流暢性失語症の回復過程
前回、非流暢性失語症のお話を書かせていただきました。
今回は流暢性失語症についてです。ウェルニッケ失語、超皮質性感覚失語症、健忘失語、伝導失語を指します。名前だけ聞いてもさっぱりわからないですよね。
流暢性失語症の方は「発話量は多くて、文でなめらかに話をしているけど、言葉のいい間違いが多くなにを言いたいのかわかりにくい。こちらの言っている話が伝わりにくい」という印象を与えることが多いです。
検査をすると、ことばを聞いたり文字を読んで理解する力の低下という特徴と、ことばの言い誤り(例えば、りんごを「みかん」という語性錯語、「りごん」という音韻性錯語、「じゅみな」という新造語、「◯△にゅ✕」という日本語にない音の羅列であるジャーゴン)が多発するという特徴があります。
非流暢性失語症の重度…多弁に喋り続けるが日本語にはない語彙(ジャーゴンや新造語)が頻発に生じ、何を話しているのか話題もわかりにくいです。耳から聞いた音は外国語のように聞こえるようで、こちらの言っていることも伝わりません。文字を提示しても注目が難しく注意力散漫で、本人は失語症があること、話せていないことに気づかないことも多いです。なぜ伝わらないのか、入院しないといけないのかと怒り出す方もいます。
非流暢性失語症中等度…日本語にない音は減り、語性錯語や音韻性錯語といった誤りが増えてくるため、聞き手が何を言いたいのか推測しやすくなってきます。日常よく使うやりとりなら、音声だけで理解できるようになります。どの程度理解できているか質問して確認したり、文字を併用する方が意思疎通はスムーズです。
しかし、話題転換の対応は難しく、先に紙にキーワードを書いて伝えるなど整理しながら話すことが有効です。
非流暢性失語症軽度…ほぼ日常会話は音声だけでやりとりができます。ことばの言い間違いはまだ生じますが、ご自身でも誤りに気づけることが増え(自分の音声のフィードバックができるようになるため)、言い直したり、言い換えて表現したりが可能となってきます。
ただ、この時点でも音声だけで複雑なやり取りをするのは負荷が高くしんどいので、文字併用するなどの配慮はあった方がよいです。
こちらのタイプは鬱になることや、話すことを諦める人が少ないと言われていますが、良くなってくるにつれてご自身のことがわかってくるため、その頃にひどく落ち込まれることも。
聞き手が聞こえた部分を「〜なんですね」と繰り返して伝わっていますよと安心を提供したり、良くなってきたからこそなんですよと改善していることを検査データも用いてお伝えしたりしています。
側頭葉損傷が主なので麻痺がないor軽度の方が多いのが特徴です。非流暢性失語症の重度のみで歩ける方は御本人が入院拒否され、短期入院でリハビリが不十分なまま退院となることも。そういう方は注意力や記憶力も低下していることが多く、日常生活場面での危険判断が不十分で見守りが必要で、ご家族のご負担も大きくなりがち。
退院後も、ご家族のご負担がうまく軽減でき、失語症が良くなるために必要な聴く力を育てる環境にあるとよいのですが、現状訪問言語聴覚士さんか、外来通院でリハビリを継続するしかない…。デイサービスやデイケアでうまく関わってもらえるのかもなんとも言えないところです。失語症協議会は昔からある団体さんです。
もっと、幅広く失語症の方々が楽しく過ごせるような支援があるとよいなぁと思います。
お読みくださりありがとうございます。
今日も素敵な1日になりますように。
あお
https://note.com/clever_eel645/m/m221b6c74baac