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たにんごと

前回の献血から3か月以上経過していたので、市内まで献血をしてきた。

「趣味は献血です」と言うフレーズに憧れて、大学1年の春から足繫く通い詰めてきたが、今になってようやく、趣味と言うには1回1回のスパンが長すぎることに気づいた。そもそも、血があまり得意ではない時点で趣味にするには向いていない。

でも、手軽に(肉体労働以外で、というニュアンス)社会貢献できる体験もそう無いし、せっかく1年間も継続したんならやるか、くらいのぬるいモチベーションはある。他にメリットとしては、半年間セックスしてないことの証明です、と言うと男ウケは非常に良いです。

ポイントと交換できるメモ帳(かわいい)

寄り道しようと目星をつけていたお店が閉店間際だったので、散歩がてら最寄り駅まで徒歩で向かうことにした。

献血後に推奨されない激しい運動と貧血気味のアタマは、ネガティブな自己観察を助長する。

自分を中心とした興味・関心の強い事象を「じぶんごと」、余事象を「たにんごと」として、僕はじぶんごとの領域が他人より極端に狭く、その分強い興味をもつ傾向にあると、最近の研究で分かってきた。

「蚊が分泌するかゆみ成分はタンパク質だから、温めたら熱変性を起こすんだよ」とブルーアーカイブで熱々になったスマホを僕の腕に押し付けてきたオタクには、それっきりの会話でもかなり仲間意識を持っているし、カラオケでチャンカパーナを熱唱していたご学友のことはマジでどうでもいいと思っている。それくらい振り切った性質であることを許容して、その性質と上手に向き合っていくフェーズだと思っていた。

それが、久しぶりに市内までやってきて、せわしなく街ゆく人々に揉まれて、途轍もない数の衆目に晒されて、公共と言うあまりに巨大な集合体を、タダの一元的な分別で片づけていいワケがないと圧倒されてしまった。

それぞれの他人には、当人の口からでさえ語り尽くせないバックボーンがあって、それらをすべて蔑ろにして僕だけが僕の人生を送る図太さは、僕には無いようです。


このような「情報オーバーロード」を回避するには、情報の取捨選択とシングルタスクの常態化が重要らしい。若者よ、SNSをやめて、近所のだだっ広い公園まで走り出そう。

そこに大の字で寝そべって、締切の近いレポートのことなんか忘れて、篠澤広さんが発熱の際、体温計をどこで測るかについて語り明かそう。それはもう、夜が更けるまで…。

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