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2020年~2021年 クラクフへポーランド語留学④ 語学学校に慣れていく
前章の通り、1日目はスラブ人専用のポーランド語クラスに分けられたため、本格的なクラスの始動は2日目からだった。クラスメイトにはアメリカ人、ロシア人、ウクライナ人、カザフスタン人、チリ人がおり、年齢は20代前後の学生から30代の社会人とばらばら。特に親しくなったのはアメリカ人のKさん。彼女はアメリカからクラクフに移住して数年目で、ポーランド人のパートナーと市内で暮らしているとのことだった。税理士関係の仕事をしているようで、午前中は授業を受け、午後はアメリカの顧客を相手にリモートで仕事をしているという。英語圏出身の方と親しくなるのは初めてであったため、本場のテンポの速い英語やスラングを理解しながらコミュニケーションをとることもまた、英語の勉強として面白い経験であった。
学校の朝は早く、授業は8時15分からスタート。1クラスは90分で午前にポーランド語の授業が2コマ、午後には文化や歴史に関する講義(ポーランド語または英語)が1~2コマである。午前の文法の授業では造格から学び始めた。深入りは避けるが、ポーランド語には7つの格があり、最も基本となるのが造格 / narzędznikである。例えば、「私は日本人です / Jestem japończykiem・japonką」「私は学生です / Jestem studentem・studentką」など、簡単な自己紹介をするためには、造格の形に名詞を変化させる必要があり、自己紹介から始める初級レベルにはうってつけの格なのだ。造格の変化のルールは単数形も複数形もパターン化されているので、練習問題を繰り替えせば、比較的すぐに覚えることができた。
1日の授業は15時前後に終わるため、その後は完全に自由時間。はじめこそ、新しい環境にいるだけで疲れがたまり、寮に直帰していたが、現地の生活リズムに慣れるにしたがって余力も出てくるもの。ただ、留学当初はコロナ禍の真っただ中であったため、美術館や博物館を見学することができず、代わりに日課になったのは散歩である。ヴィスワ川沿いを歩いてカジミェシュ地区に出ていったり、半分は観光客で半分は現地人(?)の感覚で意気揚々と中央広場を歩いたり、夕方から日が暮れるまで、グーグルマップも極力水に歩き回った。特にヴィスワ川沿いはお気に入りの散歩コースだ。本能的に人は水のあるところに集まってくるものなのか、川沿いではちびっ子たちが遊びまわり、高校生カップルは夕暮れ時を共に過ごし、ベンチでは女子大生が読書にふけり、(本当は違法だけど)気持ちよさそうに瓶ビールを飲むおじさんもいるなど、そこではクラクフの縮図が見られるのである。自分もその場を歩いていると、なんだかクラクフの一部として匿名で溶け込めた気がして、なんだか楽しい気分になるのである。