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蝉時雨、代々木公園で咲いた夏花の恋

蝉時雨



誠人は代々木公園のベンチに座って、蝉時雨に耳を傾けた。
夏の暑さが一段落した午後だったが、まだ空気は重くて息苦しかった。

誠人は水筒から冷たい水を飲んで、ほっと一息ついた。
彼はこの公園が好きだった。

都会の喧騒から離れて、自然に触れることができるからだ。
彼は小説家を目指していたが、なかなか作品が書けなくて悩んでいた。

この公園で散歩をしたり、本を読んだりして
インスピレーションを得ようとしていたのだ。

そんなとき、彼の目に飛び込んできたのは
白いワンピースを着た女性だった。

彼女は花壇の前に立って、カメラを構えていた。
彼女は花に向かって笑顔で話しかけているようだった。

その姿がとても可愛らしくて、誠人は思わず見とれてしまった。
彼女は何を撮っているのだろうか。
誠人は好奇心から、彼女の方に近づいてみた。

「すみません。何を撮っているんですか?」

彼女は誠人の声に驚いて振り返った。
彼女は大きな瞳とふわふわの髪を持つ美人だった。
彼女はカメラを下ろして、誠人を見つめた。

「あ、あの……私は花の写真を撮っているんです。趣味で……」

彼女は少し緊張しているようだった。
誠人は彼女に笑顔で話しかけた。

「花の写真ですか。素敵ですね。どんな花が好きなんですか?」

「えっと……私は夏の花が好きなんです。特に、朝顔とひまわりと蓮です」

「夏の花ですか。私も好きですよ。朝顔は早起きしないと見られないから、貴重な花ですよね。ひまわりは太陽に向かって咲くから、元気がもらえる気がしますよね。蓮は水面に浮かんでいるから、涼しげで綺麗ですよね」

「そうなんです!あなたも夏の花が好きなのですね」

彼女は誠人に嬉しそうに微笑んだ。
その笑顔に誠人は心を奪われた。

「あの……よかったら、お名前を聞いてもいいですか?」

「もちろんです。私は誠人と言います。あなたは?」

「私は美咲と言います。よろしくお願いします」

「美咲さん、こちらこそよろしくお願いします」

二人は手を握って挨拶をした。
そのとき、二人の間に涼風が吹いた。

蝉時雨が一層激しくなった。

約束


「美咲さん、もしよかったら、一緒に花の写真を撮りませんか?私も小説の資料用にカメラを持ってきているんです」

彼は美咲ともっと話したいと思っていた。
美咲は少し迷ったが、誠人の誠実な態度に惹かれて、承諾しようとした。

しかし、そのとき、彼女の携帯電話が鳴った。

「あ、ちょっとすみません」

美咲は携帯電話を取り出して、画面を見た。
すると、彼女の顔色が変わった。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」

