妖怪に なったんじゃ。
このうら山の森には 妖怪がいっぱいすんどるぞ。
みんな ほかの土地にすめんようになって、この森にやってきた。
ここは むかしからの自然が、そのままのこっっとるからなあ、人も 動物も 妖怪も むかしから みんないっしょにくらしとる。
友だちになれば なんでもおしえてくれる。
すがたや かたちは ちがっても、みんな友だちじゃ。」
源じいの話しをきくと、健斗は あんしんしてでかけるじゅんびを はじめました。
じかんがくると 源じいは いつものようにふとんに入り すぐにいびきをかいて ねています。
ざしきわらしは そっと 健斗に 声をかけました。
「健斗 じゅんびできたか?」
健斗は カバンにたくさん何かをつめています。
「いっぱいもってきてん。虫とりやろ、花火やろ、かいちゅうでんとうやろう、それに もし くまとか いのししおったら、やっつけたろう思って こんなん もってきてん。」
小さなスプレーを 見せました。
「これなあ かけたら目も,鼻も いたくなって 立ってられへんで、おもしろいで。」
ざしきわらしは びっくりしました。
なんて子や、
みんなの ところへ つれて行っても だいじょうぶか ふあんになりました。
でも、いざとなったら、泣いて にげ帰ってしまうかも、と思って、
「そしたら 行くよ。」
健斗は、カバンからとり出したぼうしを 後ろ前にかぶると、その上にヘッドライトを つけました。
「さあ 夜のたんけんの はじまりや!」
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