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子どもを欲しいと思わないわたしの胸の内
公園で子どもを遊ばせている家族を見たり
電車で遊園地や動物園に向かう子ども連れの家族を見たりすると時折、
いいなぁ…
と羨ましい気持ちが湧いてきます。
また、ここのところほとんど無くなりましたが、子どもを持つことをやたら勧めてくる人なんかに遭遇すると、
わたしもこんな風に思考停止できたらラクだったのかな…などと思ってしまいます。
羨ましいからって、わたしも子どもを持ちたいと思うわけではないのです。
なんというか、これは、誤解を恐れずに書くと「普通」の感覚を持ってるっていいよなぁ…という、やっかみです。
日本で日本人に生まれ、体の性と性自認が一致し、異性愛者で、子どもを産み育みたいという希望を持ち、それを叶えるのに一切の疑問を持つことがない、
圧倒的マジョリティ(=多数派)。
異性愛以外のセクシュアリティになど関心を持ったこともなく、やいやい煩いなぁくらいに捉えていて、堂々と人に
「子どもっていいわよぉ」
「産むのは国民の義務よ」
「あなたも早く産んじゃいなさいよ」
「産まないと将来後悔するわよ」
と勧めることのできる厚かましさ。
※慌てて付け加えますが、無論、子持ちの方々がみんなそうだと言っているわけではありません。
人の痛みを慮れるか否かは、属性差よりも個人差のほうが大きいと思っています。
人それぞれ、十人十色、みんな違ってみんないい、と思っているつもりなのに、
ふとしたときに、
自分が「普通」だと信じて疑わない、疑うことすら思いつかない傲岸な人って、なんだか得だよなぁ、という感情が湧いてしまうのです。
かく言うわたしだって、傍から見たら「ほとんど」マジョリティなのです。
日本で日本人に生まれ、体の性と性自認が一致する異性愛者なので。
でも、最後の「子どもを欲しいと思わない」という一点において少数派であるが故に、今までの人生でマイノリティの人々について思いを馳せずには生きられませんでした。
「子どもかわいい」界のサイコパスにも書きましたが、
わたしは子どもをかわいいと思ったことがなく、産みたい、持ちたいという欲求も持たず、でも
「女には母性本能があるはず」
「みんな子どもが欲しいと思ってるはず」
という社会通念のなかで
「子どもをかわいいと思ってる人」の擬態を続けてきました。
だって、いちいち説明するの面倒なんですもの。
子どもを持つ選択をした人には「なんで産んだの?」って質問はしないのに、子どもがいない人には「なんで産まないの?」って問い詰める謎。
これは、恋愛も結婚も出産も同じ気がします。
なんで恋人作らないの?
なんで籍入れないの?
なんで子ども産まないの?
恋愛も結婚も出産も、
する人は理由を尋ねられず、しない人だけが詰問を受ける世の中。
「したくないから」
という一言で片付けさせない何かが、そこにはあります。
マジョリティがなんぼのもんじゃい、と思います。
日本に生まれたのも、
日本人なのも、
体の性と性自認が一致するのも、
異性愛者なのも、
子どもを産み育みたいと思うことも、
それを叶えるのに一切の疑問を持つことがないのも、
理由は全部「たまたま」であって、マジョリティに属するのに何の努力も研鑽も不必要だというのに。
ただ偶然そう生まれついて、結果的に今の世ではそれが是とされているってだけの話なのに。
何をもってマジョリティとするかすら、時と場所によって変わるようなあやふやなものなのに。
なのに何故、そんな大きい顔ができるんだろう。
しかしながら
かく言うわたしだって、ほとんどマジョリティなのです(2度目)。
想像力に乏しい人々の言葉でうっかり傷付くことで、
マイノリティ側に自分をカテゴライズして被害者面したくなりますが、
そういうわたしにもマジョリティの面があって、
わたしには知らない苦しみが、
わたしが気づかないまま素通りしてきた生きづらさが、
この世にはたくさんあるはずだと思うのです。
20年くらい前、一世を風靡した浜崎あゆみの楽曲に「appears」というのがあり、そこではこう歌われています。
恋人達はとても幸せそうに
手をつないで歩いているからね
まるで全てのことが上手くいってるかのように見えるよね
真実(ホントウ)はふたりしか知らない
不当に人が羨ましく見えたり「あなたはいいよね」と黒い気持ちが立ち上りそうになったとき、
わたしの苦しみがわたしにしか分からないように、
きっとわたしのいる場所からは見えにくい苦しみがあって、
見えているつもりでも全然理解できていない誰かの苦しみがある、
ということを忘れないように、ときどき脳内再生するようにしています。