小説【ノキさんと俺】1
【ノキさんと俺】1
俺は飛ばし屋だ。何時だって周りを蹴散らしぶっ飛ばして行く。
俺のマシンはそんじょそこらの奴等とは全然違う。
俺のマシンはかなりのチューンナップがやってある。
そのチューンナップはノキさんがやってくれたものだ。
俺の名はアキラ。もう32歳になっちまった。
ノキさんは俺のパートナーと呼んでも語弊がないだろう。
ダチ。そう俺のダチだ。そして最高のメカニシャンだ。
俺は生まれてこのかた俺の二本足で立ったことがない。立ち上がれないのだ。
そう俺は生まれた時から小児麻痺なのだ。
もうお分かりだろう。俺のマシンとは電動車椅子のことだ。
この車椅子は恐ろしく速い。MAX60キロは出ちまうモンスターマシンなのだ。
まあ、流石に俺もそこまで公道でぶっ飛ばしたことはない。
だが30キロくらいならちょろいもんよ。
自転車を追い抜くことなんて朝飯前。
追い越した時の自転車のおばさんの驚きようていったら例えようのないくらいビックリした顔をしている。
痛快極まりない。
でもそれはごく最近の事だ。
それまでの俺はうつむき加減で道路の端っこをおどおどしながら走ってたのさ。自分でも信じられねえ。
つづく
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