小説【ノキさんと俺】5
【ノキさんと俺】5
俺のマシンはもう12年選手だ。
俺が二十歳の時にやってきたんだ。
俺達の施設では成人するとそのお祝いに電動車椅子をプレゼントしてくれる。
小児麻痺にとって二十歳を迎えることはとってもスペシャルな事なんだ。早く旅立つ者が多いもんな。
そんな訳でなんだかんだコイツと暮して12年経つ。
そりゃ~12年にもなりゃあちこちにガタがきちまう。
まっ、俺もだいぶガタがきてるけどよ。
ノキさんは、そんな俺のマシンを見てこう言ったんだ。
「ベアリングが摩耗してるな。タイヤもかなりすり減っているし、それとバッテリーも替えた方がいい」
タイヤがすり減ってるのは乗ってて俺もわかってた。だって確実にブレーキの効きが悪くなってるもん。
でも、施設にはそれを買える余裕がない。
施設のエアコンは効きが悪いし。
廊下や部屋の壁はヒビだらけだし。
シャワーのお湯はぬるいし。
玄関の自動ドアだって故障してる。
残念だけど仕方ないんだ。乗れるだけも良しとしなくちゃなんねぇ。
「まあ、あっちこっちから部品かき集めりゃ何とかなるだろ」
ノキさんはそう言ってくれた。
「ノキさん、コイツ直せるの?」
「ああ、部品さえありゃわけないさ」「マジで!」
そん時俺は車椅子に乗ったまま三センチほど飛び上がった気がした。
つづく
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