
METライブビューイングで《アイーダ》を観る。
仕事終わりに映画館に来た。
目的はMETライブビューイングで上映されているオペラ《アイーダ》だ。
私がMETオペラ自体に興味を持ったのは近年の話で最初に観たのは2022-2023のシーズンに上映されたジョルダーノの《フェドーラ》だった。
この演目は舞台が近代である事、そしてストーリーがひと昔前の昼ドラみたいな感じだったのでわかり安く、割と難なくオペラの世界に入り込めた。
そこから飛ばし飛ばしにではあるがMETのライブビューイングは毎シーズン演目を確認し、興味があるものは仕事終わりに観覧に行っている。
今シーズンも《ホフマン物語》と《トスカ》を観た。そして昨晩、この《アイーダ》を観た。

主人公のアイーダを演じるエンジェル・ブルー氏とエジプト軍の若き司令官ラダメス役のピョートル・ベチャワ氏の2人は2023-2024シーズンで上映された《カルメン》でも観たコンビなので期待は大きかったが裏切られる事もなく、仕事終わりの疲れた身体を引きずって見てた甲斐はあった。
あらすじは簡単に言うと悲恋もの。
エチオピアの女王である事を隠しエジプトの女王アムネリスに奴隷として仕えるアイーダとエジプト軍の若き指揮官ラダメス、そしてそのラダメスに横恋慕する女王アムネリス。この3人の三角関係を描いたものだ。
個人的な見どころは3つ。
まずは要所で現れる探検隊(発掘隊?)の存在である。
舞台が始まると1人の探検隊がロープを使って上から降りて短剣を発見する。
そして舞台が少しづつ明るくなってゆき時代は現代からアイーダ達が生きていた古代エジプトへと変わるのだ。
1つの舞台で発掘作業が進む現代とアイーダの物語が紡がれる古代が重なるような演出は「この物語、愛」が時を超えても残る存在であるように感じた。
そして2つ目はやはり第2幕でのラダメスの凱旋シーンである。エジプト兵の肉体美溢れる舞踊に目を奪われ、流れる「凱旋行進曲」で気分が高揚するのを感じた。
その後、「慈悲」を乞うエチオピアの民と「処刑」を望むエジプトの人々。
エジプトの王にアムネリスとの婚約を命じられ悲観するアイーダとラダメスに対し勝利を確信するアムネリス。それぞれの思惑、感情が織り交ぜられるこの場面は観ていて記憶に強く残った。
3つ目は第4幕で裁判にかけられるラダメスとそれを救おうとするアムネリスのやり取りだ。
アムネリスがラダメスに対して持つ感情。
祖国を裏切った事に対する「怒り」
愛しい人に対する「愛情」
アイーダを諦めて自分を愛してくれれば救えるはずなのに受け入れてくれない「悲しみ」
そういった感情の起伏の激しさに圧倒されそのまま終幕まで駆け抜けてしまった。
見終わった感想しては後悔のない内容だった。
今季のMETライブビューイングはまだまだ楽しみにしている演目があるので次回の演目《フィデリオ》にも期待したい。