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ひろちゃん農園の炎上問題の解説

最近、農業系YouTube界隈で話題になった「ひろちゃん農園」が炎上しました。原因は、簡単に言うと「農薬の認識不足」って感じですかね。

無農薬栽培をする中で、「消石灰」や「酢」、「納豆菌」等を使って病害虫対策をしていたという一見、何が問題か分からない話なんですが、

実は、「酢」は特定農薬となるため、無農薬栽培と言って販売することは出来ないということだそうです。

これは、農薬取締法で、「農薬は、登録しないと製造販売できない」と決められているため、農薬効果が認められており農業現場でも使用されている「食酢」についても登録しておかないと製造販売できなくなるという不都合を解消するために「特定農薬」として登録されているんだそうです。

一方で、「特定農薬」への登録についてもハードルは高く、エビデンスがないモノは「特定防除資材」として、登録を保留している段階となります。

調べてみると、「特定農薬」は5種類で、食酢、重層、天敵(使用場所と同都道府県で採取)、エチレン、次亜塩素酸水(塩酸又は塩化カリウム水溶液を電気分解したものに限る)

登録を保留している「特定防除資材」は10種類となり、インドセンダンやヒノキの葉、焼酎、木酢液、竹酢液などでした。

登録を検討した結果、人体や環境への悪影響等があるモノや農薬効果が認められないモノ、名称から資材が特定できないモノ、農薬の定義に当てはまらないモノなどは登録不可となり、「消石灰」については結構、危ないということで特定農薬にはなりませんでした。

即ち、農薬としての使用は不可となります。
農薬ではないため、防除効果を謳うことは法律違反です。

「納豆菌」については、調べるとそもそも納豆菌の一種を使用した殺菌剤がありました。BT剤と言いますが、微生物を使った農薬も存在します。
ただし、納豆菌全般が農薬登録されているわけではないし、結局は、名称から資材が特定できないため、農薬と言ってはいけないと思われます。

おさらいすると、「食酢」の使用は、特定農薬。

一方で、「消石灰」や「納豆菌」は農薬として使ってはいけないと思われます。

じゃあ、登録保留中の「特定防除資材」とやらを使ってしまったら罪に問われるのかですが、それは無いです。

以下、農水省HPの一部抜粋です。

指定が保留された資材については、今後農薬の効果の試験等を行うなどにより、農薬としての客観的な効果や安全性を証明するデ-タを集め、特定農薬の指定の可否を判断するだけのデータが揃ったものについては、順次食品安全委員会や農業資材審議会の意見を聴いて指定していくこととしています。
農薬かどうか判断が保留されたものは、農薬効果を謳って販売することは従来どおり取り締まりますが、効果は分からないものの、使用者が自分の判断と責任で使うことは可能です。

農林水産省HP

ちなみに、農薬としての使用を禁じられている消石灰ですが、土壌改良材として農業分野で普通の資材として使われています。別に畑で使うことに何の問題もありません。本当は、農薬として使いたい人もいると思いますが、国がNGを出したものについては、「自己責任」で使っていいとはなりませんのでご注意ください。納豆菌も然りです。土づくりに適しています。

ちなみに、「熱湯」って結構、農業現場で使われています。
例えば、温かいお湯で種子消毒したり、熱湯で土壌消毒をしたり、高温の蒸気で雑草を枯らすこともあります。

熱湯って、農薬なんですか?って感じですが、熱湯は農薬ではありません。
これは定義の問題で、そもそも熱湯は農薬取締法で規定する農薬の定義に当てはまらないとのことです。

要は、農薬っていうのは、防除効果等がある薬剤 又は 天敵であることが大原則であり、熱湯はそれらに該当しないということです。つまり、防除効果が期待されたり、安全だと思われるモノについても農薬ではないとされる事例は普通にあります。

話は変わりますが、今現在、農薬の使用基準のルールは、「ポジティブリスト制」となっています。

これは、製造業者が、農薬の使用基準を「作物毎」に登録しなければならないということです。

生産者からすると、「作物毎」に使える農薬が限られているということです。

つまり、登録のない農薬は、一切、使ってはいけない。使ったら、出荷停止となります。

その中で、「特定防除資材から除外された資材」を(本当は防除効果を期待しているけど名目上、農薬以外の目的として)使用することは、農薬の定義からは外れる為、仮に成果物に付着してもそれ自体で罰せられることはないと思われますが、まぁ、自己責任でお願いします…としか言えないです。(用途を制限されているモノ、使用自体を禁止されているモノもあるのでご注意ください)

また有機認証制度を利用している方の場合は、いくら農薬ではなくても、使用可能かどうか、認証機関にしっかりと確認をしておくのが無難かと思います。おそらく農薬的な効果を期待して「特定防除資材から除外された資材」を使用することは不可だと思いますが、有機的な方法で作られた資材であれば、「肥培管理」として使用することはOKという可能性があります。兎に角、確認してみることです。

長くなりましたが、ひろちゃん農園さんは、私も時々、拝見しています。
とても好きだし、農家の人でも参考にしている人もいます。

農業って、結構、昔からの知恵・工夫でやられている方が大勢いて、人によってやり方は全然、違うわけです。だから、こうしたらこうなった、失敗した、ああだこうだと常日頃から情報交換をしながら、自己研鑽しているんです。

エビデンスがああだとか、農薬の定義がああだとか、話は分かりますが、現場レベルでは、守るべきところは守って、あとは結構、自己流なんです。納豆菌が良いとか、石灰が良いとか言ってばら撒いたって、良いじゃんって気はします。まぁ、この一件で、皆で勉強になりましたねってことでお仕舞いにすればいいんじゃないかなぁって思いました。

あと、「無農薬栽培」表記にはご注意を~

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