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真っ白なキャンバスに色をつけて

いつ頃だろう、誰かに会いたいと思った気持ちになったのは

昔から何も無かった自分、真っ白なキャンバスかのように……

そのキャンバスはいつかきっと色がつくのだろう……と




○○)………今日もか

皆月○○、かの有名な『美術界の魔術師』と言われていた青年はある日、絵を描かなくなった。

挫折や、失恋、事故など画家にとって不運であるかのような負のレールに彼は乗ってなど居なかった

富や名声、金の亡者にたかれることもあったがそれも運命だと思い色をつけていた青年、なぜ絵を描けなくなったのか、彼には理解出来ていなかった

○○)…………何してんだろ俺。

青年はそう呟きながらも大雨の中、傘もささずに道を歩いていた

○○)(このまま凍死でもしようかな……未練なんて無いし……)

彼はそう思いながらも橋の柵にもたれながら景色を眺めていた

○○)(この雨、まるで俺みたいだな……)

??)何…してるの?風邪ひくよ?

○○)ん?

彼は聞き覚えのない声に耳を傾け、声のする方へ視線を向けた


理佐)渡邉理佐、君は?

○○)………聴いてどうするの?

理佐)どうするって………まぁいいじゃん

○○)…………皆月○○。

理佐)じゃあ○○君だね、君はなんで傘もささずにここにいるの?

○○)………さぁね、俺にもさっぱり分からない。何が望みで、何がしたくて、何を目的でここに居るのか……不思議だよ。

理佐)家は?

○○)ここが分からない以上、何処にあるかとか俺には分かんないよ

理佐)そっか、じゃあ家来る?

○○)誰の?

理佐)私の

○○)………なんで?

理佐)風邪ひきそうだから?

○○)変な人

俺はそう言いながらも渡邉さんについて行った

渡邉家

○○)1人暮らしなんだ

理佐)そうだよ、○○君は苦手な食べ物ある?

○○)………柑橘系が苦手かな

理佐)りょーかい。

渡邉さんはそういって料理を作っていた

○○)………

理佐)お風呂、沸いてるから先に入っちゃいな?

○○)…………うん、そうする。

俺はそう言ってお風呂場に向かった

○○)何気に女性の家に入るの初めてだ。

そう驚きながらもお風呂を済ませた

○○)………美味そうだね

理佐)でしょ?ほら、一緒に食べよ?

○○)うん。

俺はそう言って渡邉さんと夕食を済ませた


夕食後

○○)今更だけど、泊まっていいのか?

理佐)別にいいけど?

○○)渡邉さん警戒心ないの?

理佐)大雨の中、ずぶ濡れの人には言われたくないけど?

○○)そっか。

そんな意味の無い会話をしていたら、渡邉さんの携帯に通知が流れた

そこに映っていた……俺の書いた絵の背景があった

○○)ガーベラの絵?

理佐)あ〜それ?うんそうだよ、私さ絵とか美術とかに疎くてさ?友達にこのガーベラの絵、理佐が好きそうだからロック画面にしなって言ってくれて

理佐)実際、この絵にいつも救われてるからお気に入りなんだよね

○○)救われた?

理佐)恋愛が上手くいかない時とか、仕事で失敗した時とか、色々アクシデントが起きてどうしようもない時にこの絵を見ると頑張ろうって元気になるんだよね

俺は初めて自分の絵に救われた人に出会えた

今まではお金になるとか、最高の美術家になれるとか、絵自体を褒めない人が多かった

○○)そっか

理佐)それで、これからどうするの○○君

○○)どうするって何も……俺はフラフラと歩くだけさ

理佐)変な子だね、けど………かっこいいね

○○)そう?

俺はそう言い返した時、1枚のキャンバスがあった

○○)渡邉さん、絵描くんだね

理佐)暇つぶしにね

○○)ふ〜ん……これ、渡邉さんの絵?

理佐)あ、いや……ちょっと‼️

目の前にあるキャンバス、そこに描かれていたのは俺自身だった

○○)なんで俺が?

理佐)そ、その……たまたまバスに乗っている時に景色を眺めている君を見かけてふと描きたくなったんだ、ごめんね。

俺はふとそんな絵を見て、心が奪われていた

○○)いい絵だよこれ

理佐)え?

○○)でも、輪郭がちょっとね………おいで渡邉さん

理佐)う、うん……

俺は渡邉さんに絵を教えた

○○)輪郭を描く時はこうやって………

理佐)………すごい、凄いよ‼️

○○)渡邉さんが上手だからだよ

理佐)○○君も描くんだね

○○)本業ですからね笑

理佐)画家さんなの?

○○)そのガーベラの絵、描いたの俺だからね

理佐)へぇ〜結構上手い………って、確か……この絵って数億の価値があるとかって……

○○)正確には5000万だけどね笑

理佐)な、なんでここにいるの!?

○○)なんでって………あ〜なんで絵描いてないの?ってことか

○○)理由は………まぁ、俺にも分かんないだよね

理佐)どういうこと?

○○)何が理由で描けないのか、怪我や挫折、逃避など画家にとってデメリットである意識は俺には無い。だから分からないんだ

理佐)…………ねぇ、今日は泊まっていいから明日一緒に君の家、行っていい?

○○)いいけど…………

理佐)じゃあそうしよっか

次の日、自宅

理佐)行くとは言ったけど………まさか、私の家から10分もかからないなんて………

○○)そうだね、俺もびっくり

理佐)にしても………いい絵ばっかりだね

○○)そうでしょ?

理佐)何が理由で描けないって私にも分かんない………ってこの絵は?

渡邉さんはそういって制作途中のキャンバスを指さした

○○)あ〜それ?思い付きで描いてたやつ

理佐)思い付きにしては………なんで私の絵なの?

○○)えっ?

俺は気になって制作途中の絵を眺めた

そこに描かれていたのは月を眺める1人の女性とそれを見つめる青年の絵、女性は渡邉さんそっくりでもう1人は俺そっくりだった。

○○)なんで渡邉さんが?

理佐)君にもわかんないの?

○○)うん………

俺はキャンバスの片隅にある紙切れを手に取り、中身を読んだ

○○)‼️

理佐)なにその紙切れ?

○○)あっ、いや………な、なんでもない‼️(なんてもの書いてんだよ俺………)

理佐)(顔が赤い?)

○○)(もしかして、俺が描けなくなっていたのって……)

理佐)○○君?

○○)(まぁバレてもいいか)

理佐)?

○○)これ、読んでみてください

理佐)う、うん?

理佐)えっとなになに…………って、○○君これって?

○○)みたいです笑

そこに書かれていたのは1つの文

『真っ白なキャンバスに愛した君と色をつけたい』

理佐)……これって?

○○)あはは、どうやら……俺もアナタと会ったときにふと描きたくなったのでしょうね。

理佐)でも、これには愛したって?

○○)あ〜多分一目惚れしたんだと思います笑

理佐)集中してないから恋してるって気付いてなかったんだね

○○)まぁそれでなんですが、1つの提案というかカミングアウトしても?

理佐)ん?

○○)その〜一緒に真っ白なキャンバスに色……つけませんか?

理佐)それって……『好きです、付き合ってください』で合ってる?

○○)生憎ながら、こういった告白には慣れてなくて……

理佐)ん〜まぁ、付き合おっか‼️

○○)そんなあっさりと?

理佐)だって、また君が描くことが出来るし?それを隣で眺めてるのも悪くないじゃん?

○○)まったく………単純なんですから笑







𝑭𝒊𝒏.

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