アラフィフのエンジニアでもAIの最新論文を毎週7本以上読み続ける方法

この記事の目的

この記事はAIのガチの専門家向けではなく、業務でAIを使う必要があるエンジニアに向けて書いた「最新AIの論文を可能な限り楽に読む方法」です

AIの研究者でなくても、AIの最新情報を把握しておきたい人は多いと思います。ところがAIの最新情報は日本語の書籍やブログだけでは把握することができません。今のAI界隈は動きが早すぎるので、日本語の書籍が出るのを待っていると取り残されてしまいます。AIの最新の情報は毎日発表されている論文を読むしかありません。

とはいえ、英語論文を大量に読み続けるのは大変だなぁ……と思っていたのですが、読む方法を整えていくことでかなり継続的に読み続けることができるようになりました。平均すると毎週5から7本ほど読めています。ここでは論文をコンスタントに読んでいくためのノウハウを共有したいと思います。

論文は日本語に翻訳して読む

英語の勉強を頑張りたい人以外は、論文は自動翻訳で日本語に翻訳して読みましょう。読むべき論文の数があまりに多いので、少しでも疲れない方法で読んだほうがよいです。英語で読むのは最後の手段です。その論文の詳細まで理解したいタイミングまで英語で読まないほうがいいです。日本語で読んでも問題ない理由を次に説明します。

今のAIの論文の大半は中国人研究者が中国語で書いて、LLMを使って英語に翻訳している

AIの論文の著者をチェックすればわかりますが、現在のAIの論文の大半(9割以上)は中国人によって書かれています。そして中国人研究者のほとんどがChatGPTなどのLLMを使って英語論文を書いています。LLMによって生成された英語は、LLMにとって理解しやすい英語です。つまり日本語への翻訳も高い精度で行えます。これが最新のAIの論文を日本語で読んだほうがいい理由です。今となっては、中国人が書いた英語論文のほうが日本語に正確に翻訳されます。逆にネイティブが書いた英語のほうが日本語への翻訳がうまくいかないことが多いです。

日本語への翻訳には各種AIサービスが使えますが、圧倒的に便利なツールを次に紹介します。

論文の翻訳にはReadableを使う

Readableは英語のPDFファイルのレイアウトを保ったまま、日本語に翻訳してくれるサービスです。論文を丸ごと翻訳するにはプロ版を利用する必要がありますが、すぐに元が取れるので課金しましょう。私がAI関係で毎月課金しているのはReadableとAIDBだけです。

多少レイアウトが崩れることがありますが、ほぼ問題なく読めます。英語と日本語の見開きPDFにもできますが、私は日本語版だけにして印刷しています。

私の場合、気になる論文を見つけたらPDFをダウンロードし、Readableで日本語PDFに翻訳し、ページ指定で参考文献の手前まで選んで印刷します。平日はそこまで読めないので、溜めておいて週末に消化しています。

論文は印刷して読む

論文のPDFを印刷して読むか、画面で読むかは好みがわかれるところです。私はほとんど印刷して読んでいます。画面で大量の文章を読むと目が疲れるからです。若い人は画面で大量の文章を読んでも疲れにくいですが、年をとってくるとこれが辛い! 目の負担を下げるために印刷して読んでいます。これは論文のPDFだけでなく、長めのブログ記事でも同様に印刷しています。ブログ記事の印刷には便利なツールがあるので後ほど紹介します。

印刷するときはA4より大きい用紙を使う

論文のPDFをA4に印刷するとかなり字が小さくなってしまい目が疲れます。私はB4サイズで印刷して読んでいます。しかし一般的な家庭用プリンターではA4サイズまでしか印刷できません。コンビニのコピー機を使えばB4以上で印刷できるのですが、毎回行くのも面倒ですし、カラーコピーは1枚20円以上するので高くついてしまいます。そこで次に紹介するプリンターを購入します。

A3サイズを印刷できるプリンターを購入する

毎週論文をコンスタントに読むためには、気になる論文を見つけたときに自宅ですぐに印刷しておくと便利です。私は以下のプリンターを購入してかなりヘビーに使っています。

こちらのプリンターの最大の長所は「エコタンク」を搭載している点です。通常のカートリッジタイプのインクと違い、エコタンクは70mlのボトルから直接プリンターにインクを補充します。量が多いので、大量に印刷してもなかなか減りません。そのため印刷のコストはほとんどが用紙代となります。インク代を気にしないでいいので気軽に大量印刷でき、論文読みがはかどります。