誠人は心配そうに尋ねた。美咲は困ったように答えた。

「実は……今日は友達の美容室に行く予定だったんです。でも、予約してた
時間を過ぎてしまって……今から急いで行かないといけないんです」

「えっ、そうなんですか。それは大変ですね」

誠人は驚いた。
美咲は慌ててカメラをしまって、立ち上がった。

「本当にすみません。今日は楽しかったです。また会えるといいですね」

「そうですね。またどこかで」

誠人は美咲に笑顔で返した。
しかし、心の中では残念でならなかった。

美咲は走り出そうとしたが、そのとき、思い出したように立ち止まった。

「あ、そうだ。連絡先を交換しませんか?」

「え?あ、はい。いいですよ」

誠人は美咲の提案に快く応じた。二人は携帯電話で連絡先を交換した。

「じゃあ、また連絡しますね」

「ぜひ、気を付けてくださいね」

美咲は誠人に手を振って、走って行った。

誠人は彼女の後ろ姿を見送った。

彼女の白いワンピースが風に揺れていた。

転換

美咲は美容室に着いたとき、すでに予約時間から30分も遅れていた。
彼女は店員に謝りながら、カットとカラーをお願いした。

「今日はどんなスタイルにしますか?」

「えっと……夏らしく、明るめの色にしたいです」

「それなら、この色はいかがですか?」

店員はカラーチャートを見せてくれた。
美咲はその中から、淡いピンク色を選んだ。

「これにします」

「かわいい色ですね。では、こちらへどうぞ」

店員は美咲をシャンプー台に案内した。
美咲は頭を洗ってもらいながら、誠人のことを思い出した。

彼は小説家を目指していると言っていた。
どんな小説を書くのだろうか。
彼の作品を読んでみたいと思った。

彼は夏の花が好きだと言っていた。
私も夏の花が好きだった。
二人は共通点が多いと感じた。

彼は花の写真を撮りたがっていた。
私も花の写真を撮りたかった。
二人で一緒に花の写真を撮ればよかったと後悔した。

彼は連絡先を交換してくれた。
連絡先を交換してくれて嬉しかった。二人はまた会えると約束した。

美咲は心がときめいた。彼は自分に好意を持ってくれているのだろうか。
彼女は自分に自信がなかった。

「美咲さん、シャンプーが終わりましたよ」

店員の声で現実に戻った美咲は、慌てて目を開けた。

「あ、ありがとうございます」

美咲はシャンプー台から起き上がった。
店員は美咲の髪をタオルで拭いてくれた。

「では、カットとカラーを始めますね」

「はい」

美咲は鏡に映った自分の顔を見た。
今日は新しい自分になろうと思った。

カットとカラーが終わったとき、美咲は驚いた。
髪が肩まで切られて、淡い恋心のような桃色染まっていた。

「どうですか?気に入ってもらえましたか?」

「すごい……すごく可愛くなりました!ありがとうございます!」

美咲は店員に感謝した。店員は美咲に笑顔で返した。

「こちらこそ、ありがとうございます。またお待ちしていますね」

「はい、また来ます」

美咲は支払いを済ませて、店を出た。
外は夕暮れ時だった。空にはオレンジ色の雲が浮かんでいた。

美咲は携帯電話を取り出した。
誠人にメッセージを送ろうと思った。

「今日はありがとう。髪型変えました。どうかな?」

彼女は自分の顔写真を添付して、送信ボタンを押した。

すると、すぐに返信が来た。

「お疲れ様。髪型変えたんだ。すごく似合ってるよ。可愛い」

美咲はメッセージを読んで、顔が赤くなった。
彼は褒めてくれた。彼女は嬉しかった。

「ありがとう。嬉しいな」

彼女はメッセージを送った。すると、また返信が来た。

「僕のせいで遅刻して大変だったね。でも、無事に髪切れて良かった」

美咲はメッセージを読んで、安心した。
彼は優しくて、理解してくれた。彼女は惹かれた。

「そんなことないよ。ありがとう。あなたはどう?何か書いてるの?」

彼女はメッセージを送った。すると、また返信が来た。

「うん。実は……今日出会った君のことを書いてるんだ」

美咲はメッセージを読んで、驚いた。
彼は自分のことを書いてくれた。私はは興味が湧いた。

「え?私のこと?どんな話?」

彼女はメッセージを送った。すると、また返信が来た。

「君と僕の出会いの話だよ。君が花に話しかけているところから始まるんだ」

美咲はメッセージを読んで、感動した。
彼は自分との出会いを大切にしてくれた。彼女は幸せだった。

「本当?それ読みたいな」

彼女はメッセージを送った。すると、また返信が来た。

「じゃあ、明日また代々木公園で会おうよ。僕の作品を見せてあげるよ」

美咲はメッセージを読んで、喜んだ。
彼は自分に会いたがってくれた。私はは恋に落ちた。

「うん、会おうね。楽しみにしてるよ」

彼女はメッセージを送った。
すると、最後の返信が来た。

「じゃあ、明日ね。おやすみ」

美咲はメッセージを読んで、微笑んだ。
「おやすみ」と返事をした。

そして、携帯電話を閉じて、空を見上げた。

いつの間にか空には満月が輝いていた。

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