必要な暗黒時代だったのだ
あとひと月もすれば誕生日がやってくる。いよいよ30代最後の歳だ。
30代はどんな歳でしたか?と聞かれたら迷わず「暗黒時代でした」と答えるだろう。30代が一番楽しいと言う人を目の当たりにした時の衝撃といったらない。あまりの衝撃で翌日からカーテンを開けず過ごす日曜みたいな現実を数ヶ月くらい生きた。
暗黒時代とは言え大したことはない。年下の男と6年間遠距離恋愛をして、その間ずっと浮気されていたのに気付かず結婚して別れた。たったそれだけのことだ。くだらない。
子供がいたわけではないし一緒に生活をした時間なんて半年くらいだし、ママごとみたいな結婚。幼稚で明るくてその分思いやりがなく自分勝手でやりっぱなしの2人だった。
先日久しぶりに妹と呑みに行った時「離婚したこと後悔してない?」と聞かれた。お姉ちゃんが幸せならそれでいいけど、私は絶対認めないよ。そう言い続けてくれていたのが妹だ。
恋愛という曇ったメガネをかけ、相手のぬかるんだ部分を見て見ないないふりしてしまう私の本心を妹はいつも代弁してくれていた。妹がメガネの曇りを無理矢理拭きあげ定期的に現実を見せてくれたから私は私を無くさずにすんだ。
去年だったらすこし迷ったかもしれない。職場を出たらあの人が待っているかもしれないとか郵便ポストを開けたらあの人からの手紙が入っているかもしれないとか、まだそんなことを夢見ていたから。
私は笑いながらはっきりと、後悔したことは一度もないよと答えた。
2023年の大きな出来事はやはりこのnoteを始めたことだっただろう。毎日書くのは楽しかったけどきつかった。書くことがきついのではなく、否が応でも自分の心に手を突っ込み、かきませなければならないその痛みがきつかった。(ふざけたことしか書いてなかったようにも思うが)
でもそんなふうにして書いた言葉を好きと言ってくれる人がいて、私は少しずつ自分の輪郭を取り戻していった気がする。何が好きで何が嫌いか、どんなふうに過ごすことが心地よくて何に不安や未練を感じているのか。その全部をここでは否定されなかった。だからこれでいいのだ(唐突なバカボンパパ)と思えるようになった。
2024年、38歳の今年。過去は消えないし不安なこともなくなってない。何かが大きく変わったわけではないし未来はいつも少しだけこわい。
それでも「これでいいのだ」。私はいつまでもこの私のままでいい。そう思えたから誰かに心を乗っ取られることなく過ごせた。
30代が暗黒時代だったことに変わりはないけどこれからの人生にとって必要な時間だったと思える日が必ずくると確信している。誰かに出会うためとかそういう類のものではなく、私が私としてこの人生を生き抜くために必要な暗黒時代だったのだと、きっとそう思う日が来るだろう。
欲しいものが手に入らない、欲しいものが手に入らなかったと言う思いが足枷になって痛くて泣いて過ごすくらいなら、欲しいと思う心ごと捨てたっていい。生ぬるいと言われようがかまわない。今この瞬間を穏やかに過ごすこと以上に大切なものはない。
そうやって積み重ねた時間の先でいつか「なかなかいい人生だった」と走馬灯を眺めながら目をつぶりたい。