ブログなどの印刷にはPrint Edit WEを使う

ブログなどの記事も印刷して読みたいのですが、そのまま印刷するとヘッダーなどが入ってしまいます。本文だけ印刷するために便利なChrome拡張が「Print Edit WE」です。こちらのChrome拡張を使うと、ブログ記事などの本文だけを印刷することができます。印刷したいページでPrint Edit WEを選び、印刷したい部分を選択します。そしてDelete ExceptのRestricted, Without Float, Unrestrictedを適当に実行すると、選んだ部分だけ残ります。この状態でPreviewボタンを押すと、その部分だけ印刷することができます。私の場合、論文と同じB4サイズで出したいので、1枚に2ページのレイアウトにして印刷しています。

読む論文を探す方法

ここでは読むべきAIの論文の探し方について紹介します。

海外のサイトはチェックしない

これ大事です。AIの論文を探す方法として海外の研究者やサイトを紹介している方は多いのですが、毎週7本程度「しか」読まない人にとってはそこまで追いかける必要はありません。むしろ日本語で適切にフィルタリングされた後の情報から読むべき論文を探したほうがよいです。毎日数本以上読むガチの研究者でなければ、日本語の情報から読むべき論文を探すだけで十分です。

X(Twitter)の日本語ポスト、一部の論文解説サイトをチェック

読むべき最新のAI論文で、かつ適切にフィルタリングされた情報はXの日本語ポストから拾えます。AI関係の論文情報をポストされている方を数名フォローしておけば十分な情報が集まります。

またAIDBのような論文解説サイトも有効です。AIDBは毎週「ほどほど」な数の論文が紹介されるので、この記事を読んでいる方にはちょうどよい分量だと思います。AIDBの記事は全文読むには課金が必要ですが、論文解説の質が高いので課金する価値があります。AIDBの論文解説を読んで概要を把握した後で、論文本編を読むと理解しやすくなります。

私の場合、Xを見ていた時に気になる論文が出てきたときは、iPhoneのメモに共有しています。そして自宅のPCからiCloudにアクセスして、メモを参照しています。論文を日本語に翻訳して印刷したらメモから削除、とすると溜まらなくてよいです。

気になった論文はできるだけ早く読む

論文を読むときは「鮮度」が大事です。これは論文の発表のタイミングの話ではなく、その論文が自分にとって新鮮であるときに読もう、という意味です。そもそもAIの論文を読もうと思うときには、読むべき理由があるはずです。「XXXで使われているYYYについて理解したい」「話題になっているXXXの論文を読みたい」「仕事で使えそうなので読んでおこう」このような強い理由があるときに論文を読んだほうが頭に入りやすいし、役に立ちます。

しかしこの手の理由は数日経つと忘れてしまいます。paperpileのような論文を管理するツールに突っ込んでおいても、すぐに読まないと読む理由を忘れてしまうので意味がありません。そこで気になる論文を見つけたときはできるだけ早く印刷しておいて、可能な限り早く読みます。できればその週末までに読み切りたいところです。

印刷した論文を読む方法

ここからは日本語に翻訳して印刷した論文の読み方について書いていきます。

お気に入りの読書スペースを見つける

自宅で読むのが一番なのですが、私は外のファミレス、カフェ、コワーキングスペースで読むことが多いです。鞄に印刷した論文とペンを入れておいて、会社帰りや週末に外で読んでいます。

読む場所はいろいろと探して、快適に読める場所を見つけましょう。私の場合は一部のファミレス、遅くまでやっている最寄り駅の近くのカフェ、大き目のコワーキングスペースなどで読んでいます。持っていくものは印刷した論文、ペン、眼鏡、空気を入れるタイプのクッションです。カフェなどは椅子が固いことが多いのでクッションは必ず持ち歩いています。

ファイリングはしない

印刷した論文は大事にファイリングしません。むしろ雑に机の近くに置いておきます。そして出かけるときに鞄に突っ込んで、カフェなどで読みます。読み終わって特に次のアクションが無い場合はすぐに処分します。こうしないとどんどん部屋に溜まってしまうからです。

