品川駅の不思議なベンチ
品川駅には、死者と会話できる不思議な場所がある。
その場所は、改札の近くにあるベンチで、そこに座っていると、自分が想う死者の声が聞こえてくるのだ。
この秘密は、品川駅で働く駅員の太一と
ベンチによく座っている女性の杏だけが知っている。
太一は、幼い頃に亡くなった母親と話すためにベンチに座っていた。
母親は太一が小学生の時に病気で死んでしまった。
太一は母親が大好きだったが、最後に会えなかったことをずっと
後悔していた。母親は太一に手紙を残しており、その手紙には
「私はあなたを見守っています」と書かれていた。
太一はその手紙を大切に持っており、ベンチに座ると、
母親の優しい声が聞こえてきて、太一は安心した。
母親は太一のことを心配しており、駅員として頑張っていることや
父親と仲良くしていることなどを尋ねてきた。太一は母親に嘘をついて
自分は幸せだと答えた。しかし、太一の本当の気持ちは違っていた。
杏は、交通事故で死んだ恋人と話すためにベンチに座っていた。
恋人は杏と同じ大学の先輩で、杏は彼に一目惚れして付き合うようになった。
恋人は杏に優しくて面白くて頼りがいがあり、杏は彼と結婚したいと
思っていた。しかし、卒業式の日に恋人は事故に遭ってしまった。
杏は恋人の遺体を見て泣き叫んだ。恋人は杏に指輪を贈っており
その指輪には「私たちは永遠に一緒」と刻まれていた。
杏はその指輪を大切に持っており、ベンチに座ると、恋人の明るい声が
聞こえてきて、杏は悲しみを忘れた。
恋人は杏のことを愛しており、彼女が元気でいることや
新しい恋を見つけることなどを励ましてきた。
杏は恋人に甘えて、自分は彼しか愛せないと答えた。
しかし、杏の本当の気持ちは違っていた。
二人は、ベンチで出会ってから仲良くなり、互いの悲しみを分かち合うようになった。太一は杏の笑顔が好きだったし、杏も太一の優しさに惹かれていた。二人はベンチ以外では普通の友達同士だったが、ベンチでは特別な存在だった。
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太一と杏は、ベンチで会うたびに心を通わせるようになった。
しかし、二人の関係は周囲に知られてはならないものだった。
太一は、駅員として働く傍ら、父親の借金を返すために裏社会で危険な仕事をしていた。
杏は、恋人の死後、彼の遺産を狙う悪徳弁護士に付きまとわれていた。二人は、自分の秘密を隠しながらも、ベンチで会うことで安らぎを感じていた。
太一は、裏社会のボスである黒田から仕事を受けていた。
黒田は太一に対して厳しくも優しく接しており、太一は黒田を父親代わりに慕っていた。
しかし、黒田は太一に危険な仕事を押し付けており、太一は何度も命の危険にさらされていた。黒田は太一に「お前は俺の息子だ」と言っておきながら、「お前は俺の道具だ」と言って使っていた。
ある日、黒田は太一に最後の仕事を命じられる。それは、品川駅で大量の麻薬を運ぶというものだった。太一はこの仕事を成功させれば、父親の借金がチャラになると聞かされていた。
太一はこの仕事を引き受けるが、内心では危険を感じていた。太一は黒田から麻薬を受け取り、品川駅へ向かった。
その途中で、太一は警察に見つかってしまう。警察は太一が麻薬を持っていることに気づき、太一を追跡する。
太一は必死に逃げるが、警察に追い詰められてしまう。太一は麻薬を捨てようとするが、その時、黒田から電話がかかってくる。
黒田は太一に「お前が麻薬を捨てたら殺す」と脅す。
太一は困惑するが、黒田から切られてしまう。
太一は麻薬を捨てることも持っていることもできないというジレンマに陥る。しかし、太一は駅員であることを思い出す。
太一は麻薬を落とし物の袋に入れて、自分の制服のポケットにしまう。
そして、警察に向かって「すみません、私はこの駅で働いているんですが、落とし物を拾って届けようとしていたんです」と言う。
警察は太一の制服や名札を見て、疑うが、証拠もないので仕方なく信じる。警察は太一に「じゃあ、その落とし物を見せてくれ」と言う。
太一は袋から麻薬を出して見せる。警察は驚くが、太一は「これが落ちていたんですよ。何かわかりますか?」と言う。警察は「これは…」と言いかけるが、その時、品川駅のアナウンスが流れる。
「お客様へのお知らせです。品川駅では本日、結婚式が行われます。ご協力のほどよろしくお願いします」というアナウンスだった。
