クラクフの地下鉄計画
クラクフに地下鉄を走らせる計画があるらしい。私自身は、計画自体に現実性があるのか懐疑的であるし、ゆっくりとトラムが街中を走り廻る、どこか懐かしくて温かいクラクフの雰囲気が好きだ。地下鉄と聞くと東京やワルシャワといった、慌ただしい大都市が思い浮かび、余計にクラクフとのアンマッチ感を掻き立てられてしまう。
といった私の感想はともかく、実際にクラクフは町を挙げて、地下鉄計画に取り組んでいるようだ。Gazeta Krakowska によると、実際にクラクフ市長は「2028年に着工したい」との意思を表明しており、政府をはじめ数十億円規模の投資を呼び掛けているという。第一段階として、ul.Piastowska(AGHやBłoniaの近く)やRondo Młyńskie(ポーランド航空博物館近く)、Rondo Mogliskieあたりを結ぶことが計画されているようだ。他にもBronowiceやクラクフからはかなり離れたWielka Wieśといった郊外も想定されてるとのこと。確かに郊外に住む人々にとって、車以外の交通の便があるに越したことはないのだろう。
一方で課題もある。Life in Krakow でのインタビューで、クラクフ技術工科大学のAndrzej Szarata教授は維持費の高さを指摘しており、「地下鉄建設が目的なのではなく、輸送の効率化を目的とするべきだ」と慎重な態度を示している。例えば、地下鉄の代わりに、一部地下トンネルを走るトラムを増説すれば、地下鉄の半分のコストで同等の利便性を提供することが可能だという。クラクフ郊外は車社会であるため、バイパスを増やしたり道路幅を広くするなど、自動車網の整備を訴える声もあるようだが、同教授によれば「車線を増やすことで交通渋滞の問題が解決する大都市は、文明世界には存在しない。唯一の解決策は、効率的な公共交通システムと効率的な歩行者専用道路と自転車専用道路だ」としている。
ちなみに、最新のデータとは言えないものの、2014年に行われた住民投票では、「地下鉄の建設を支援する」という設問に55%以上の人が賛成している。また、「地下鉄のないクラクフは発展できない」とする設問には、46%以上が賛成、37%以上が反対と答えている(RKNEWS.plより)。賛成派と反対派に大きな差はついていないが、地下鉄の必要性に同意する住民の方がより多い。
クラクフの地下鉄問題。調べてみると、建設や費用といった技術的な話題の他にも、町の威厳やそもそものクラクフの都市計画など、様々な語り口があることが分かった。特に町の威厳と公共交通は興味深い。このあたりは、(半分冗談で)よく言われるワルシャワとクラクフのライバル関係や、住民同士の意識もあるのだろうか。そのあたりについては今後の調べ課題とし、後日記述する。
[参考文献]
https://gazetakrakowska.pl/co-z-budowa-metra-w-krakowie-jest-wstepny-termin-rozpoczecia-prac/ar/c1-18587297
https://lifeinkrakow.pl/w-opinii/6002,tunele-tramwajowe-lepsze-niz-metro-bo-krakow-nie-ma-zloz-ropy-naftowej
https://krknews.pl/maleje-liczba-zwolennikow-budowy-metra-w-krakowie-zaskakujace-wyniki-ankiety