ペンで書き込みしながら読む

論文を読みながら気になったところ、面白かったところには線を引くか、印を付けておきます。これは後で読み返すときに楽をするためです。気になる参考文献を見つけたらマークを付けてTODOと書いておきます。論文を読み終わったら表紙に次のアクションを書き込みます。私の場合は「チェックした参考文献を読む」「実装を動かしてみる」の2つが多いです。次のアクションが無い場合はDONEと書いて、帰宅後にすぐに処分します。帰宅したら読むべき参考文献がある場合はそちらを印刷します。実装を試したいときは自宅のUbuntuで動かしてみます。私の場合は日曜日に論文をまとめて読むことが多いです。朝11時ごろからコワーキングスペースに行って論文を4,5本読んで、3時すぎに自宅に戻って、次に読む参考文献の印刷し、試したい実装があれば動かすか、Zennの記事を書いています。

論文は1本分だけ手に取って読む

細かいテクニックですが、論文は最低限のページだけ印刷します。参考文献以降は邪魔なので印刷しません。また論文を読むときは1本だけ手に取って読みます。最近のAIの論文は参考文献を除くと8ページから10ページ程度となっています。論文1本だけ手に持って読んでいくと残りのページ数がわかるので、読み終えるペースが作りやすくなります。複数の論文を印刷していても、読むときに手に取るのは1本だけにします。分厚い紙の束を持って読むと終わりがわからなくて疲れるからです。

読み方は普通に最初から最後まで読みます。英語で読んでいた時は概要を読んで、結果を読んで、と順番を変えていましたが、日本語で読む場合は最初から読んでも大丈夫でした。途中で数式が大量に出てきた場合などは、その部分だけ飛ばして読みます。とにかく最後まで読み切って、次のアクションを決めることが大事です。必要なら2回目でしっかりと読みましょう。

わからなかった点はLLMに解説してもらう

論文を読んでいると必ずわからない点が出てきます。このときは参考文献を読むか、LLMに論文を渡して質問します。今のLLMは数学などに関してはかなり詳しく解説してくれます。ここまでやってわからなかったら素直に諦めます。読むための前提知識が足りてなかったと考えて、次の論文に行きます。

論文を読むためにやれること(その他)

ここからは番外編ですが、結構大事だなぁと思っていることを書きます。

体力をつける

年を取ると論文や難しい本を読むための集中力が失われてくると思われています。これは実は正しくはありません。正確には年を取って「体力が落ちるので集中力が落ちる」のです。つまり体力を維持できれば集中力を維持することは可能です。体力=集中力です。これは村上春樹氏が言っていた気がします(たぶん)

というわけで体力を維持するために運動をしましょう。ウォーキング、筋トレ、水泳など自分の好きなものを続けましょう。運動で怖いのは、運動をやめてもすぐには体力と集中力が落ちない点です。運動をやめてしばらくすると体力が落ちて、集中力が落ちてきます。なので集中力の低下の原因が運動をやめたことだと気づきにくいのです。年を取ってくると病気やケガ、家族の都合などで運動時間を確保するのが難しくなってきます。勉強同様、運動もできるときにやっておくのが一番です。

論文を読み終わったら記事を書く

論文を読み終わったらZennなどで記事を書くと理解が深まります。理解があいまいだと書けないので読み返すことで勉強になります。このときにLLMを使うかどうかは難しいところです。全部AIまかせにしてしまうと勉強にならないので、AIは補助的なツールとして使う程度がよいと思います。逆に記事の全部を書くと手が疲れるのと、時間がかかってしまうのが悩みどころですね。

記事を書くほど時間と熱意がないときは、SNSに簡単に概要を投稿するのもよい方法です。短い投稿でも理解していないと書けないので、読むときにしっかりと読んで理解するようになります。

必要な数学は別に勉強する

AIの論文を読んでいくためには大学以上のレベルの数学が必要になります。これはどうにもならないので、数学の本を読んで勉強するしかありません。昔と違ってわかりやすくて説明する気のある数学の本が大量に出版されているので、複数冊を読んで理解できそうな本で勉強するのがよいでしょう。わからない点をLLMに質問して教えてもらうのも勉強する一つの方法です。

まとめ

ここ最近実践している論文を大量に読む方法について紹介してみました。他にいい方法があったら教えてください。


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