小説【ノキさんと俺】6
【ノキさんと俺】6
次の日からノキさんは俺の事は無視して変な行動に出た。
施設の悪い所を直し始めたんだ。
切れかかった電球を替えたり、網戸を張り替えたり、すり減った椅子の脚を直したりとあんまり施設の人が得意じゃなくてほっぽらかしてあるモノを見つけては直していった。
俺は半分腹がたってきた。
てっきり俺のマシンを直してくれるのかと期待していたのに。
まあ、俺は人に裏切られる事はもう慣れっこだけど。今回は少なからずショックだった。
そんな日が一週間続いたある朝、ノキさんは施設の建物の横にテントを張り始めた。俺は黙ってそれを見てた。
テントが出来ると今度は機械や工具を並べ始めた。準備が整ったのかノキさんは俺に向かってこう言った。
「さあ、始めるとすっか」
俺は何の事だかさっぱりわからなかった。
後でノキさんに教えて貰ってわかった。全部計算づくだってのが。
そう俺のマシンを修理する為の段取りだったんだ。
施設の人が断りにくいように最初は施設の困った事をボランティアでやったんだ。ある程度信頼、信用が出来た頃を見計らってマシンの修理の話を持ち込んだらしい。施設の人はそこまでやってくれたんならという事で簡易修理小屋を建てたって訳さ。
俺はつくづくノキさんの用意周到さに参った。ああ、この人は仕事が出来る人なんだと感心しまくりだった。
つづく
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