太一は警察から目をそらすと、アナウンスの方に目を向ける。
そこには、杏の姿があった。杏は、恋人の遺産を管理する佐藤という弁護士に付きまとわれていた。佐藤は杏に対して優しくも執拗に接しており、杏は佐藤を恐れていた。
しかし、佐藤は杏に結婚を迫っており、杏は断ることができなかった。佐藤は杏に「私はあなたを愛している」と言っておきながら、「あなたは私のものだ」と言って縛っていた。
佐藤は杏に最後通告を受ける。それは、品川駅で結婚式を挙げるというものだった。杏はこの結婚式に出席すれば、恋人の遺産が全て自分のものになると聞かされていた。
杏はこの結婚式に出席するが、内心では拒否したかった。杏は佐藤から結婚指輪を受け取り、品川駅へ向かった。
その途中で、杏は太一と再会する。二人は互いに驚きつつも喜び合う。太一は杏にプロポーズすることを決意する。杏も太一に受け入れてもらうことを願う。二人はベンチへと駆け寄るが、その時、事件が起こる。
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太一と杏はベンチへと駆け寄るが、その時、事件が起こる。ベンチに座っていたのは、黒田だった。黒田は太一が麻薬を落とし物にしたことに気づき、太一を裏切り者と呼んで怒鳴る。
黒田は太一に銃を向けて引き金を引くが、その瞬間、杏が太一の前に飛び出す。杏は太一をかばって銃弾を受けてしまう。杏は太一の腕の中で倒れる。
太一は杏が撃たれたことに驚き、悲鳴を上げる。太一は杏に「大丈夫か?杏!杏!」と叫ぶが、杏は意識を失っている。
太一は杏の傷口に手を当てて血を止めようとするが、血は止まらない。太一は涙を流しながら杏に「ごめんなさい…ごめんなさい…」と謝る。
黒田は太一が泣いているのを見て、冷笑する。黒田は太一に「お前は俺の息子だったのに、なぜ俺を裏切ったんだ?お前は俺の道具だったのに、なぜ俺を捨てたんだ?」と言う。
黒田は太一に「お前は死ぬべきだ」と言って再び銃を向ける。
しかし、その時、佐藤が現れる。佐藤は杏の結婚式に出席するために品川駅に来ていた。佐藤は杏が撃たれたことに気づき、激怒する。
佐藤は黒田に「お前は何をしたんだ?この女は俺の嫁だ!」と言って殴りかかる。佐藤と黒田は争い始める。
その間に、警察が到着する。警察は銃声や悲鳴を聞いて駆けつけたのだった。警察は佐藤と黒田を制圧して逮捕する。警察は太一に「あなたも犯人ですか?」と尋ねる。
太一は警察に「いいえ…私は…」と言おうとするが、言葉が出ない。太一は自分が何者なのかわからなくなっていた。太一は自分が裏社会で働いていたことや父親の借金を返すために危険な仕事をしていたことや黒田から麻薬を受け取って品川駅で運んでいたことや警察から逃げて落とし物にしたことやベンチで母親と話していたことや杏と出会って仲良くなってプロポーズしようとしたことなどを思い出す。
太一は自分の人生がどれだけ矛盾していたかに気づく。
太一は警察に「私は…私は…」と言おうとするが、その時、杏が目を開く。杏は太一の顔を見て微笑む。杏は太一に「太一…ありがとう…私は…あなたが好きだった…」と言う。杏は太一に「私たちは永遠に一緒だよ」と言って、指輪を差し出す。指輪には「私たちは永遠に一緒」と刻まれていた。
太一は杏の指輪を見て涙を流す。太一は杏に「杏…ごめんなさい…私も…あなたが好きだった…」と言う。太一は杏に「私たちは永遠に一緒だよ」と言って、指輪を受け取る。
二人は互いに手を握り、笑顔で見つめ合う。二人は互いに「愛してる」と言って、キスをする。
その時、ベンチから死者の声が聞こえる。母親の声と恋人の声だった。母親の声は「太一、幸せになってね」と言う。恋人の声は「杏、幸せになってね」と言う。二人の声は「私たちはあなたたちを見守っています」と言う。
太一と杏は死者の声に感謝する。太一と杏は死者の声に別れを告げる。
そして、太一と杏は生きる。
その時、ベンチから光が差す。ベンチから死者の姿が現れる。母親と恋人だった。母親と恋人は微笑みながら、太一と杏に手を振る。太一と杏も手を振り返す。
母親と恋人は空へと昇っていく。空から花びらが降ってくる。花びらは白くて美しい。
太一と杏は花びらを見上げる。太一と杏は幸せそうに抱き合う。
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