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生き残る自治体の「戦略」

楠木建(くすのき けん)著『ストーリーとしての競争戦略』を読んでいて、ふと自治体の生き残りをかけたまちづくり戦略について考えた。
もう自治体の職員ではないのに、こういう思考をしてしまう自分がなんだかおかしくもあるが、そもそも自治体の戦略は市長や職員だけが考えるものではないと思っている。
だから、好き勝手に書いてみることにする。

本書全体については別の機会に書こうと思うが、今回は「戦略」という視点に絞りたい。

世間では「戦略」という言葉がさまざまな意味で使われている。
ビジョンを描くこと、KPIを設定すること、工程を決めること——どれが正しいとか間違っているという話ではないが、本書では「他社との違いをつくること」と定義されている。
自治体で言えば、「他の自治体とどう違いをつくるか」だ。

どこの自治体でも「うちのまちの特徴を活かして差別化を図る」といったことを必死に考えていると思う。
しかし、「戦略としての差別化=違い」を正しく理解していないと、結局はどこも似たり寄ったりの政策を繰り返すことになる。

例えば、日本では昔から「〇〇市が▲▲費を無償化!」といった施策が次々に出てくる。
しかし、これを戦略だと考えるのは危うい。
なぜなら、財源的に無理をすればどの自治体でも実施できるからだ。
仮に全国に先駆けてとある費用を無償化したとしても、その目新しさは長くて数年、早ければ数ヶ月で消えてしまう。
自治体は法律や制度のもとに平等な立場にあるため、他の自治体がすぐに真似できてしまうのだ。

また、戦略としての「違い」を理解せず、「他の自治体より少しでも優れたまちにしよう」と、あらゆる分野に力を入れようとするのも問題だ。
僕はこれを「八方美人」ならぬ「八方不細工」政策と呼んでいた。
無我夢中で全方向にリソースを割くことで、結局どの分野も中途半端になってしまう。
自分たちがどのようにポジショニングするかを明確にせず、とりあえず「努力している感」を出している自治体は意外と多いのではないか。

「違い」を生み出せなければ、自治体の競争戦略にはならない。
自治体の未来を本気で考えるなら、ただの「目新しい施策」や「全方位努力」ではなく、本質的な「違い」を生み出す戦略を考えるべきではないだろうか。
そして、その本質的な「違い」とは、地域に存在する人材やコミュニティ、歴史・文化、自然環境、産業などの「地域資源」に見出すことができると思う。


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