私学訪問日記【淑徳中学高等学校】
【淑徳中学高等学校の自己理解を深めるグローバル教育について】
淑徳中学高等学校は、校祖・輪島聞声先生の言葉である「進みゆく世におくれるな、有為な人間になれよ」を理念に掲げる、仏教を教育基盤とした男女共学の学校です。
仏教の八正道をより分かりやすい言葉で表現をした教育理念「Life(生命)、Love(愛)、Liberyt(自由)」を核に、同校の複合的な教育コンテンツの総称を「淑徳MAGIC(Method・Activity・Global・Imagination・Culture)」と紐づけ、利他共生の心と学力を兼ね備えた社会に貢献できる生徒を育成しています。
同校の生徒は、「自分が世の中でどのように役立つことができるか」という命題を、中1の頃から「心の教育(淑徳の時間)」で学んでいます。昨年11月に同校の文化祭「光輪祭」に訪問した時に、その様子が色濃く出ているように感じました。
例えば、社会福祉部の活動では、昨年8月にマウイ島の大規模火災で被害を受けたハワイ州ラハイナ浄土院復興支援募金をする傍ら、不要衣類回収(ふくのわプロジェクト)と余剰食品回収(フードドライブ)を行っていました。加えて、他校と連携し、青森県立五所川原農林高等学校から送られた青森の廃棄してしまうりんごの無料配布や、奈良県立商業高等学校が作った非常時用のパンの缶詰の販売も行い、フードロスについての情報発信も行っていました。
また、中2の有志メンバーは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の難民支援に関する動画を制作し、その活動のための募金活動も実施。
さらに、高校生の有志が組織しているSDGs+のメンバーは、2つの企画を開催しました。1つは同校の卒業生が所属するアップサイクルブランド「carutena」とのコラボで、不要なTシャツを使ってエコバッグを作るアップサイクルデザインのワークショップを行い、もう一つはSDGsスタディウォークラリーという、校舎内3か所のチェックポイントを全て回ってキーワードを集めると景品交換できる企画を行っていました。
「carutena」のワークショップを手伝っていたSDGs+のメンバーである高2の生徒に話を聞いてみたところ、将来は自分が医学に携わり、世の中の貧困をなくしていく活動をして世の中に役立ちたいと希望進路を話してくれました。「世の中に役立つ人になる」という意識は、中3の1週間または3か月の海外語学研修を経験することによって醸成され、より個人の強い進路の動機に結びつくようです。
中1・中2は中3から海外語学研修の経験、学びについての発表を聞く機会もあり、より明確な目標になり、「今は英語が苦手でもチャレンジして克服しよう」と、中学生の意識も高まるそうです。中1に人気の英語の科目が「IP(International Perspective)」です。「IP」では、英語を使って探究や調べ学習を行うもので、1クラスを3つに分けてネイティブ教員と少人数で行っています。先生方も、苦手意識を生徒に持たせないよう、工夫をこらし、楽しめる内容にしているそうです。学年が上がるとともに、授業内容も発展し、高校生になると英語でのプレゼンテーションに取り組んでいきます。
また、本物の日本文化が学べる施設「洗心館」は和室に加えて、世界標準の柔道場、剣道場もあり、女子は茶道・華道、男子は柔道・剣道を中2・中3で体験できることも特徴です。こうした体験を通して日本文化を学び、個のアイデンティティを育みます。
このように、生徒それぞれが様々な体験を通して自己理解を深め、将来の夢の実現のため、逆算して「今、自分がやるべきことは何か」を考えられる生徒を育んでいるように感じました。淑徳では、様々な体験学習や各教科の取り組み、仏教を基盤とする利他共生の心の教育といった複合的な学びが、生徒自身の視野を広げています。
コアネット教育総合研究所 新教育推進室 アカウントマネージャー 湯浅佳子
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