#かつての恋愛事情 青春放浪記 若気の至り
4つ下のM美は20歳、付き合って2年になる。長いし私も若いので二人の仲も腐れ縁になりつつある。とはいってもすぐ別れるかといったらそういう訳でもない。だから腐れ縁なのだが。
今日はM美の成人式、2ヶ月放っておいたがメモリーだしそのままにしておくわけにはいかない。
式が終わったあと待ち合わせ場所に車で拾いに向かった。数時間がたち河川敷の車中で話していたそのあと、私は尿意をもよおして車外にでた。近くのトイレで小用を足し、ドアをあけ今まさに乗り込もうとした瞬間、何かが頬に当たった。なんだろうと思った。と同時に不安そうに私を見つめるM美の眼があった。
「痛かった?」
と申し訳なさそうに消え入るような声で言って来た。
どうもM美が私の頬を叩いたようだ。
何、どうしたと聞くと、2ヶ月も放っておかれて、4キロ痩せたと言う。機会があったらぶっ飛ばしてやると、決めていて実行したということだ。
苦笑するばかりだ。へなちょこパンチも弱っちいし、思い詰めていたんだと思った。
ただでさえ細身の身体のマイナス4キロはこたえたろう可哀想にと一瞬思ったが、完全にマウントをとったと思った。イニシアティブは自分のものだ。
今だったら何でも思い通りになりそうだ。
こういったことによって、思い通りにして行くのだと思った、操縦術とやらを、その筋のあれこれを。
それから勝手のし放題、まさに充分謳歌した。
ある時なんぞ一緒にいても他の娘と合う為に近くの駅で降ろしたりした。M美はそれもわかっていたが、
「冷たいのね」
としか言わない。今にして思えばけなげな良い娘だった。
私は私で最後にはお前に戻って来るからとでまかせを言うと、うれしそうに
「うん!」
と答える。
すぐさまM美を降ろして、次の娘のもとに向かった。その時の私の気持にうそはない。S気質の私とM気質のM美でうまい具合に釣り合いがとれていた。
勝手なことばかり言って自分は結婚詐欺師になれると思った。
そんな気はなく、もとよりそこまで悪く、落ちてはいないが、若気の至り、無茶なことをしたと思っている。
無軌道でわがままな幼い頃の一コマである。
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