九年橋の痕跡を探して/九年橋、古川橋ほか/イワテ歴史的建造物巡り13
今回は北上市にある九年橋を見に来ました〜
この橋は近年改修されてしまい、かけ替えられてしまったのかと思っていたのですが、本当にそうなのか気になってモヤモヤしていたので、痕跡を探しに行きました。
九年橋
九年橋は初代橋が明治9年(1876)に建設されたことから名付けられました。その後洪水で初代橋が流失、二代目の橋は昭和9年(1934)に竣工しその後平成27年(2015)に補強などの改修が完了しました。
「日本の近代土木遺産(改訂版)―現存する重要な土木構造物2800選」によると九年橋はBランクとされており、これは県指定文化財クラスの価値があるとか…
ここから見ると欄干が新しくなっているためやっぱりかけ替えされてしまったのか… と、感じてしまいます。
しかしよく見るとあることに気が付きました。
これは昭和9年(1934)の九年橋の橋台の石組です。石柱が竣工当時は建っていたらしくその基礎でもあるようです。
この案内板に書いてある「モダンな塔」が石柱の事で、その一部が石碑として再利用されているそうです。その石碑は最後の方で改めて説明します。
そしてこの周辺をさらに探索すると、プレートが見つかりました(^_^)
上は九年橋の補修工事記録のプレート、下は鋼桁の製造会社、年数が書かれており
株式會社
東京石川島造船所
製造
大正十一年
と書かれております。
大正十一年だと…( °-°)?
どうやら昭和9年(1945)年竣工なのは間違いない様ですが、建設する際に北上市街側は大正11年(1922)に製造したものを使用したようで、これは架替えをしていないことを表す紛れもない証拠です!
(∩´∀`)∩ワーイ
これを見つけられただけでも満足ですが、探索を続けます。
(((((((((((っ・ω・)っ ブーン
けっこう斜面がキツかったです(汗)
対岸の方に行けば橋脚に近づけるかもと思い移動しました。
行けました〜
鬼柳側は公園になっていて、そこから橋脚に近づく事ができます。
調べたところ鬼柳側の橋桁は昭和8年(1933)の建設らしく北上市街側とはまた違う構造になっているようです。
今回、九年橋が二代目のままである事がわかったので今までのモヤモヤが晴れました。
【建造物DATA】
名称:九年橋
年代:昭和9年(1934)
住所:〒024-0058
岩手県北上市下鬼柳4地割
座標:39.2764871, 141.1128402
【参考文献】
JSCE 公益社団法人 土木学会 "日本の近代土木遺産(改訂版)" 都道府県別リスト(改訂版) (最新版)
https://www.jsce.or.jp/committee/hsce/2800/index2(2800).htm(2024年4月24日18時22分閲覧)
JSCE 公益社団法人 土木学会 "岩手県" 九年橋
https://www.jsce.or.jp/committee/hsce/2800/list_whole%20(2800)/03_iwate.htm(2024年4月24日18時18分閲覧)
古川橋
九年橋の先には同じく昭和初期築の橋が2脚あり、そちらも見に行きました。
古川橋は昭和8年(1933)の竣工です。石積の橋台が遠目からでも見えます。
また、堤防の内側にある橋でちょこんとしている感じが可愛らしく感じます。
道路沿いから見ると親柱が凝った意匠があることがわかります。
さらに近づきましょー
まるでリボンを巻き付けた様な模様。一応わかりにくい例えだと感じたのでイラストで説明するとこんな感じです↓
いわゆるアールデコ調のデザインでしょうか。一見地味に見える橋ですが、よく見ると洋風意匠が施されていて驚きです〜
それでは下に潜りこみます。
下から親柱付近を見上げると石積みが良い味を出し、まるで海外の城壁みたいに見えます〜
(あれ…自分だけですかね、、)
裏側だけ見るとまるで古さを感じさせない見た目をしていました。橋脚は九年橋とちょっと似ている気がします。
それでは次の橋へと移動します〜
【建造物DATA】
名称:古川橋
年代:昭和8年(1933)
住所:〒024-0058
岩手県北上市下鬼柳4地割
座標:39.2741195, 141.1119165
本郷橋
古川橋から線路を超え、その先に見えてくるのがこの橋です。
本郷橋は昭和8年(1933)竣工でまた欄干などの意匠が異なります。
ここは下に入ることはできないのでぐるぐる周りを見て回ります。
どうやら水道橋も兼ねているのか、パイプらしきものが取り付けられています。
一部親柱部分が修繕された様で、綺麗になっている部分がありますが、元の意匠を遺しているのはとても良かったです。普通なら欄干ごと撤去そして全て新しくしてしまいそうですが、ここでは竣工当時の欄干親柱は遺しておりこの橋は九年橋、古川橋とともに大切にされているのでしょう。
一部橋台が石積みになっているのが見えます。どうやら後にコンクリートで補強されたみたいですね。
ここの道路は元々国道4号線として使われていましたが、今では別の大きな道路が完成しこの道は国道では無くなりました。
これらの隠れた美しい橋たちの存在をぜひ知っていただけると嬉しく思います。
【建造物DATA】
名称:本郷橋
年代:昭和8年(1933)
住所:〒024-0056
岩手県北上市鬼柳町
座標:39.2682569, 141.1170851
明治天皇御駐輦跡碑
北上市の街なかに来ました。というのも、九年橋の石塔が使われた石碑が残っているからです。先ほどの案内板で自分は初めて存在を知り、調べたところ前に見たことあるな…と思い出しながら探しました。
そして見つけました〜!!
この石碑が明治天皇御駐輦跡碑であり、かつて九年橋の石塔として使われたものです。
貝殻のようなマークがあります。これはどうやら九年橋の欄干等に描かれていたようですが、戦時中の金属供出でそれらは撤去されてしまったようです。しかしこの石塔は碑として活用され今も残っています。
この石碑の脇にある穴は欄干が繋がっていた時の跡のようです。
現在は敷地に立ち入る事ができないため柵越しに見学しました。
これが九年橋に使われていたことを知ることもできたのでまた一つ岩手の歴史を知れたかなと思いました。
皆さんも身近な橋の歴史を調べてみてはどうでしょうか(^_^)
【建造物DATA】
名称:明治天皇御駐輦跡碑(九年橋旧石塔)
年代:昭和9年(1934)
住所:〒024-0094
岩手県北上市本通り1丁目
座標:39.2868763, 141.1149947